きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

童謡ナショナリズム

職業ナショナリスト(いわゆる右翼など)のテーマソングといえば、君が代や軍艦マーチに代表される軍歌を想像する。

だが、最近では街宣凱旋事情が変わってきた。
強面のイメージを払拭するために、街宣車などでは童謡を意識的に流すことが増えているという。車も大きな日の丸がついた迷彩色やグレーの街宣車から、シェビーバンなどのフルサイズの大型ワゴンに。色は純白が流行りらしい。
結果として、以前より広く“親しみ”をもってもらうことに成功しているようだ。そのため、この「定食」を採用する職業ナショナリストは増えている。

童謡は確かに、日本の小学校の音楽の時間や国語の時間で習い、多くの人がいくつもの童謡を知っている。「赤とんぼ」「おぼろ月夜」などなど。しかも、多くの童謡は伝承文化であるため、「日本の伝統」(ナショナリストの現代史とも重なる長さの)を掲げるナショナリズムと相性がいい。

たとえば、有名な「我は海の子」という歌。「我は海の子 白波の……」という尋常小学唱歌である
。実は7番まであり、その歌詞といえば……

いで大船を 乗り出して
我は拾わん 海の富
いで軍艦に 乗組みて
我は護らん 海の国

である。ぼくは音楽の授業では、3番くらまでしか唱った記憶はないが、もし7番まで知っていたら、当時でも相当違和感をもったに違いない。

さすがにカラオケで童謡を唱う人は見たことがなかったが、一昨年、平井堅の「大きな古時計」がおおいに受けた。あれを平井堅に歌わせた人は非常に時代の空気を読んでいる。童謡が流行る下地が今の時代にあるからである。由紀さおりや森山良子も、今後もっと売れる可能性が高いと思うが、どうだろう。
「癒しのナショナリズム」という本は積ん読で申し訳ないのだが、内容を想像するに的を得たタイトルだったと思う。

疲れた大人たちの心に、ナショナリズムは効き始めているのかもしれない。

(注1)ナショナリズム 民族国家の統一・独立・発展を推し進めることを強調する思想または運動。民族主義・国民主義・国家主義・国粋主義などと訳され、種々ニュアンスが異なる。(広辞苑より)
(注2)「月月火水木金金」という海軍省が普及推進した軍歌もある。休みなしで働けということだろうが、万が一これが流行れば「癒しのナショナリズム」から、「好戦的ナショナリズム」に世の中は変わっていることだろう。できれば「日日水木金土土」と行きたいものだ。

追伸  ついにブックレット「電通の正体」が2月17日より全国一斉発売しました。
(平井康嗣)