きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

赤坂と向島

 佐藤優さんが、月刊誌『現代』(講談社)で連載している「外務省『犯罪白書』」が面白い。ご存じの通り、『週刊金曜日』では佐藤さんに外交上の新しい出来事とそれに対する分析を主に書いていただいているが、『現代』では外務官僚の実状を生々しく描いている。《「覚悟とは、最大限をもって行う」というのが筆者の信念である》(同誌8月号)の言葉通り、かなり踏み込んだ内容だ。

 たとえば、同誌8月号では、和田幸浩・外務省人事課課長補佐から「外務省員としての品位、名誉を傷つけることのないよう、十分配慮ありたい」というファクスが送られてきたことを紹介しながらこう続ける。
《今回の人事課のコメントを尊重して、筆者自身が目撃した外務省某課長の銀座のクラブにおける「幼児プレー」、あるいは赤坂や向島の料亭で、外務省幹部・中堅幹部が行った裸踊りや芸者遊びの実態とその費用のつけをどこに回したか、あるいはモスクワを日本政府の特別ミッションの代表として訪れた大使級の幹部がメトロポール・ホテルで、「部屋にモスクワ大学の女子学生を呼びたい」と言って、その後、どのような行動をとったかなどについては暴露しないことにする》

 ここで出てきた「向島」という言葉は重い。赤坂芸者は寝ないが、向島芸者は一夜をともにすることがあるというからだ。だから、鈴木宗男代議士が、松田邦紀ロシア課長の〝ご乱交〟を『週刊新潮』05年11月3日号に書いたときも、例にあげた宴会の場所は赤坂だった。ロシア人や鈴木代議士との宴会の後、松田課長が赤坂の料亭「大乃」にそのまま泊まり、100万円を超える宴会費用を鈴木事務所につけ回したことを暴露され、松田課長は肝を冷やしただろうが、そこにはまだ一定の配慮がある。

『アサヒ芸能』06年1月26日号で作家の大下英治さんは鈴木代議士の言動を次のように分析している。
《外務官僚のスキャンダルも配慮している。たとえば、赤坂の料亭の話は、よく出てくるが、向島の料亭の話は1つもない。向島の料亭は、文化がまったく違う。赤坂の料亭の話で止めているのは明らかな配慮だ。
 外務官僚は、情報を得るために外国の要人の尻尾を握らなければいけない。ときには、女性の世話をすることもある。それには、向島を使わざるを得ない。それも、国益である。
 だが、外務省には、そのような場所で使える資金はない。それゆえ、外務省の幹部たちは政治家を使う。外国の要人と政治家との会合を向島の料亭でやってもらうのだ。そうすれば、支払いは政治家となる。みんなで飲んで騒いでいるうちに、外国の要人と座敷に出ている女性が上の階で部屋に消えることもある。鈴木は、そのようなことはいっさいしゃべっていない》

 おそらく、上の階に消えたのは外国の要人だけではなかったのだろう。外務官僚の腐敗はやはり、思った以上に進んでいると考えた方がよい。