きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「雪崩」__金曜俳句への投句一覧
(2月23日号掲載=1月31日締切)

春先に山岳地帯の積雪がゆるみ、崩れ落ちるのが雪崩です。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年2月23日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【雪崩】
青空は青空のまま雪なだれ
雪崩また夢見心地に聞いており
朝焼けの前のあを色遠雪崩
山暮らし言ふも雪崩を知らぬ人
雪崩跡迂回も疾しき救急車
雪崩落つ一人二人と巻き込んで
蒼ざめて走る雪崩を見てしまふ
遠山の雪崩のけむり空に溶け
一枚の雪崩祖国に谺する
恐ろしき雪崩の奥の温かみ
木も岩も雪崩を止める術知らず
遠雪崩眼鏡のつるの冷たくて
峡の奥どかんどかんと雪崩かな
底雪崩十八歳の独り立ち
なだれかな夜中に動く猫のひげ
村一つ潰して雪崩止まりけり
雪崩音前進か死か岐路に立つ
疲れ果て雪崩のように眠り込む
雪崩してあとかたもなき登山道
うず高く畳しタオル雪崩をり
鹿の耳遠い雪崩の方を向き
旅人を驚かしたる雪崩かな
笑まひたる小顔のこけし遠雪崩
落ちかかる銀河のごとき雪崩かな
鍵盤の触り冷し遠雪崩
一斉に鳥飛び立つは雪崩なり
月山へ届く口笛遠雪崩
裏山の雪崩の音で目を覚ます
山肌に雪崩のけむり幾度も
有島はやさしき地主風雪崩
岩にたつ木をも巻き込む雪崩かな
雪崩起き登頂隊の無事祈る
ささやかな陽さえ届いて雪崩かな
早暁の空の毀れて雪崩かな
雪崩起き高校生の惨事かな
隊列は雪崩起こさぬやう黙る
旅嫌ひ極まる夜の遠雪崩
静けさを破る雪崩の遠響
思い切り雪崩れてみたい山の神
嘆けとて届かぬ祈り遠雪崩
独行の靴跡を曳く雪崩紐
雪煙疾走するや雪崩れ道
赤旗の埋もれてをりぬ雪崩あと
筋もなく沙汰もなく削ぐ底雪崩
絶叫の雪崩の描く来迎図
轟々と雪崩に独り眠れぬ夜
ひきがねは鳥の一声大雪崩
山裾の表層雪崩出動令
なまじつかやさしくなればなだれかな
青天や谷底からの雪崩聞く
大谷の直球超ゆる雪崩かな
バーチャルで雪崩の恐怖知る行事
迫りくる雪崩震わす風に立つ
会いたしと結ぶ伝言雪崩あと
雪崩きて信玄公の目覚めかな
雪崩から父一命をとりとめる
旅人に雪崩るる音と教へたる
昼酒を駒子と酌めば遠雪崩
山嶺を削れるやうな雪崩かな
雪崩寸前のまままた金曜日
迂回路もさらに遮る雪崩かな
三度目はやや大きめの雪崩かな
日の高さ見て時を打つ雪崩かな
雪崩しも白く残りし山の肌
その下に幾つ嘘ある雪崩かな
一礼し過ぐる雪崩の鎮魂碑
雪雪崩しじまの村に夜のをと
日が昇るまでに過らむ雪崩の巣
何故に白馬乗鞍雪崩事故
いまさらに雪崩るる音の届きけり
暖国の人の驚く雪崩予報
白馬(しろうま)の白馬(はくば)奔騰して雪崩
雪崩見て忍者の心得思い出す
山小屋の堪へられたる雪崩かな
北壁の登攀を拒む雪なだれ
裏庭は雪崩の跡や子守唄
自由への武者震ひかな遠雪崩
手の届く雪崩のあとの樹冠かな
雪崩押す冬の事ども押し流す
菱形に裂けて全層雪崩れけり
間に合わず雪崩れる想い年度末
直滑降雪崩より先ふもとまで
風連れて雪崩のあとの竹林へ
番犬の震へる尻尾遠雪崩
地獄絵のやうに立木が雪崩かな
まつしろな夢見し朝の遠雪崩
