きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

ガキ大将気取りの人間にバカ呼ばわりされるいわれはない

<北村肇の「多角多面」(70)>

 昔から、ガキ大将って結構、人気がある。乱暴者で手に負えないときもあるが、意外に面倒見が良かったり、“弱者”にはやさしかったり、要は愛すべき人物が多い。これに対し、ガキ大将を気取った権力者は、単なる乱暴者だったり、弱い者いじめだったり、まったく始末に負えない。だが困ったことに、メディアが表面的な部分だけ切り取って持ち上げると、それが実像として一人歩きしてしまうことがあるのだ。

 石原慎太郎都知事のべらんめえ口調を聞かされると、虫酸が走る。一応、生粋の江戸っ子である私は、ごくごく小さい頃から、べらんめえの中で育ってきた。千葉県に近い下町で、「半分はヤクザ」と揶揄される地域だった。それでも「おんな子どもを虐げる」類の輩はほとんどいなかった。弱い者をいじめないところに、「力の強い者」の矜恃があったからだ。石原知事にはそんな度量のかけらも感じない。

 本誌でも紹介したが、名古屋の河村たかし市長の暴言「通常の戦闘行為はあったが、南京での(大量虐殺)事件はなかったのではないか」について、石原知事は記者会見でこう語った。
「南京ね。私は河村君の言うことが正しいと思いますね。いろんな問題があるんだけどね。昔、本多勝一ってバカがいたんだよ。『朝日新聞』の。結局彼は最後に修正したけどね。あんな南京占領の間に40万人を殺せるわけはないんだ」

 小さい頃に慣れ親しんだ警句を思い出した。「バカという己のバカを知らぬバカ」。本誌編集委員の本多勝一さんが「40万人」と書いたり言ったりしたことはない。だから当然、「修正」したこともない。かりにも天下の東京都知事が、事実関係お構いなしにジャーナリストを「バカ」呼ばわりする。もはやこれは世界的な醜聞だ。

 石原知事、河村市長、そしていまをときめく橋下徹大阪市長。さらに少し遡って小泉純一郎元首相。いわずもがな、共通項はガキ大将的パフォーマンスだ。これは偏見かもしれないが、「ガキ大将を気取った権力者」は自信のない小心者にしか見えない。だから虚勢を張っていないと自分が保てないのだ。本来、そんな連中が政治の舞台に躍り出る、まして人気者になることはありえない。
 
 有権者が悪いからだという識者もいる。それは違うだろう。大きな責任はマスコミにある。新聞、テレビが連日、「真実」を伝えていれば、とうの昔に「ガキ大将気取り」の化けの皮ははがれているはずだ。『週刊金曜日』は追及し続ける。(2012/3/23)