きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

ドラえもん

週末、地元にある横浜そごうに足をのばしてみた。6階にある「そごう美術館」では片岡鶴太郎の個展をやっていた。一応、入り口までは行ってみたのだけど、なぜかその個展に600円の入場料を払う気が起きなかった。
そごう美術館の前回の催しは「THE ドラえもん展」で、これにはぼくも最終日に滑り込んだ。

好きではないけどルイ・ヴィトンのコラボレ・バッグがバカ売れ状態の村上隆、<リボンをとられてふてくされるドラミちゃん>を描いていた奈良美智から、ドラえもんJAZZバージョンの小曽根真まで。

入場料は1000円。規模のわりにはやや高かった。
1つの題材(宿題)も、いろいろ違う解釈と表現ができる。「どらえもんをどう表現する」という1つの宿題だからこそ、そのアーティストの解答(個性)の違いもあらためて、よくわかった。
いつもは、宿題を助けてくれるドラえもんが、宿題を出してきたわけだ。

作品を見ていると資金もそこそこ使えるようだった。金がなければ金のかかった作品は作れないのは当たり前。商業的にも成功しているアーティストたちが、ドラえもん観を披露していて、ピースフルな空気もあった。

単にテクニックで表現している人も、ものすごく考えて表現している人もいた。いずれもドラえもんの「夢」を壊さないように努めていた(と感じた)。
それはドラえもんは「ビジネスになるキャララクターだから批判しません」という、ディズニーランド的商標戦略でもないだろう。わりと純粋に現代作家たちはアプローチしていたように感じられた。

……と言ったように、ぼくでも饒舌になれるくらい現代美術を楽しめる企画でありました。
バカラのクリスタル・ドラえもんを一体誰が買うのか、これが芸術なのか、など、疑問はいろいろあったけどね。

その次の企画が鶴ちゃんだったわけです。
「THEドラえもん展」を同じ場所で見ていなければ、この企画展に入っていたような気もする。
だけど、ついつい掟破りにも、おみやげ物品売場に行き、どんな展示があるのかをまず確認した。画集も4冊くらい出しているので驚いた。でも結局、入り口から中をのぞき込むだけでやめてしまった。

そうして、7階にある紀伊国屋書店に行き、さんざん立ち読みした挙げ句、宮本常一の『日本の村・
海をひらいた人々』(ちくま文庫、680円也)そのほか諸々を購入してしまった。
宮本常一は、本誌にも何回か登場していただいた作家の毛利甚八さん(『家裁の人』の原作者、裁判制度に詳しい)と佐野眞一さんが、物書きとして尊敬する在野の民俗学者だ。宮本の足跡を赤く塗れば日本地図が真っ赤になるという。二人とも宮本の足跡を辿る旅をしている。
また、毛利甚八さんと以前話していたら、あの『カムイ伝』の白土三平とも交流があったという。白土三平さんも大好きな作家だ。意表をついて面白かったのが千葉県房総の海での生活を綴った『白土三平 野外手帳』(小学館)。磯場で虫からハコフグから「もの食う」白土三平には、驚く。よくも悪くも市場では手に入らない漁民の食生活を伝えている。写真入りで何回も読んだ。
一昨年夏は、このような人たちの吸っている空気をぼくも吸いたくなって、外房の漁師町まで車を飛ばしたものだ。

話はずれたけど、未来のロボットと言えば、今年は故・手塚治によれば鉄腕アトム生誕の年でしたね。「アトムが生まれた年」だと、おぢさんたちは騒いでいるが、ちょっとズレていて共有できない感覚だ。昨年末には、べらぼうに高いアトムTシャツなどを売っていた原宿にあるアトムの店を覗いてみたけど、閑古鳥が鳴いていた。今でもあるのだろうか。
アトムがいなくてもAIBOが普及版ロボットでできたからいいんじゃない(持ってないけど)。

さて、ドラえもんの生まれた年は2112年。これも、なんとなく来るだろう(ちなみに、のび太が生まれたのは1964年。今年39歳!)。それまで日本のミッキーマウス、ドラえもんへの夢(幻想)は保つのだろうか。

その夢を早く捨てたい人は『サイゾー』6月号の江川達也によるゴーマニズム的「ドラえもん=悪書論」はいかがだろうか。うまく演出した有害書は売れるという、おとなの江川達也の意見は納得させられるとことがある。藤子不二雄Fさんは96年に死去されているので、きっと反論もないだろう。

ふと思ったが、ドラえもんへの幻想は、おとなの子どもに対する幻想でもあるのかもしれない。

●<サラ金メディア戦争>
「目はつねに血走っているけど、心は子どもつもり」で、話をきれいにまとめようとしたのですが、先週金曜日の記者会見の話に少し触れたい。
記者会見を開いたのはジャーナリストの山岡俊介氏だ。詳しくは「東京アウトローズ」のサイトとメルマガを見ていただければと思う。(http://www.tokyo-outlaws.org/cgi-bin/index.cgi

というだけでは、そっけないので、簡単に当日の話を説明すると――『噂の眞相』にサラ金大手Tの記事がかつて掲載された。そのときに山岡氏が執筆者と睨まれ、サラ金Tに買収されようとした。それを拒否した結果、Tの依頼によって山岡氏の自宅が盗聴された。それを山岡氏が電気通信業法違反の盗聴容疑で警視庁北沢署に告訴した――ということを報告する記者会見だった。主宰者側によれば新聞・テレビ・雑誌など100人以上の出席があったという。
一方で、メディアだけに流した記者会見のFAXが事前にT側にわたっていたという。TのHP上では記者会見前に先制防衛がされていた。

本誌をも名誉毀損で民事告訴しているT(5500万円也)だが、最近はサラ金問題で有名な新里宏二弁護士たちが出版した本も訴えた。同じく5500万円。
5月13日には『週刊プレイボーイ』も告訴。警察ジャーナリストの寺澤有と元公安調査庁調査官の野田敬生の取材によって、警察と癒着関係とサラ金大手のTの癒着が暴露された、という記事が対象だ。これは5000万円ポッキリで告訴された。

また、先週号の『週刊新潮』にもT会長のラスベガス賭博疑惑が掲載された。これも告訴対象だとT側はHP上で述べる。訴えられれば、また意味不明の5000万円から5500万円の金額だろうか。
『週プレ』も『新潮』も、情報提供者はTの元社員N氏だが、彼は突然、警察に逮捕されている。
サラ金大手Tをめぐって雑誌メディアは全面戦争の様相を呈してきた。

本誌も含めて一連の報道が事実かどうか。それは裁判で“いちおう”判断される。
どのメディアもTが好訴性のある企業だと知っている。それでいながら報道しているのさ。

よしこうなったら、
「ドラえもーん! Tがいじめるよー」             (一部敬称略)
(平井康嗣)