きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

小沢新党騒ぎのカラクリ

<北村肇の「多角多面」(85)

 小沢新党が立ち上がった。前途は不透明だが、新党をめぐる一連の騒ぎを振り返ると、あきれることが多々あった。中でも唖然としたのが、一旦、離党届を出した議員がぎりぎりの段階でひっくり返った、その理由だ。支持者から「政局ではないだろう」と叱られたという。この議員にとって、野田内閣への反旗は「政局」でしかなかったのだろう。一体、何を考え、何を目的に議員活動をしているのか。

 小沢一郎氏の腹の中は見えない。“壊し屋”の異名通り、民主党を割ることが最大の目的であったのなら、彼自身、政局にしか関心がなかったことになる。だが、民主党内で起きた反乱は、小沢氏一人が引き起こしたわけではない。もはや小沢氏にそこまでの力はない。マニフェストをなきものにし官僚のつくったシナリオ通りに自民党や財界と手を組んだ野田首相。そのあまりの裏切り行為に対して怒りをぶちまけた議員が多数いたのだ。つまり、「消費増税反対」「大飯原発再稼働反対」は政策の問題であり、決して政局ありきの動きではなかった。

 そもそも、客観的にみれば、民主党を壊したのは小沢氏ではなく、野田首相とその周辺の議員だ。2009年に政権をとったときの魂を売り渡し、「自由・民主党」に成り下がった。その犯人は民自公の大連立に走った連中なのである。

 こうした実態にもかかわらず「政局にかまけている暇はない」と寝言を言う議員は有権者をばかにしている。ここまで本来の政策をかなぐり捨て、「コンクリートから人へ」どころか「生命より経済」路線へと暴走した野田内閣に異を唱えることのどこが政局か。何度でも言う。これは政策の問題なのだ。

 小沢新党騒ぎのカラクリは、「反野田内閣」=「小沢派」という構図が意図的につくられたことにある。この二項対立が大連立への道を舗装してしまったのだ。一部マスコミを巻き込んだ、霞ヶ関官僚のあざとい戦略の勝利である。政策の問題なのだから、離党と小沢新党への加入は必ずしも一致しない。無党派での活動を選択するのはむしろ自然だ。ところが、小沢対反小沢派の構図がつくられたことで、離党はしたいが小沢氏とは一線を画すと考える議員の何人かが民主党に残った。かくして新党の勢いはそがれた。

「小沢一郎」という存在を利用することで大連立が成立し、財務省の悲願である消費増税が実現した。小沢氏の「力」をうまく演出しながら、一方で同氏の剛腕が過去のものであることを浮き彫りにしたのだ。恐るべき財務官僚の悪知恵。(2012/7/13)