きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

一応たまちゃん見ました

まだまだこのネタいけるようですね。アゴヒゲアザラシのたまちゃん。

私も一応見たクチです。シチュエーションは日本で2番目に汚いと言われる鶴見川です。

その前に多摩川に昼と夜2回行って空振りしました。暑くて私も川で泳いでしまった、お盆の頃でした。たまちゃんと一緒に泳いだと自慢できなくもないでしょう。

8月中旬は、たまちゃんという名前はまだメジャーではありませんでした。多摩川河川敷界隈でも「アザラシが多摩川に出るらしいぞ」「ウソだあ」というレベルの低い会話が聞こえてくる有様でした。私はワイドショーをこまめにチェックして情報を入手、スクープ狙いで出かけたわけです。しかし、野生動物はナマモノ。結局、たまちゃんが多摩川で暮らしているときは会えませんでした。

そこで意地になってしまい、ある夜、仕事が終わって疲れて帰ったあと、わざわざ23時頃にバイクで鶴見川まででかけました。家から20分くらいでしたけど。

当時は「つるちゃん」とも呼ばれていました(今は、さすがに帷子川の「かたちゃん」大岡川の「おおちゃん」とはさすがに言わなくなりましたが)。

鶴見川はプチ「現場化」していて、暗闇の土手には野次馬が40人くらいはいました。携帯電話片手に「今、おれたまちゃんとこ」なんて話している男もいれば、暗闇をじっと見つめるカップルもいる。たまちゃんは視線の先にいるらしい。私も暗闇に眼をこらしたが、よくわからない。すると、右隣の座っていた事情通のおじさんが「ずっと見ていると見えてくるからよ。こっちから4本目の橋だよ」という。おおありがたい「なるほど」と、再び5分くらい目をこらしたが、黒い塊がいるようないないような。同じように左隣に座っていた人も、「見えないよな」と愚痴っている。なんだ、おじさん、あなたも見えていないんじゃないの、と疑惑が。

そこで、できるだけたまちゃんに近づこうと川岸の泥島、バリケン島とカニ島へ渡りました。バリケン島はおいといて、カニ島の名称の由来はあります。鶴見川があまりに汚いので、地元の小学生が河川敷をキレイにしてカニを呼ぼうとしたのです。それでカニがどれくらい増えたのかどうかわかりません。ちなみにたまちゃんの寝床の目の前にあるその島でした。アザラシはカニも食べるそうだが……。

私はそのカニ島に乗り込み、群衆の中ではもっともたまちゃんに近い場所まで行きました。しかし、たまちゃんがこっちを向いているのかどうかわからない。残念と思ったが、現場には懐中電灯を持っているグループもいた。使ってくれないかなとも内心思ったが、「可哀相だ。そっとしておいてあげよう」と良心的な声がひそひそと聞こえてきました。「たまちゃん可哀相だもんな」と自分の邪悪な心を反省。世の中捨てたもんじゃない。

「これでよかったのだ」と観念したとき、後からへらへら笑う3人組が来て、手に持っていた懐中電灯でおもむろにたまちゃんを照らしました。こら、たまちゃんが可哀相だろ!しかし、こちらをふりむく、たまちゃん!ラッキー!

おお、やっぱりアザラシだ。でっかいなー。かっわゆーい。

その後、帷子川、大岡川と意表をつき続ける、たまちゃんの旅に私はもうついていけなくなりました。カニ島のカニが絶滅したのかどうなのかもしりません。

たまちゃんよ、あと数キロ南下すると八景島シーパラダイス(水族館)があるぞ。このネットを見るはずもないだろうけど、気をつけろ、とだけ言っておこう。駄文御免。
(平井康嗣)