きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「鳴子」__金曜俳句への投句一覧
(9月30日号掲載=8月31日締切)

近年見かけなくなりました、鳴子とは鳥威しのための装置です。板に細い竹筒を掛け並べ、遠くから綱を引くと、カタカタと鳴るようになっています。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年9月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【鳴子】
亡き父の引くらむ真夜の鳴子縄
鳥たちと交歓するやひたの音
いつ迄も音の残れる鳴子かな
引板守り(ひたもり)のなき夜は鳴子風が引く
無人驛から延びてをり鳴子縄
綱引いて鳴子騒がせ雀追い
かはたれは低音強き鳴子かな
旅人に響く鳴子の里の音
こんな夜は鳴子の音とJ-POP
湿り気が揺らす鳴子の音遠く
止みかけてなお鳴り止まぬ鳴子かな
新しき板もまぶしき鳴子かな
農薬をまかぬと言うて鳴子かな
鳴子縄引いて澄まして雀の子
鳴子鳴るあれは何かと尋ねられ
杭打ちて鳴子縄張る日曜日
天と地の微かな軋み鳴子かな
夕影や鳴子は空に渦なして
鳴子引く我に福音ある日和
鳴子縄火の見櫓に結ばれて
動じざる分水嶺に向け鳴子
我が裡の鳴子引けるは唯ひとり
雀らの群舞うながす鳴子かな
母の老い不出来の鳴子吊したる
夜の鳴子鳴ると言ふよりないてをり
誰かの手待ってゐるかに鳴子ゆれ
鳴子音一つ二つと闇の吸う
鳴子引く風の欠片を集めつつ
群れ雀鳴子が止めばまた戻り
鳴子鳴らず田畑取り巻く電気柵
よろこんでひつぱつてみる鳴子縄
移住者の若いふたりの鳴子かな
教会に鳥移りたる鳴子かな
からからと鳴子の音も夢路かな
耳澄ます鳴子の後のしじまかな
決然と前にすすめよ鳴子鳴る
鳴子引く今も住あり平家里
秋の田にリユースのビール缶鳴る
瀬戸内の小島に響く筒鳴子
鳴子鳴り家に逃げ込む子猫なり
絵馬に似る鳴子や古き石仏
また鳴子慣れし雀はたじろがず
声変はり前の鳴子の斉唱す
いつも来る鳴子を引く子いづこの子
曲線を描き鳴子の眠りをり
ひねもして鳴子の縄の緩む日々
夜の鳴子乾ききつたる音重ね
調子よくぶらぶら揺れる鳴子かな
鳴子にも驚き見せる老雀
鳴子なる刹那に父の匂いあり
婚の朝島の鳴子の鳴り止まず
うつくしき音のありけり山鳴子
鳴子引くあちらもこちらも生きるため
そぞろなく誘(いざな)う風の鳴子番
朝風に羽根ある如し鳴子鳴る
小刻みに揺るる島の灯遠鳴子
縦走の南に鳴子北に海
鳴子引く午後は案山子にまかせたき
山風や互い違いに鳴子鳴る
農薬をドローン撒きて鳴子止む
鳴子縄張ってからからラコリーナ
かたことの風と思しき鳴子かな
猿の子の引いて鳴子に戯るる
旅人に里心呼ぶ鳴子かな
鳴子引く趣向や郷土資料館
ひとつだけ止まりそびれて鳴子かな
鉄塔が風斬り劈く鳴子かな
引板鳴れどヨナはいまなほ魚の腹
鳴子では物足りずカーキン音頭
夕方と思ふ鳴子のひびきかな
徘徊の人かき鳴らす鳴子かな
子の記憶鳴子の音に思い出し
今の子は鳴子位で驚かぬ
ごんぎつねの本を読み終へ鳴子の音
岡つ引の出てくるやうな鳴子かな
黄金なす稲田の鳴子音もせず
一斗缶鳴子となりて光りけり
過労にて身を細めたる鳴子縄
すつかりと雀慣れきり鳴子縄
山影に村のあるらし鳴子の音
過疎村の祭りのように鳴子鳴る
たはむれに鳴子を引くや都会の子
鳴子縄引けば陽光とび散りぬ
明日が昨日より若々しき鳴子
稲波に煽られて鳴る鳴子かな
うわつきしこころいさめる鳴子かな
鳴子鳴り揺らぐは我の心かな
節くれて鳴子づくりの翁の手
酔鯨も盃置いた鳴子かな
今日眠り明日は明日なり鳴子守
これ雀ちっとは驚け鳴子ひく
闇薄し鳴子からからソロキャンプ
移住者の有機農業鳴子鳴る
秀頼の伝説の地鳴子かな
鳴子引く実る黄金へ大拍手
鳴子の音ビルの間の隠し田に
はじめての鳴子おびえる赤子かな
風まかせ鳴子の縄引き寝ずの番
鳴子引く街灯の無き帰り道
突然の鳴子ふしぎの國に入る
鳴子縄引いて朝寝の捨し猫
秋の田やモビールの大鳥飛ばす
鳴子鳴る母と別れし駅裏に
遠くまで張渡したる鳴子かな
鳴子守畦にラジオを聞いており
蒼天やこれは吾が田の鳴子の音
山鳴子けふ城跡に流れけり
山よりの風ことごとく汲む鳴子
瑞穂なる郷の水車と水鳴子
引かずとも鳴子鳴りけりいじらしき
呼ばれても呼ばれても鳴子のうつろ
畑仕事終へる合図の鳴子かな
鳴子鳴り飛行機雲は消へにけり
たわい無き喧嘩の果ての鳴子かな
沢渡り鳴子は君ほどに遠く
とんぼうも列をなしたる鳴子かな
からころと谷戸のつまりの鳴子かな
からからと乾いて峡の鳴子かな
郵便の鳴子鳴らして届けらる
じやんけんに勝ちたる子から引く鳴子
何か来る気配鳴子の鳴りて止む
鳴子縄故郷思ひ仮寝かな
あたらしき板のととのひ鳴子かな
カタカタと鳴子鳴りけり忍者の夜
危うさの満ちて引かるる鳴子縄
今風の鳴子や紐に吊す鴉
健康にあれば良く鳴る鳴子かな
耳唆る鳴子の音に後もどり
身構へる猫に続けて鳴子音
夕鳴子柾目のかたち風を呼ぶ
しんしんと乾く故郷の鳴子かな
野ざらしの鳴子に小風留まりぬ
雀散り鳴子の音や村の朝
風向きの変はり鳴子の引き加減
足首に紐を結びて鳴子引
ステレオのボリュームあげる鳴子かな
鳴子など無視する敵に電気柵
子雀は鳴子位で逃げませぬ
旅人を驚かしたる鳴子かな
収穫の喜び鳴子のんしゃらん

【不明】
いつまでも止まぬ太鼓や秋祭
本当に好きな人知る秋祭
昭和期のざるの上なる新豆腐
荷おろせば峠の茶屋に新豆腐
夢の中に笛太鼓鳴り秋祭