きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「花八手」__金曜俳句への投句一覧
(11月25日号掲載=10月31日締切)

八手の花はウコギ科の常緑低木です。暖地の海岸近くの山林に自生しています。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年11月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【花八手】
針山の侘しくなりぬ花八手
一人ずつ召され行く道花八手
ひっそりと生きるつもりが花八手
とっぷりと暮れ岬鼻の花八手
漢らの目には入らぬ花八手
花八手玄関先に少しの土
懐かしい月光仮面だ花八手
風通う人なき寺の花八手
秘密から秘密が生まれ花八手
芝居跳ね駅へ急げば花八手
八手咲きこつんと当てる車止め
子には子の悩みがありて花八手
花八手空は変はらぬ空のまま
夢をみる海星との恋花八手
姿なき猫の鳴き声花八手
和菓子より洋菓子が好き花八手
八手咲く空は広域避難場所
おつという声に見つかる花八手
花八手次女の一人称はボク
そこまでは器用と言えぬ花八手
雪隠の横の八手よ花八手
花八手スマホ始めし母米寿
女子寮の木戸半開き花八手
お隣りの人妻しづか花八手
しずけさの狭き路地裏花八手
八ツ手咲く庇護の違ひし三姉妹
曇り空どんより重し花八手
本堂は千手観音花八手
奉行所の跡に咲きをり花八手
蹲に玉の雫や花八手
控へ目な白を纏ひて花八手
無為の庭陰に華やぐ花八手
妻残し旅立つ朝の花八手
花八手友に撃ちたる遊びかな
花八手大葉の陰からのぞきをり
便所窓開ければそこに花八手
遺言書書く歳になり花八手
母の手がふたつ入るね花八手
病得て笑ひそびれて花八手
花八手けふも寝屋子の集ひ来る
花八つ手秘密基地ある子らの地図
花八手幼馴染の家の前
ゆふぐれの声を響かせ花八手
花八手鬼の棲家に移住せり
日翳れば八手の花の浮かびくる
招かれて固き裏木戸花八手
裏庭にさびしき風情花八手
花八手読みさしの本売りにゆく
花八手9人知れず咲く季節来ぬ
なめさせてあげる八手の花盛り
花八手葉擦れに夜の深まりぬ
花と葉にきっとロマンス花八手
城垣に花八手採用案件が
母と呼ぶ人は三人花八手
実朝に吾に遠き京花八手
まだ此処は賀茂川ヤツデ咲きにけり
花八手介護士そつと煙草に火
夕闇に浮かぶ豆腐屋花八手
体育館の裏の初恋花八つ手
行きどまりの路地を戻るや花八手
都路を歩き疲れて花八手
花八つ手西陽わずかに射すところ
茶室存る人の招くや花八手
黒猫の巡回終へり花八手
隣家より罵る声や花八手
花八手飛び立つてゆく人がゐて
病院にひっそり咲きぬ花八手
花八手義母に悪気は無いらしき
過剰歯といふ秘密あり花八手
花八手見上ぐ電光緊急報
花八手庭の隅なる商人館
学舎は遠く小さく花八手
留守ですと玄関に札花八つ手
裏路地の丸きポストや花八手
外商の絶えて久しき花八手
花八手盲導犬の後頭部
花八手だるまちゃんには手足あり
曇天の天より白し花八手
団扇咲き散りぬるをわか花八手
おざなりの二礼二拍手花八手
花八手中まで透けてしまうなり
独り者風呂屋の帰りの花八手
戦争のはなしを今日も花八手
花八手風待てど風来ざりけり
薄暗い公園の裏花八手
花八手吾子はグーよりチョキが好き
蛙にはちょうど良い傘花八手
花八手白ひと知れず咲きにけり
ゴンドラに枝先の触れ花八手
泡盛の上気をあふぐ花八手
恐らくは生了える地や花八手
花八手葉の隙間から迎へをり
残照を隠しきれずに花八手
住職の和顔愛語や花八手
カナダ便航路へ靡く花八手
花の毬住みよさそうに花八手
咲いて散り路上に残す花八手
笊の雑魚配る垣根の花八手
逢はぬまま三年(みとせ)過ぎけり花八手
黒髪に風の息触れ花八手
江の電のカーブなめらか花八手
登校に寺の抜け道花八手
花八手拓友の碑へ道栞る
古家の取り壊されぬ花八手
花八手しろき珠をば拡げたり
鐘の音の被さる湾の花八手
すこしづつ八手の花のはみ出しぬ
日蔭から誘う丸みや花八手
カステラに待ての影起つ花八手
花八手つたい歩きの父戻る
老犬のお手の重たし花八手
朝暗く新聞受けに花八手
花八手文字の薄れし父の句碑
花八手母よ百寿を越えてくれ
城郭に裏門の顔花八ッ手
知らぬ間に犬小屋消えて花八手
性変えて一木で生く花八手
独居なる身とせし朝や花八手
いつぞやの恋路を知らず花八手
残像となりゆく痛み花八つ手
盛り場の旧家の蔵や花八手
露地のタムンクが叫ぶ花八手
後ジテに潮騒去らず花八手
花八つ手わが背を超へし隣の子
豆本の詩集八手の花咲けり
我が言葉何も残らず花八手
エンディングノートに挟む花八手
雨細き実家の狭庭花八手
花八手未来を目指す生き物だ
明るきに押し上げられて花八手
狭き庭こんな処に花八手
廃坑の駅舎の盛る花八手
これといふものなき寺の花八手
落選の報せの届く花八手
弁慶の大手広げる花八手
葉の陰に指輪は錆びて花八手
朝日射す狭き庭にも花八手
やはらかに風を梳きたる花八手
花八手控へめに咲く空き家かな
空泳ぐ陽のほこ先に花八手
故郷を離れし娘花八つ手
花八手喪中の門の灯にあをき
光陰の過ぎゆくはやさ花八手
花八手お釣りの五円玉に糸
宴席をそつと抜け出し花八手
母吾れを知るや知らずや花八手
文豪の生家小さき花八手
太陽は姉に注げり花八手
花八手譲られし席ほの温し
靴音も健やかなりし花八手
花八手海の小さく見える場所
散歩道子犬鳴く路地花八手
歌丸は置屋の育ち花八手
皆勤の三十八年花八つ手
黒塀の屋敷の庭や花八手
淡き色変へてひらけり花八手
花八手咲きて客待つ隠居部屋
公園の後は買ひ物花八手
傘立ての赤錆しるき花八手
花八つ手寄つてくるものは拒まず
深爪の吾子の中指ヤツデ咲く
江ノ電の走るきはまで花八手
花八手甘き宇宙を浮かべをり
花八手ポンポン振れりチアガール
花八手談志師匠とすれ違ひ
花八つ手父の享年すでに越え
夜勤あけまぶしかりしよ花八手
旅先の下部温泉花八つ手
親方の二時の一服花八手
蹲踞を見遣りて露地を花八手
ひそひそと虻にもて期の花八手
地面ばかり見てゆく子らに花八手
とろとろと陽のわだかまる花八手
花八手芸妓の翳す舞扇
草間彌生のつぶつぶの花八手
武蔵野の空暗ければ花八手
花八手今日を最後の電車来る
花八手人影疎らニュータウン
初恋を隠してしまふ花八手
暗がりに花八手その奥に闇
花八つ手盆地の雨は煙たくて
ちさき花集まる宇宙花八手