きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「鰻(うなぎ)」__金曜俳句への投句一覧
(4月29日号掲載=3月31日締切)

「鰻」は高くなりました。丑の日に食べるよう宣伝したとされる平賀源内も驚いているでしょうね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年4月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【鰻】
オール五の子の真ん前の鰻かな
息止めて鰻裂く人眺む人
とりあへず鰻にしやう子の帰省
相当に待たされて待つ鰻かな
場違ひな鰻屋かもと思ふ我
並べられ鰻は不屈を象徴し
鰻重を下げて無沙汰を詫びにゆく
踊り手の指先なめら鰻茶屋
鰻君鰻さんかと迷ひ出し
カレーとの相性はつか鰻めし
早暁の鰻うごめく青バケツ
鰻見て迷ひの無かりき詩人かな
定年と言わず出発鰻食む
目打ちせり鰻鍋屋の六代目
銅婚の二人で食す鰻かな
鰻丼のすこしはみ出て置かれをり
初孫や部下へ奢りの鰻膳
喜寿となり次の米寿へ鰻食ぶ
力出しなほ生きねばと鰻食ふ
大鰻食うて精進落しかな
鰻重の箸を立てたる隅の飯
鰻の目やさしきままに裂かれけり
鰻食ふ我と目の合ふ車窓かな
鰻食ふ来世鰻になるほどに
国境の夜風飲みたる鰻かな
良縁のまとまりさうな鰻かな
尾と頭おのおの意思をもて鰻
大鰻どうや見てくれ川漁師
鰻一尾私の一人の記念日に
鰻裂く躊躇ひのなき目打ちの刃
空堀の風ほの昏し鰻待つ
間違えて釣れし鰻の暴れけり
鰻掻腕に重たき水の渦
下町や鰻焼く煙香りけり
幸せは鰻重の蓋開けるとき
鰻割く途方に暮れてゐる隙に
何のかんの尽き鰻屋に焼きを待つ
電話帳に印のありて鰻取る
鰻食う賀茂の川風二階席
波音を鎮め鰻の咽裂かる
水底を巡る攻防鰻筒
鰻屋の香りいただき飯を食む
鰻めし待つほどに寄す煙かな
掻っ捌く鰻の腹の一文字
東京の訛りちらほら鰻蒸す
柳川や籠飼(ろうげ)の鰻懐かしき
南門出ればうなぎを焼く匂ひ
母さんの実家古りゆく鰻かな
国産と告げて女と鰻食ぶ
水涸れて浅瀬に太き鰻の背
寅さんを訪へば鰻の川甚へ
鰻重を待つ間に被る煙かな
月面を撫でて鰻の太き腹
芝居跳ね鰻屋の香をくぐり入る
絶え間なく水に打たれて籠鰻
鰻重を食ふべく渡る大河かな
身悶えのごとき匂ひや鰻食ふ
父の忌の茶漬けに終はる鰻かな
五寸なる目釘鰻を仕留めたり
肺病の祖父の墓前に鰻供ふ
うなぎ屋の句会は荒れる兜太の句
鰻屋の煙にすでに二合空く
眼の位置を下向きにして鰻食ふ
売り場には鰻選る指犇めけり
平底の和船にくねる鰻かな
垂れ焦げるにおいに釣られ鰻飯
少年の非情の先で鰻裂く
リハビリに耐へたる母と鰻飯
鎌倉や文学居士の鰻好き
泥吐けば鰻は一層自己らしく
鰻食ふ黒き上着を椅子に掛け
こいつこそごんの逃がせし鰻かな
芸術は鰻の味か生き方か
鰻食ふちあきなおみを知らぬ子と
鰻焼く路地の夜風の余りたる
鰻の夜満潮近き汽水域
水槽の夜を貫く鰻かな
久しぶりと言へば十年鰻食ふ
定宿のひときれだけの鰻かな
鰻屋の幟にうの字くねくねと
刃を研げばくねる鰻の桶狭し
じたばたと桶に暴れる鰻かな
鰻重や昼の舞妓の幼顔
早食ひや長靴の客の鰻めし
山越えのみちはるかにし鰻食ふ
光りたるうの字しの字の鰻かな
鰻裂く板に一枚みづを敷き
どんぶりの蓋閉じさせぬ長鰻
探し当てたっぷり待って鰻食ぶ
鰻屋の路地をサンバの列長し
二人してワンパターンで鰻重に
橋上より受くる弁当鰻待つ
焼ける間の肝のしぐれ煮鰻かな
鰻ならあつた蓬莱軒を推す
こめかみに力じつくり鰻食ふ
持ち込んで買うて貰へぬ大鰻
天に海あるらん鰻立ち上がる
朝野球勝ちて鰻屋貸し切りに
鰻屋の丈夫に稼ぐ渋団扇
きゅうと哭く目打ち鰻の断末魔
鰻屋へ寄る楽しみも成田山
桶の中水むさぼりし鰻かな
尺越への筌を逆さに鰻かな
川風の通る座敷の鰻めし
また鰻なのかと云はせたき家計
小上りに初孫寝かせ鰻かな
格安のうな丼を食ぶ牛丼屋
バケツ底にぬたくる鰻もつれあう
深海の静謐にあり鰻の目
裂かれをる身をまだよぢる鰻かな
犇めきて鰻の鳴いたやうな声
礼服のネクタイゆるむ鰻かな
明らかにあしたのために食ふ鰻
網戸まで開けての煙草鰻食ふ
頭振り少し遅れて鰻の尾
鰻屋の香りファックス絶えぬ部屋
芝居小屋くぐれば鰻へと続き
打たれ裂かれ焼かれ食べられ鰻
源内のことを今年も鰻食ぶ
清水を浴びる鰻のみそぎ桶
湧水の里の鰻や脂乗る
鰻屋で余韻に浸るミニシアタ
定年を鰻屋に告げ大吟醸
車いす通い詰めたる鰻横丁
伯母に会ふたび鰻屋の暖簾ゆれ
うなぎといふ太き濃き字の日記あり
鰻焼く煙しみたる成田山
父が木をみて鰻食ふ日なかかな
白焼のやや物足らぬ鰻かな
継ぎ足され鰻のタレの不滅かな
鰻食ぶ骨煎餅がつまみかな
一生は孤独でいいさ鰻かな
うの字にて店を定めし鰻めし
どんぶりの鰻にイワシは嫉妬する
鰻とる千秋楽の吉右衛門
白米とタレばかりなり鰻めし
鰻待ち夫を見護る女たち
鰻一匹葉擦れのなかに眠りおり
捌かれてなお白白と鰻の身
鰻屋の五台増えたる駐車場
川に潜りし子長じて鰻割く
大から小ケースに並ぶ鰻の値
辿る道曲ってをりぬ鰻かな
水桶に鰻ひしめき絡み合い
大冒険鰻の旅の味わい方
出陣や飯は鰻かすっぽんか
鰻食ふ生簀のうなぎ見えぬ席
二軒先まで鰻屋の煙かな
東京の俳句仲間とうなぎ喰ふ
江戸前の鰻二串家苞に
鰻重の箱の塗りよき老舗かな
桶の底の塊ほぐし鰻とす