きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

朝鮮半島危機に対処できない国会議員の罪は、柳田法相の失言より重い

<「北村肇の多角多面」8>

 朝鮮半島の危機をみるにつけ、あえて暴論を。「柳田稔さん、あなたは法相をやめるべきではなかったし、その必要もなかった」。

 確かにほめられたものではない。身内の集まりで気がゆるんだからといって、あれほどお粗末なあいさつをするようでは、「この人に死刑の承認をされてはたまらない」という怒りがわいてくる。それでも、だ。はたして、法相辞任につながるような失言だろうか。

 小泉純一郎元首相が発した数々の暴言を思い出す。自衛隊の行くところが非戦闘地域だとか、人生いろいろ会社もいろいろとか。それでも彼は総理大臣であり続け、新聞・テレビの追及も鈍かった。失言どころか確信犯的な暴言が、結果としてはお咎めなしになってしまったのである。

 ただ、私が「辞めるべきではなかった」と考える一番の理由は別のところにある。失言―与党批判(野党もマスコミも)―閣僚辞任―永田町混乱といったお決まりのコースが展開することにより、国会議員が肝心な問題に目を向けずにすんでしまう、そのことが納得できないのだ。つまり、与党も野党も難問から“合法的”に逃げることを許されてしまうことへの憤懣である。

 自民党は、小泉元首相の暴言などなかったかのごとくに、柳田法相を辞任に追い込んだことで勝利に酔いしれ、一方の民主党はますます沈鬱ムードに包まれた。子どものケンカで勝った負けたとはしゃいでいる暇などないだろう、とあきれていたら、案の定、日々のニュースから外交問題は吹っ飛んでしまった。中国やロシアとの関係、TPP加盟など、日本の将来を考える上で避けられない問題はすっかり影が薄くなった。そこへ起きた「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)砲撃」事件。

 いまさら驚きもしないが、民主党の動きはもたもたしていて安心感のかけらもない。直ちに、閣僚だけではなく各党代表者を集めて緊急会合を開くくらいの知恵が、なぜ浮かばないのか。日常、朝鮮半島問題についてきちんとした議論がされていない証左だろう。一方、一連の失言問題では大音声でがなりたてていた野党も、何か歯切れが悪い。こちらも、普段、どこまで外交問題に心を砕いているのか疑わしい。

 取り組むべき問題の優先順位を国会議員の皆さんはどう考えているのか。無為無策の罪に比べれば、柳田法相の罪はむしろ軽い。(2010/11/24)