きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「昼寝」__金曜俳句への投句一覧
(6月30日号掲載=2017年5月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年6月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【昼寝】
道路でも昼寝が出来る男かな
昼寝より覚めて思ひのまた乱れ
鉋屑匂う中なる三尺寝
うとうとと犬抱えての昼寝かな
懸案のメモ書き終へて昼寝かな
路地ひとつ昼寝の刻に入りにけり
疲れしか気持ちよさげに妻昼寝
先生の添寝取り合ふ昼寝の子
昼寝する妻問いたげに口開けて
主婦の乱部屋立て籠る昼寝の日
新弟子の稽古疲れの昼寝かな
鴉鳴き現に戻る昼寝かな
昼寝覚め黄泉に居るやら現やら
無精髭感じるほどの昼寝覚
世界史を涎(よだれ)で綴る午睡かな
痛みなき体に戻る昼寝かな
運命と異なる暮らし昼寝覚
昼寝して夢路さまよい雲の中
唐突に泣き笑ひして昼寝の子
昼寝覚うつつの闇に戻りくる
苗植えて穫り入れ思う昼寝かな
顔は昼寝の如く師は逝けり
首筋の塩の吹き縞三尺寝
大家族到る所に昼寝あり
昼寝覚め新居の床の冷たさに
ガラガラも毬も静まる昼寝かな
カラオケの歌を枕に昼寝かな
一枚のタオルに一人昼寝の子
新宿は影絵のやうな午睡かな
職人の昼寝上手や小半時
死顔はかくのごときの昼寝かな
都会では鍵掛けの要る昼寝かな
はつとしている一人かな昼目覚
十分のつもりが一時間昼寝
うらやましあっさり寝入る妻昼寝
公園のベンチの昼寝鷺見つむ
長考に沈むがごとき昼寝かな
弟子たちを誘えば応う三尺寝
畳職人の昼寝は肘動く
どなた様あわてふためく昼寝かな
叱られたまま匙落とす昼寝かな
気に染まぬ思い抱きて昼寝かな
昼寝覚紙のますます白きこと
夕闇の迫りて慌てる昼寝覚
昼寝覚め遺影の父と目の合ひぬ
手づくりのおめざてふもの昼寝の子
花茣蓙の昼寝に猫も来て眠る
潮騒は遠くて近し三尺寝
木の陰のタクシーの列昼寝時
昼寝の子母の腕が特等席
家中が虐殺現場昼寝覚
多摩川に行く少年の昼寝かな
三輪車庭に転んで児の昼寝
昼寝してカラオケ行かぬ事に決め
昼寝覚血のうすうすと頭蓋這ふ
腕枕すまして犬は昼寝する
ここはどこわからないまま昼寝覚
夢の尾をつかみ損ねし昼寝覚
昼寝覚めここは何処かとふと迷う
安全な居場所昼寝の夢の中
牛の尾のピクリと動く昼寝かな
祖母と猫シンメトリーの昼寝かな
老いひとに科なき昼の眠りかな
昼寝子の大の字少し崩れけり
銀河系のまんなか浮遊大昼寝
昼寝覚ダリの時計の寄り掛かる
大広間大の字書きて昼寝する
モナリザの手のごと組みて昼寝かな
長寝して夢うつつなる午睡かな
昼寝して烙印のごと畳皺
昼寝よし諸行無常の思いあり
孫昼寝しんと静まり豊かなり
ニコライの鐘の響きや昼寝覚め
世界一おいしいケーキへと昼寝
世の中に遅るる顔や昼寝覚
昼寝覚枯山水の波紋かな
定年後無上の暮らし昼寝あり
転生は二度か三度か昼寝覚
昼寝から覚めてきぱきとテロのニュース
昼寝醒め影絵の如く揺らぐ部屋
あの町もあの田も過ぐる昼寝かな
いもり来て仏間にひとり昼寝寒
一匹の魚に化けて昼寝かな
釣れぬはず魚も昼寝するらしい
昼寝して数字を少し捨てにけり
姫君は鬼女に昼寝覚のテレビ
川の字のひとりは猫の昼寝かな
目覚めたらお腹が空いていた昼寝
輪郭のふやけた現昼寝覚
落語聞きゆったり寝入る昼寝かな
昼寝子の眠つたままを受け取りぬ
