きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

地球の怒りに直感が同調する

<北村肇の「多角多面」(89)>
 地球が怒っている。私の感覚がそれをとらえる。「科学的」ではない。だが、所詮、科学は言語にとらわれている。言語を超えた、かつ人類に共通する「直感」を無視する気にはなれない。そして、私の直感が地球のふるえに同調するのだ。
 
 米国南部が約60年ぶりの深刻な干ばつに襲われた。気温45度を超える凄まじさ。米海洋大気局(NOAA)の調査では、今年5月~6月の陸地の平均気温は、統計の残されている1880年以降の同期としては過去最高。特に北半球の陸地では平均を1.3度上回ったという。ここ30年の気温上昇傾向に加え、南米ペルー沖の海面水温が下がるラニーニャ現象が終息、水温が上昇する転換期にあたったためとされる。

 こうした異常気象は、もはや異常ではない。猛暑、寒波、干ばつ、洪水といったニュースを聞かない年はない。またプレートの動きも活発になっているようで、地球規模で大地震や火山噴火が頻発している。これらを単なる独立した「自然現象」と片付けていいのか。生物圏や人間圏との関係性を無視しては、それこそ非科学的だろう。

 地球を「巨大な生命体」とみなす自己統制仮説が提唱されたのは1960年代だった。その後、ギリシャ神話の女神の名をとり「ガイア理論」と名付けられた。当初はバッシングの嵐だったが、90年代以降、地球が自らの機構や組成を調整している可能性が明らかになり、地球温暖化問題の深刻化もあって、同理論に注目が集まっているという。

 古来、人類は「自然」に対して畏敬の念を抱き、時には「神」として崇めた。それはつまり、本能的に「地球」との共存を図ろうとしたのだろう。日本でも長い間、政治の乱れが天変地異を引き起こすとされてきた。「神」を怒らせ、「自然」から罰を受けるのは人間の宿命であると考えたのかもしれない。こうした「迷信」が消え去るとともに、わがもの顔の人類は無制限に大地を掘り返し、緑を損ね、海を汚し、戦争を繰り返し、原子力を生み出し、ついには核兵器を使用した。

 人類史上、最大の悪行ともいえる原爆投下は夏真っ盛りのことだった。炎暑のもと、広島、長崎に思いを寄せながら、一つの事実に改めて愕然とする。唯一の原爆被爆国が史上最悪の原発事故を引き起こした――。日本は農耕で成り立ってきた。自然とのつきあい方はそれこそ遺伝子に刻まれているはずだ。人間が自ら作ったエネルギー源「原子力」がいかに自然の摂理を壊したか、人間を壊したか、そのことも直感できるはずだ。被害者であり加害者である私たちがまず、地球の叫びに耳を傾けたい。(2012/8/10)