兼題「檸檬」__金曜俳句への投句一覧
(10月27日号掲載=9月30日締切)
2023年10月20日5:34PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
国産の檸檬が増えてきました。香りと酸味が強く、ビタミンCも豊富ですね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年10月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【檸檬】
レモン切る農家の挑む菓子の美味
漁師飯檸檬絞りてカルパツチヨ
世知辛い世の隅に置く檸檬かな
丸善に得体の知れぬ檸檬見ぬ
初恋を語るに檸檬とは陳腐
キュッと来る下五しまりレモンかな
ドラムソロの間奏檸檬転がる
百年を孤独のままとして檸檬
檸檬切り風の行方を探しけり
自由にも似たる一滴檸檬汁
君は檸檬ミルク紅茶は前の彼
ありがちな青春やり過ごし檸檬
画本の上檸檬を据えた人偲ぶ
南下する平和公園檸檬の香
レモンレモン太陽からの地雷かな
参加賞檸檬三個の俳句会
薄切りの檸檬紅茶に沈む夜
酸っぱいが分らぬ子供に檸檬かな
檸檬ってシンギュラリティかもしれず
ぐい檸檬恋の如くに落ちる様
メモ書きに檸檬目薬砂時計
アンコールピース四辻は檸檬の香
檸檬噛めば天地の芯の透き通る
人の世の酸いも苦みも青檸檬
嘘臭き街嘘臭きレモンの黄
ラム4に対してレモンジュース1
テーブルに開く日経檸檬切る
半分も要らぬ檸檬を二つ三つ
恋を知る少女に檸檬似合わない
介護士の檸檬を絞る爪の月
檸檬ティー老母ほほえむ秋の午後
どの皿も檸檬添へられ洋食屋
初産や名前辞典の横に檸檬
レジかごを檸檬ひとつが往復す
質量を檸檬程度と侮りし
厚切りの檸檬の野生滴りぬ
檸檬買う一日ぶらりと歩く前
檸檬切る八十路の青春朝のお茶
差し入れの唐揚げ百個レモン五個
マッキーで檸檬に顔を描き独り
檸檬とふ響きやはらかくちびるに
檸檬の棘や吾子いよよ反抗期
魚屋の篭に盛られし檸檬かな
檸檬握りラグビー観戦スポーツカフェ
檸檬齧る子流す涙の叫び
シスターの遠き眼ざしレモンティー
レモンの木フォークソングの花開く(レモントゥリー:米歌手PPMの1962年のデビュー曲)
蛎殻と檸檬たわわに島の朝
前線に檸檬を握る君が立つ
閉店後檸檬の色が薄く見え
檸檬噛むときは口紅うすく引く
美女らしく檸檬三滴焼き餃子
島々の光る檸檬の点描画
檸檬切る今日より明日と言い聞かせ
友だけに告げし片恋檸檬水
レース越し檸檬の尻の青きまま
養いは籠の檸檬と身が一つ
檸檬切る安平の朝に厚く切る
包み焼き檸檬の輪切り散し置き
フライには檸檬その月並みが嫌
しかたなく妻に言はれて買ふ檸檬
出勤の檸檬の棘に止めらるる
読書にも飽きて檸檬をころがせり
庖丁の研がざるままに檸檬切る
世の闇に檸檬の香り落ちてゐる
あたたかきものに檸檬の香気かな
檸檬かじるトパーズ色の香り満ち
檸檬買ふ変はる都にさよならし
失恋に檸檬水ぐい酸っぱすぎ
不発弾のごとき檸檬の尻尖り
父眠る床に檸檬の香も立たず
バーテンダー檸檬を薄く切りてをり
三日月を絞れば満ちるレモンの香
レモン五つ真夜の銀座の飾窓
檸檬?ぐ島への橋の?眩し
レモンティー記憶の中の胸騒ぎ
病葉をむしる檸檬はまだ?く
単線の駅舎の庭の檸檬かな
真つ直ぐな切り口光ってをり檸檬
生きづらき青春の日や檸檬の香
そう言えばあまり聞かない檸檬の実
檸檬噛む五臓六腑をかろやかに
構図よし花瓶の傍の檸檬かな
薄切りの檸檬の種浮くアールグレイ
半額の檸檬を嗅いでまだいける
自分から檸檬をあげる事はない
暗がりに檸檬の呼吸する気配
フィールドに魔法の薬缶檸檬入る
転職を母に打ち明け檸檬切る
檸檬噛みトパーズ色の香気待つ
女子力といふこと檸檬を絞ること
青檸檬見詰めるだけで唾溜まり
檸檬匂ふいつだつて妻精一杯
傷のあるレモン嫁など行かんでいい
