きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「秋惜しむ」__金曜俳句への投句一覧(11月28日号掲載=2014年10月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』11月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【秋惜しむ】
八十路半ば森林浴に秋惜しむ
日溜りに拾ふ薪や秋惜しむ
遠き田の煙香りし秋惜しむ
秋惜しむ時刻表の旅の中
秋惜しむ左と右を意識して
ダイニングテーブル拭ひ秋惜しむ
公園にベンチが無くて秋惜しむ
餺飥(ほうとう)の御代りの椀秋惜しむ
秋惜しむために陣取る天守閣
中学に高校の影秋惜しむ
秋惜しみ遥かかなたの飛行機雲
傍らにまどろむ猫や秋惜しむ
花々の散りじりにけり秋惜しむ
秋惜しむ「鶴の巢子守」竹で吹く
山道に交はす挨拶秋惜しむ
ひとときを酒を友とし秋惜しむ
秋惜しみをればこゑ出す外国船
秋惜しむ木椅子に芭蕉七部集
老ひとり昼の酒場に秋惜しむ
秋惜しむ釜の焦げ飯今昔(いまむかし)
秋惜しむ品を並べし道の駅
秋惜しむかにふるまへばそのこころ
上司とのワイン傾け秋惜しむ
皇后の小さき帽子秋惜しむ
ダぐアウト選手足踏み秋惜しむ
青不動明王在す秋惜しむ
触るる肌の優しき温度秋惜しむ
つる花の絡みほぐしつ秋惜しむ
頬杖をつくこと多き惜む秋
オペラ果て大路そぞろに秋惜しむ
秋惜しむピアノの音の遠くなり
大工町古地図広げて秋惜しむ
錦木の落ち葉を辿り秋惜しむ
秋惜しむやうな顔ある夜のバス
畑中の轟音楽し秋惜しむ
秋惜しむ饂飩の薀蓄聞かされて
木々の鳥声それぞれに秋惜しむ
秋惜しみ獣道より山に入る
山里は暮れかけており秋惜しむ
短冊に言の葉写し秋惜しむ
富士ヶ嶺に冠雪ありて秋惜しむ
トロッコ列車に一会の人と秋惜しむ
踏切にひっかかっては秋惜しむ
自販機のコーヒーホット秋惜しむ
切株に小休止して秋惜しむ
晴天の高天原に秋惜しむ
秋惜しむ家族で違う風呂温度
草雲雀庭を震わし秋惜しむ
鏡面のごとき淡海の秋惜しむ
秋惜しむ伝へそびれた侘び一言
秋惜む定刻通り一両車
沼に浮く一樹の影や秋惜しむ
島内の美術館にて秋惜しむ
観覧車頂きに来て秋惜しむ
秋惜しむうすらぼんやりとした影
秋惜しむ心もそぞろ冬支度
折れし歯の義歯になりたる秋惜しむ
秋惜しむ外苑前の日差かな
まなうらに木々の彩り秋惜しむ
生き急ぐごとき虫の音秋惜しむ
秋惜しむ空生れ変はる気配して
まさぐらば温き髪の根秋惜しむ
秋惜しむ事ぐらいで神仏必要無し
鳴く虫も蛙も守宮も秋惜しむ
秋惜しむ今宵の宿は木曽辺り
秋惜しむ〆切前の神頼み
阪神と喜楽を共に秋惜しむ
山村に旅人の眼で秋惜しむ
文机の本を書架まで秋惜しむ
蠟涙に七色ありて秋惜しむ
つくづくと秋惜しむなり港の灯
秋惜しむしらたき啜る円居かな
秋惜しみヒヨドリがくるモチノキに
胸いつぱい山気を吸つて秋惜しむ
五時告ぐる地域放送秋惜しむ
秋惜しみ今日も断捨離捗らず
秋惜しむコーラス初演待ち望み
秋惜しむ共に歩めし伴侶殿
秋惜しむ琵琶湖の中に竹生島
振り返り去り行く人に秋惜しむ
秋惜しむ散歩をすればそう思う
真夜に聞く細き雨音秋惜しむ
朴葉味噌少し焦がして秋惜しむ
山靴にくれる油や秋惜しむ
友去りぬ匂い満ちたり秋惜しむ
妻からの遠きまなざし秋惜しむ
秋惜しむ老優の声響きをり
秋惜しみ店先覗くフルーツショップ
花々の咲きし堤に秋惜しむ
自画像の終のひと色秋惜しむ
虫の音に枕欹て秋惜しむ
蒼天へ投げ込むボール秋惜しむ
秋惜しむ自分の影を踏みしめて
秋惜しむ耳の聞こえぬ媼かな
砂山に印す足あと秋惜しむ
キンピラを太めに切りて秋惜しむ
秋惜しむ住所と同じ本籍地
守宮見て秋惜しむ気を与えられ
二度咲きの金木犀に秋惜しむ
秋惜しむ垣の小菊の咲き残り
茶を運ぶからくり人形秋惜しむ
音かすか二胡弾く男秋惜しむ
カラオケは秋惜しむ歌無くて終る
豆を挽く手動のミルや秋惜しむ
秋惜しむパラグライダーで見るびわ湖
秋惜しむはらりはらはらはのはてる
刀圭を置く日もかくや秋惜しむ
ロイヤルズ青木が走る秋惜しむ
一帯は秋惜しむ勢力ばかりなり
家路のバスほどよく揺れて秋惜しむ
不審だと思つたらすぐ秋惜しむ
もみじ葉の水底にあるや秋惜しむ
山ガール出るに出られず秋惜しむ
秋惜しむ苔の濡れたる阿弥陀堂
MLB世界シリーズ秋惜しむ
秋惜しむ島の真中に美術館
秋惜しむまつただなかに逝きし人
秋惜しむ淡海の人に会ひたしや
落葉松を行きつ戻りつ秋惜しむ
秋楡の平たい種に秋惜しむ
足長(アシナガバチ)の空(から)の巢(す)閑か秋惜しむ
秋惜しむ影に倒れし彼岸花
座蒲団と猫と欠伸と秋惜しむ
道野辺の墓の野菊や秋惜しむ
秋惜しむ木霊このごろ朝寝坊
秋惜しむ風琴響くアーチ窓
秋惜しむあの日の友はもういない
秋惜しむ音ばかりなる溪の川
飼猫を呼びもどす声秋惜しむ
境内に日本の伝統秋惜しむ
秋惜む一枚だけのツーショット
秋惜しむ今年もみっけクコの花
秋惜しむ吹き抜く風に柿残る
秋惜しむ京都言葉のやはらかき
秋惜しむ虫の音さみし神無月
果樹園のぐわらんと秋を惜みけり
遠音(ね)きく日本の文化秋惜しむ
秋惜しむ日本秘湯を愛づる会
秋惜しむぱくりと裂けし石榴の実
外席の人も疎らに秋惜しむ
秋惜む牛に寄りくる蠅も減り
秋惜しむ実となり落つる萩の花
三方が窓のアパート秋惜しむ
親しげに花に落つ雨秋惜しむ
秋惜しむふっくら甘い卵焼き
秋惜しみいにしえ人の風に立つ
秋惜しむ三人三様の後ろ影
眼下には散居集落秋惜しむ
傷テープ端がピラピラ秋惜しむ
愛娘の赤いマニキュア秋惜しむ
秋惜しむ旧道の句碑粗削り