後悔も言ひ訳ももろとも雪崩
人を掘る次の雪崩が来る前に
国境別れ間際の雪崩かな
湯気の中松の雪崩にはっとする
雪崩来て木々は大きく声を出す
切り売りをされし原野の風雪崩
暖国の人の驚く雪崩かな
狼の遠吠え雪崩さそひけり
幸せと不幸重なる雪崩かな
雪崩ゐる先頭あれはボンド卿
山の宿近き雪崩に目覚めたる
秘境の湯かつて雪崩のあった場所
雪崩聞く踏み止まつてばかりゐる
銃声のあとの雪崩の轟けり
日に透ける薄き背中に雪崩聞く
スマホ越し恩師の山の雪崩かな
雪なだれ二つの峰の色変へ
雪崩れたる地の風が消え音が消え
暗がりに雪崩の音の横たはる
銃声に雪崩るる山の怒りかな
雪崩の楽しむ合掌造りかな
雪崩来るその直前の静かさや
仰向いて雪崩の音を常夜灯
祝砲のごとく雪崩を起こしけり
忘却てふ葬送もまた遠雪崩
祖母のごと優しき雪崩など有らじ
時雨来て雪崩の行方見守りぬ
静寂に雪崩の音も吸い込まれ
父の手のふるへ雪崩のこと聞けず
どどどどと屋根より雪崩起きにけり
シュプールのどさりと消える雪崩かな
雪崩来るパウダースノウ撒き散らし
ぬるき風奥又白は雪崩の巣
ワッフ音雪崩と競ふ直滑降
ジョーカーのまだある手札遠雪崩
ハンマーを打ち込めば雪崩を起こす
地響きのやがて激しく雪崩たり
一命を取り留めし人雪崩止む
遠雪崩たやすく人を殺す音
裏山に轟音逃げろ雪崩来る
全共闘世代と言はれ遠雪崩
遠雪崩山の慟哭聞く夜かな
騙し絵が薄く剥がれて雪崩落つ
音よりも速く駆け来る雪崩かな
大雪崩琵琶湖に戻る水の音
地殻変動察知して雪崩れけり
消しゴムの角まるくなり雪崩くる
愛人と遠き雪崩を見てゐたり
しらびその疎林尽きたり雪崩れ道
轟音の遅れてとどく雪崩かな
どどど鳴り山荘近く雪崩れたる
雪崩打つ音の轟くニセコ町
遠雪崩午後の珈琲濃く入れむ
山明けの雪崩の跡に死せる者
寝返の雪崩は遠く夢うつつ
みちのくの大河に沈む雪崩かな
果樹園に囲まれる村雪崩聞く
千の馬山下るかに雪崩かな
遠山の隅に白煙雪崩かな
雪なだれ谺行き場を失ひし
鳥高き朝や雪崩の遠響き
鉄塔は猛々し雪崩はやさし
運転中雪崩注意にはっとせぬ
一晩のうちに消えたる雪崩あと
大雪崩星の瞬かざるうちに
遠雪崩麦搗く杵の音消ゆる
今日発とう明日は雪崩になるらしい
異国語のスキーヤーの脇雪崩墜つ
出動の電話の掛かる雪崩かな
二階家の窓震えをる遠雪崩
高原の薔薇窓通し雪崩音
恋心雪崩れる彼女のチョコレート
天地(あめつち)の狭(さ)くなりにけり大雪崩
山道で当然雪崩を思うかな
遠山の雪崩のごとき煙かな
仰ぎ見て遠い雪崩の白い影
弟を亡くなす人と雪崩聞く
雪崩あと道標呑みぬ道消しぬ
昼過ぎの化粧崩れか雪崩あと
遠雪崩寅さん目覚む無人駅
上見れば雪崩警戒注意報
山小屋の前を雪崩の岩煙
雪崩から聞こえる音に凄味あり
登山中雪崩に遭いて良く眠る
もう動かぬリフトの下をなだれ雪
過ぎたれば煙のようで雪崩かな
ニュースから雪崩惨事を知る夜かな
遠雪崩ウェルをはみ出す試験液
兄かつて雪崩に巻き込まれて無事
闇の中雪崩の音に押し黙る
しずる音の雪崩の音を呼ぶやうに

【伊勢海老】
伊勢海老の木屑跳ねのけ飛ばしもし
伊勢海老にさあ頑張ろう生きていく
伊勢海老の姿形に食べ忘る

【初富士】
初富士と駿河の海との決まり良さ
あれこれの白におとらぬ初の富士
近々に初富士仰ぐ伊豆の里
初富士の凛と立ちたる日本晴れ