手の平の檸檬の香匂ふ駅ピアノ
右肺に小さき星あり檸檬噛む
聖橋レモンかじりて放らざる
レモン切る一日ひとりを愉しみて
甘やかな恋や檸檬は食べられぬ
青空を掴むがごとく檸檬もぐ
一個なら切る檸檬二個なら飾る
籠盛りの黙る檸檬を常夜灯
グリルして檸檬絞って夕餉かな
檸檬かじる昭和のスター古稀も過ぎ
檸檬切るくし切り輪切り真っ二つ
檸檬一つ枕の上や病室の
恋したかあいつが檸檬買うている
国内産印す檸檬は香り良し
障害者手帳の傍に檸檬の黄
檸檬囓る何故か兜太が懐かしく
磁器にのる白身魚と檸檬かな
下投げで檸檬放れる別れかな
街の本屋檸檬置かずに閉店す
『女生徒』は実在したりレモンティー
絞らるる一滴までも檸檬かな
檸檬切る円安につき極薄に
檸檬香や詩人の歌を諳んじる
カクテルのグラスをすべる檸檬かな
ラガーらの勝鬨に揺れ檸檬園
檸檬噛み目覚めぬ脳を目覚めさす
あの例のレモン上手に切れました
檸檬の香あんたの話くどすぎる
掌の過不足の無き檸檬かな
人妻やまじまじと檸檬を選ぶ
檸檬二個渡しただけで別れけり
籠のなか取り出し檸檬かくしをり
スーパーの棚に瀬戸内檸檬かな
一滴の世界を変える檸檬かな
本堂の床に檸檬を置いて来た
うな垂れて丸まつてゆく檸檬かな
檸檬しぼる独りが似合ふ夜であり
多様性の時代に檸檬よく似合ふ
檸檬かぼすシーカーサー柚子の味噌
パエリアの焦げへ檸檬の一絞り
ころころと恋も檸檬もよく転び
大海のヨットの灯り檸檬汁
檸檬切る窓の中にはまた窓が
檸檬見るため瀬戸内の島に寄る
檸檬にはあまり思い出ない私
檸檬食べ学生の頃思い立つ
レモン輪切りに捻挫が癖になる主将
レプリカのモネのあかるさ檸檬噛む
檸檬絞る生クリームの角ねじれ
瀬戸田には檸檬の風の吹きにけり
初孫に檸檬与えて顔のぞく
夜が綺麗檸檬噛りし君が云う
365檸檬が綺麗だ366
檸檬抱く石膏像の美術室
蹴りパンチ心肺機能檸檬かな
念願の檸檬の実る庭とせし
国産の檸檬小さし夕間暮
駅出でて永き病を檸檬の香
檸檬熟る過疎の山林守り継ぐ
先輩の酸っぱい注意飲む檸檬
君好みの厚さに切れぬ檸檬かな
薄切りの檸檬沈めてダージリン
鶏の足かたし檸檬は瑞々し
脇役に檸檬の名持つ女優いて
檸檬噛む亡き母に似し前歯あり
檸檬齧るあの山巓の深呼吸
はるばると海峡越へて来し檸檬
留学を諦め檸檬かく苦し
檸檬の黄吾れを過ぎたり黄金期
サラダには檸檬の皮をひとしずく
キッチンに籠いっぱいの檸檬置く
レモン水ジェーンバーキン幼な顔
失恋も理不尽も檸檬に溶けて
老人の部屋のどこかに檸檬あり
ぺらぺらのレモンスライス喫茶「純」
退学の友の机に檸檬噛む
初めてのレモンにくしゃ顔子の涙
円卓の檸檬転がれもう来るな
根幹は檸檬を立たせて見れば分かる
酒好きの友の訃報や檸檬噛む
気が付けば檸檬の季節島のぞむ
明治よりトライも続く檸檬来る
ジブリ見た帰り檸檬のような顔
握力のなきまま絞る檸檬かな
丸善の安達太良山の檸檬かな
らりるれれろ檸檬の両端尖がって
撫でてゐる指いつぽんの檸檬かな
握りしめ雫を絞る檸檬かな
真向かひ座る人なきレモンかな
檸檬汁酸っぱあなたの標準語
檸檬握り僕の歩いた後に道
面会の時間10分レモン切る
大人しく脇を固める檸檬たち
檸檬齧るしまなみ海道の風に
檸檬眺め孤独な男思ひ出す
微笑して酸いも甘いも檸檬かな
みづうみのごとく晴れたる檸檬かな
おおかたは切られてゐたる檸檬かな
一面に輪切りの檸檬置いてみる
独り身に瓶の檸檬を賄ひぬ
一雨や脇に檸檬の紙袋
まだ青きままの檸檬で出港す
檸檬噛む元ボクサーの拳固し
刻印を打たれて叫ぶ吾が檸檬
檸檬ましろくマスカラを塗り重ね
檸檬水飲んで土佐弁威勢良し
告白にだんまり決める檸檬かな
俎板を先づは洗ひて檸檬切る
地雷やめせめて檸檬を置かないか
海からの匂ひのごとき檸檬かな
薄切りの檸檬並んで白々し
澄み渡る檸檬の香りティータイム
檸檬読む発音記号Lの字で
れもん切るこれがわたしの感性です