きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「鰻」__金曜俳句への投句一覧(6月26日号掲載=2015年5月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年6月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【鰻】
待つことのかくもうれしき鰻かな
鰻喰い舌に残れる脂かな
食ひ合はせなれど梅干うなぎ好き
風ぬるき桶に渦巻く鰻かな
目を打たれなほものたうつ鰻かな
真つ当に生きた男の鰻めし
忘我まで絡み合ひたる鰻かな
鰻買ひ一人前を決める母
泥ぬらり鰻ぬらりの幼き日
柴又や寅さん偲び鰻喰ふ
鰻喰ふや近き将来思ひつつ
鰻の子母郷で游ぶ海の果
神秘さを味うべしと鰻めし
誰の目も透かさず掴む鰻かな
飛行機に乗つて鰻のさばかれむ
鰻のぼり蒼い空が恋しい乎
鰻屋に町内のよき男女寄る
百点のご褒美といふ大鰻
うな丼や御飯粒付く足の裏
俎の鰻何とも悲しさう
川越も鰻がなけりあただの街
千里来て人に食はるる鰻かな
鰻とる竹筒の餌ミミズ掘る
穴子屋に飼はれて沈む鰻かな
危惧されし鰻今年も味わひぬ
久々の友恙なし鰻喰う
大鰻どこの川かとまず問はる
鰻食ふ頃となりけり町のなか
白焼きのやふなをんなと喰ふ鰻
御師との出会ひと別れ鰻屋で
皮とタレ焦げの程よき鰻かな
虚空なる鰻のごとき未来かな
鰻重や母得意げに注文す
任侠の徒に似し顔が鰻割く
お吸い物付いて鰻を引き立たす
内装の簡素な鰻料理店
夏バテにとは身勝手な鰻逃ぐ
好物は今も鰻や父米寿
浅草のどぜうの老舗にて鰻
甘たるき鰻食いけり友逝けり
存分に食べたき鰻目に描く
丼をややはみ出してゐる鰻
鰻屋を過ぎて山椒匂いけり
鰻丼やよくぞ日本に生まれけり
水槽の鰻あはれと覗く子ぞ
隠れ家の深き厨に鰻の香
手遅れさ人も地球も鰻もね
鰻屋の店ほの暗き昼下り
一生を終へまつすぐの鰻かな
もしかして蛇かも知れず鰻丼
エイヤッ!と特上三千八百円
出戻りが舌鼓打つ鰻かな
食はぬ日の鰻のとほくからにほふ
人招く如く鰻のうの字かな
新世紀鰻の役に川田君
謎なのに旨いから食え鰻をね
川風や橋の続きの鰻店
掘割の風や吹かれて鰻待つ
泳ぐかに踊るかに見ゆ「う」の字かな
あの人とゆつたり待てば鰻めし
鰻丼や太平洋の恵み食う
帰郷して観音水の鰻食ふ
天然ものであるはずがない鰻食ふ
鰻食ひ国の行く末思ひけり
鰻屋の軒端に残る薄明り
酒が付くうな丼もしかしたら明日
江戸前の鰻懐かし里帰り
鰻買ふ茂吉の鰻買ひにけり
鰻屋の絆深める待ち時間
異動の日上司自腹で鰻重
鰻丼や家族和解の膳据える
稚魚の旅語りつつ待つ鰻かな
鰻重を残さずに食ふ傘寿かな
小路入り鰻の寝床ばかりなり
鰻パイ賞味期限ということも
晴の日や晴の顔して鰻食ふ
鰻屋の煙に功徳あるごとく
太平の世を語らむと鰻屋へ
椅子よりも座敷がよろし鰻食ぶ
温泉に我が身ほぐして鰻食ぶ
少年の川にのみ棲む鰻かな
今生の別れのやうに鰻食ぶ
うな重の上おごられし肩身かな
うまいけど高層ビルの鰻かな
鰻大好き我生粋の和食党
進学の孫に約束鰻便
ぬけさせぬ戦に進む鰻ども
難解な句をつくる人鰻食ふ
祖母母と鰻で祝った初月給
たまには鰻食いに行こうかなあお前
三通りではない方の鰻食ふ
遠き日の鰻筒揚で兄の声
開かれて畳のような鰻かな
うなぎ焼く腕のほくろの毛の太き
鰻焼くはちまきおやじ煙の中
鹵川に沿うて鰻屋二三件
鰻食ひ茂吉の思ひ呑み込みぬ
外向きに持つ鰻屋の提げ袋
まつすぐに伸びて裂かるる鰻かな
鰻断つ絶滅危惧と知りてより
川下り淡き灯の下鰻焼く
兜町うなぎのぼりを吹き流し
良縁のまとまりさうな鰻かな
蓋を取り湯気に鰻は鰻なり
天然と云はれて旨き鰻かな
鰻屋の昼にスーツの客ばかり
捌く父炭熾す兄鰻焼く
鰻食ふ二人アリバイ整へて
生国の川かくありぬ鰻釣
鰻屋のうの字の如く長考す
いつ聞いても三十三歳鰻買う
二組の客をもてなす鰻懐石
深夜読む鰻に添へし子の手紙
鰻屋や煙は出でて人は入る
鰻待つ奥で子が恋打ち明ける
鰻屋の狭き間口を譲り合ふ
多国籍食品加工品鰻
屋形船食わず嫌いの鰻かな
初孫の上座に眠る鰻かな
遠客を鰻で迎ふ日本橋
浜名湖に遊ぶ鰻を食べもせで
鰻の日匂だけ嗅ぎ終りけり
鰻丼を待てば座敷を過ぎる風
お銚子を一本つけて鰻食む
すり抜ける鰻の様な閣議かな
安早の牛丼店に鰻食ふ
柳川や鰻の蒸籠下駄の音
闇市の立ちし辺りに鰻食ふ
うな重といふ店があり路地裏に
鰻屋の煙ばかりを吸ひにけり
小川菊や冷や一杯の待ち時間
鰻だと一挙に数字が上昇し
帰郷せる子等の定番鰻めし
裂いて蒸し火に炙られる鰻かな
鰻屋の暖簾うのじのうなぎかな