編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

柳広司さん

 今週号の「編集長が行く」に登場いただいた柳広司さんのインタビュー当日、拙著『麦酒とテポドン』(平凡社新書)を持参した。私の人となりを知ってもらいたくて渡そうと思ったからだ。ところが、柳さんの手には『麦酒……』が。事前に購入して読んでくださっていたのだ。単純なもので、それだけで感動してしまった。

 あくまで私の推測だが、いろいろな面で事前調査を緻密にされる方なのだろう。それは著書にも現れている。『太平洋食堂』(小学館文庫)も、多くの資料にあたって緻密に書かれたことが容易に想像できた。それでいて読み物として面白い。大石誠之助、幸徳秋水、堺利彦ら登場人物たちが皆生き生きしている。

 インタビューの際に著者から勧められた『二度読んだ本を三度読む』(岩波新書)には、柳さんが30歳までに最初に読んだ18作品を紹介している。私自身、すでに読んだ本もあれば、この本に出合わなければ読むこともなかっただろうものもあり、いろいろと発見があった。(文聖姫)