日本のムラ・山中湖「高村王国」
2003年11月7日9:00AM|カテゴリー:マカロニほうれん総研|Hirai
山梨県・山中湖村をご存知だろうか。
東名高速道路で行けば御殿場ICで降りて、南に向かえば箱根、北に向かえば山中湖という位置にある湖のある村である。
ほとんどの人にとっては、人口約5600人のたんなる避暑地である。
とはいえ、ボクはこれまでに20回は行っている。
たぶんはじめて行ったのは18歳くらいだろうか。
知人が別荘を持っていたり、テニス合宿、野球合宿などいい加減な名目をつけては訪れ平均すると、年に1~2回くらいは行っだろう。遊び方にも飽きて自転車で1周したこともある。
富士五湖は都会の生活を持ち込めるお手軽な避暑地なのである。
以上でも雰囲気の読めない方に言うと、「元気が出るテレビ」(日本テレビ系)のピーク時に「ビートたけしのカレーハウス」ができたり、ファミリーレストランが全国にさきがけて流行ったり「富士五湖の原宿」みたいなものである。
山中湖近辺で自然を豪快に満喫しようと思っても、裏の山道を走るぐらいなのだろう、血気盛んな自然派は足を延ばして富士山をめざすだろう。
しかし、今回は別の目で現地を訪れた。目的は、山中湖「高村王国」の調査である。
「高村王国」というのは、埼玉県の土屋義彦前知事が君臨した許認可王国を「土屋王国」とネーミングしたのにあやかっているわけだ。ともかく、山中湖村では現在も“地方豪族”たる高村朝次村長一族が政治的・経済的にひじょうに力を持っているのである。
そう思ってこの湖周辺を歩いてみると、山中湖に「高村」が多いこと、多いこと。
山中湖高村美術館に、高村建設のグループ。「国際観光都市をめざし」(高村村長)て建設された三島由紀夫文学館も高村系。そして、そのようなハコモノの建設は高村グループが受注していたりする。
さらに、陸上自衛隊の北富士演習場。防衛施設庁と村の関係が取り沙汰されていることに思いをはせれば、陸上自衛隊の車両が結構、走っていることにも気づく。
自民党県議をしていた高村朝次村長は父、祖父、大祖父も村長だった、政治一家である。地元の資産家であり、政治的には4世村長のサラブレッドである。ぶっとい相続と世襲。黙っていても、村長に担ぎ出されてしまうのは、その生い立ちが強く求めるものだ。
そうなってみれば、国際観光都市をめざす山中湖村も日本全国に散在するズブズブの村社会の一つというわけだった。
そんな村長のいる山中湖村を、ひょろりとしているが腹の据わったジャーナリストYさんに取材・執筆してもらい掲載した(10月17日号「防衛施設庁の補助金漬けの山中湖」)。
そうして10月17日の発売日朝9時過ぎ。記事掲載の噂を聞きつけた地元住民は雑誌を買いに、車を30分くらい走らせた。御殿場やら富士吉田まで行ったのは山中湖村には書店が1軒もないからだ。しかし、なぜか売り切れ、売り切れで書店にはない。店員に聞くとまとめ買いをしていったという。……どうやら買い占めらしい。との話を地元の方から聞いた。もちろん、誰が買い占めたか推して知るべしだろう。
SFCGの買い占め(注)とは異なり、今回は全国規模ではなく山梨県山中湖村ローカルで終わりました。
(注)SFCGとは旧商工ファンドのこと。買い占め疑惑については本コラム2003年8月29日号参照。この会社は株式上場しており、非常に株価を気にするそうだ。、株価を気にする会社はマイナスな情報=風評→株主にピリピリするわけで、もっとも大切なお客様はお金を借りてくれる人ではなく、株主なのである。
(編集後記)
今週末はいよいよ総選挙です。個人的には最大の争点は「年金」でも「道路公団改革」でもなく「憲法」だと思って投票しようと思ってます。だけど、小選挙区制の下では票の受け皿が本当にありませんね。有権者の選択肢を狭めるこの制度は、さまざまな観点から民主的はないのではないでしょうか。
(平井康嗣)