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兼題「草市」__金曜俳句への投句一覧
(7月28日号掲載=2017年6月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年7月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【草市】
草市で買った骨董置き場なく
朝まだき遠く遠くの草の市
草市やかそけき音の包み提ぐ
向かうでも餓死の憂ひや草の市
草市や箸は良きもの選びをり
余生などなき父偲ぶ草の市
夜明けには更地となりぬ草の市
手拭の姐さん被り草市に
草市の立つ参道に土零る
月島や財布ぞ失する草の市
草市やあすは牛馬をのせし舟
草市や婆と娘と赤ん坊
銀行の帰り草市覗きけり
草市の馴染みの線香家苞に
草市と聞けばわき立つノスタルジア
草市の泥の匂ひの硬貨かな
失せしもの探す母ゐる草の市
騒がしき義母嫁娘草の市
藍色の塩の看板草の市
草市や貨物列車の過ぎる音
草市に母の遺せしメモ頼る
蓮の葉に真菰の馬や草の市
草市の頬より濡らす夜露かな
草市へ洗ひ晒しのワンピース
松の根に値の付いてをり草の市
土に帰すもののみな美し草の市
切手売る店の軒端の草の市
山の端の里に灯れり草の市
草市や瓜も並べる男前
草市や浄土にはなきイタリアン
見世棚に線香沁みる草の市
手作りの胡瓜も添える草の市
草市の帰りに寄るは婆の家
空缶の深きに差して芋殻売る
喰はずでも少し選りたる草の市
草市の仕舞ひに小鉢残りけり
ことごとく万世一系草の市
草市の客に笑顔で菊を売る
草市やひと客ごとに水すすめ
犬猫を連れて草市来る人も
草市の夜店眩しや祖母と来て
仏壇のなき部屋なれど草の市
草市の空くれなゐの夕間暮
都市近郊スーパーにあり盆の市
軽きものばかりが並び草の市
親子して草市に立つ山の里
草市や孫草臥れて背ぞ占むる
年老いし母に供して草の市
草市に鵜松明樺(うだいかんば)の灯をかかぐ
草市に昭和の顔の揃ひをり
草市に小さき喜び逃げゆかむ
満蒙の話聞いてた草の市
シャツの襟立て草市の品横たえる
釣銭に重きポケット草の市
たそがれの雨となりたる草の市
草市を見下ろしてゐる鬼瓦
草市へ真つ青な夕せまりくる
君と巡りし草市に今年は吾一人
宵の灯の重なりて行く草の市
やんはりと草市を過ぎ日の変はる
草市に子のよく眠る背中かな
草市に祖母の幻夕まぐれ
発電の音のみ響く草の市
草市に育てし菊を並べけり
草市へ湿つた風と笛の音と
草市や種々魂のごと軽し
草市や匂はぬものを出してをる
売り言葉買ひ言葉なく草の市
草の市木の芽の香り頂きて
草市や昔再現続きをり
ものを売るのも人形や草の市
草市や買い足らぬものまた忘れ
草市の五倍子色を購ひぬ
草市のはじめつめたき風の中
草市や東雲の空広がり来
草市に負けて貰ひし草のあり
草市でほおずきを買ふ愛生まれ
燃やされるごみの集ひや草の市
草市に作りの雑な品並ぶ
人いきれ草木薫る草の市
草の市コロッケパン食べ人眺め
草市やあれやこれやと買い求め
懐かしき唄も流れる草の市
草市や在所の母へ認むる
草市の顔や主と御仏と
草の市あいさつあはく交わしけり
水捨てて草市仕舞ふ準備かな
値踏みして草市の物二つ三つ
講演会同時に草市政治家も
草市の乏しき品のまだ売れず
草市に来し人の影幽かなり
草市のにほひの方へついてゆく
難民へ募金の少女草の市
銭の音かすかに響く草の市
草市や賞味期限は今日の昼
草市のコイン一つの花の束
草市のひとり増えたる立ち話
通り抜け又舞い戻る草の市
草市を離れ煙草に火を点す
草市や祖母の後絶ゆ盆飾り
川風の吹く草市や河岸に沿う
草市の商品くったりとなって
草市の果てて濁らぬ水を打つ
種々の青きにほひや草の市
草市の風に聞こえる輪廻かな
校舎の影動く草市また動く
草市の祖母乗りさうな胡瓜かな
草市や顔を寄せ合ふ地蔵尊
灯ともりて影の濃くなる草の市
頼まれしメモ忘れけり草の市
種光る何を買おうか草の市
草市やはしゃぐ我らを笑う祖母
峯の風育てし菊を草市に
草市や駅前広場借りきつて
墨痕の月日を背負ふ草の市
雨が降り決行草市短縮し
鳥語知る草市に来る鳩三羽
盆の市よく磨かれし黒革靴
これといふものなきばかり草の市
草市をからかつてゐる薄笑ひ
草市や木乃伊のごとき土器のあり
すれ違ふいろは小紋や盆の市
にぎはひは地ビール屋台草の市
草市にもう精霊の来ておりぬ
しみじみと来し方想ふ草の市
草市や老若男女目を鋭(と)くす
草市や村にキチンの波来る
草市の軽きを提げてコップ酒
草の市灯籠ゆらす風は来ぬ
面影も思ひ出も遠く草の市
誘われて二人で歩く草の市
草市の農夫の指の節くれて
露店主の代替はりせし草の市
草の市お金を入れる籠だけいる
暮れてより草市らしくなりにけり
草市に寄り来る舟は真菰積み
おのおのの墓持つ子らと草の市
草市やぽつりぽつりと売れる品
夕暮に寂しさ増さる草の市
草市のついで散髪整える
忘られぬひと一人ゐて草の市
父母許せ三割引を草の市
売り物のひとつを灯し草の市
草市の雨の匂ひと駅の音と
商売気無き草市の若旦那
草市のかをりや雑居ビル無音

【不明】
夕立や街の匂ひのわき立ちて
長々と世辞いふ人に夕立かな
夕立の雨脚太き江戸百景
富士の峯や山下白雨につつまれて
雨足の棒立ちになる夕立かな

※差別を助長しかねないと判断させていただいた投句はネットへの掲載を見合わせます。