軒先の蛇身動(みじろ)ぎて午睡覚む
一寸の子を抱きたる昼寝かな
昼寝人何やら浪漫ありし顔
許されぬ恋のち昼寝のち平和
魂のぼんやり増える昼寝かな
昼寝覚コクトーの海ある車窓
妻の留守昼寝と菓子を思ふまま
託児所にしじま生まれる昼寝かな
足裏の白き子昼寝する畳
昼寝する「オバケ」タイトルのエセイ読む
食初めの木匙握りて昼寝の子
ガイドブック開きしままの昼寝かな
風抜けてびくんびくんと昼寝の子
長旅を帰り来りて昼寝かな
昼寝でも早口言葉言えなくて
ちさき昼寝人や三人目は列
職人の寸暇を惜しむ昼寝かな
昼寝覚低血圧の辛さ知る
昼寝していつでも帰る父の家
洋式トイレ大の途中の昼寝かな
板敷いてニッカボッカの昼寝なり
午睡てふ底なし沼につかまりぬ
まだ逢はぬ妻を捜せり昼寝覚
涅槃仏実は昼寝の寝覚仏
昼寝どき猫と取り合ふ風の道
揺り椅子の午睡の波に身を委ね
ばあちゃんがスイカ切る音で昼寝
甘き夢昼寝覚めても微動だにせず
ダンサーの昼寝や長き指組みて
まだ同じ海が車窓に昼寝覚
昼寝する女の臀の高さかな
昼寝ざめ隣にゴリラ猪八戒
食いたけど食う物は無く昼寝かな
枕には額のかたち昼寝かな
同じ穴今日も落ちたる昼寝かな
出演者半分死んでる昼寝かな
手をつなぎ昼寝の親子いかな夢
道迷ふ夢から這い出る昼寝覚
昼寝の子起こされ朝のごあいさつ
名匠の大工の腕の昼寝かな
吾もどこか育ちてをりぬ昼寝覚
昼寝する菩薩に似たり孫の顔
昼寝してデートコースを伝えてく
絵日記の空の真横で昼寝かな
孫昼寝目で会話する笑み満ちる
宿題もゲームも放り子の昼寝
昼寝する車中の人や捧げ銃
野の仏もう昼寝でもしてござれ
猫よりも先に目覚める昼寝かな
職人の昼寝木影の優しけり
昼寝覚うつかり妻の名前呼ぶ
畳の目頬這い上る昼寝かな
木漏れ日のゆらぐ昼寝やハンモック
昼寝覚育児日記の書けぬまま
いつまでもおやつは眩し昼寝かな
起くるかに伸びをしてまた昼寝かな
若き日の虚子のごとくに昼寝かな
旅人の汽車に揺られて昼寝かな
一病の疼いてゐたり昼寝覚
老犬は宙駆く仕草昼寝して
ママといふ現の証し昼寝覚
竹光を抱いて座長の三尺寝
昼寝の子ときどき笑みを零しけり
惚けても昼寝の証拠頬にあり
願わくば目覚めぬ昼寝大往生
昼寝覚む悲しき夢に雨の音
仏壇の前で一族昼寝かな
夥しく生まれ変わるや三尺寝
老人の昼寝長くて困ります
何となく母の声聞きたし昼寝起き
地下足袋を脱ぐ間も惜しみ三尺寝
ひとたびは彼岸の見えし昼寝覚
昼寝して森が大きくなつてゐる
昼寝の夢風に乗り山ひとつ越え
昼寝覚寄せくる記憶はねのけむ
刀尺に倦みたもうらし母昼寝
耳元の石鹸の香の昼寝覚
せせらぎは風呂洗ふ音昼寝覚
川風や昼寝の力士髪匂ふ
衛星の昼寝が治る共和橋
ミンダナオの話おわらず昼寝へと
伯母さんもお母さんでも昼寝する
五限目の古典は午睡の時間割
タオル百枚乾くあはひの午睡かな
はずかしや治療しながら昼寝して
発端はパスタ中盛り昼寝かな
ケイタイを握ったままの昼寝かな
腹掛けの紺新しき三尺寝
箸置きてすぐに昼寝に入るひと
親と子のなの字の様な昼寝かな
従兄弟って足裏同じ昼寝かな
昼寝中手書きの札の理髪店
尋ね人声だけ先にの昼寝かな
15分ほっこり綻ぶ昼寝かな
主婦業の居眠りでなき昼寝顔
営業のをんな来にけり昼寝時
優等生気をつけのまま昼寝かな
スイカまで目が覚めてても昼寝かな
朝寝して昼寝て夜も予後の妻
田の水の行き渡りけり昼寝夫
関節のふたつはづれし昼寝かな
平泳ぎ空から落ちて昼寝覚
さつきまで吠えてしポチの昼寝かな