きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「蕗味噌」__金曜俳句への投句一覧
(3月25日号掲載=2月28日締切)

「蕗味噌」のかおりはいいですよね。ほろ苦い味には郷愁をおぼえます。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年3月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【蕗味噌】
蕗味噌や谷の音たて酒匂ふ
蕗味噌や一口苦し大地の実
蕗味噌を買ひたきもありクラス会
蕗味噌の苦味デブリがうずきだす
浪人となりたり蕗味噌のぴりり
隣りあう人も蕗味噌舐めにけり
蕗味噌や木に鳥一羽残るらし
蕗味噌は舐めるがよしや二合酌む
軽トラに満つる蕗味噌の香り
蕗味噌やシングルマザー通す人
蕗味噌のラベルばっちゃのフルネーム
山がかる夜は蕗味噌の小雨かな
蕗味噌に朝餉の膳の漆器かな
蕗味噌の苦味ほろほろ崩れけり
蕗味噌や柱の疵は低きまま
蕗味噌や聞くべき事を聞かぬまま
蕗味噌や田舎暮らしの若夫婦
蕗味噌を口に合えばと勧められ
蕗味噌のレシピを守る二重底
蕗味噌や亦たミサイルの報せ飛ぶ
蕗味噌や下れば川に至る店
蕗味噌のレシピの滲みつき懐かしさ
蕗味噌の味噌は三河の手前味噌
蕗味噌が食べたいと孫よこす文
白米の湯気香り立つ蕗味噌や
蕗味噌の香のしんしんと夫婦箸
蕗味噌や日向の跡を濡らす雨
蕗味噌をご飯の供に三杯目
蕗味噌や幼き甥の苦笑い
蕗味噌や錆びた包丁焦げた鍋
もう一品欲しいときに蕗味噌あり
雲水の膳に少しの蕗味噌を
蕗味噌や昔の田舎は平和なり
蕗味噌の苦味喜ぶ舌の先
蕗味噌や冷飯わずか祖母の碗
蕗味噌や独りよがりの迷い道
蕗味噌や苦い快感口の中
蕗味噌とシェリー酒とやら試さうか
蕗味噌や十日遅れの祝い膳
蕗味噌の香るしづかな雲居かな
蕗味噌や食レポしながら食べる姪
蕗味噌とおもちやのやうな炊飯器
蕗味噌やぽかぽか陽気になるまえに
蕗味噌や石室幾度ひらかるる
蕗味噌や独り呑む夜の長きこと
突き出しの蕗味噌にまた舌鼓
蕗味噌のにがきの中にあえかなる
蕗味噌の苦味古里捨てた痕
おにぎりに包む蕗味噌人生訓
天婦羅も良いが是此の蕗味噌じゃ
蕗味噌や重げに飯の湯気のなか
蕗味噌を独り占めする独居かな
蕗味噌の小鉢ゆたかに歪みをり
常連へさりげなく盛る蕗味噌よ
あの言葉では無かつたか蕗の味噌
蕗味噌や水の流れのほとばしる
蕗味噌や飯泥棒の一掬い
蕗味噌や残さず浚へ最後まで
弟の子の蕗味噌の口憎し
蕗味噌や単身のまま父逝けり
蕗味噌や飯は硬めに炊くべかり
蕗味噌やめしの間は黙るもの
蕗味噌や山宿の燗やや熱し
蕗味噌やワカコのぷしゅーひとり酒
蕗味噌や灰汁なき男と半世紀
晩酌の蕗味噌をまた朝餉にも
レシピ見てつくる蕗味噌甘すぎて
多くなく少なくもなく蕗味噌を
蕗味噌を苦い苦いと笑う母
地のものをそろえ蕗味噌まろやかに
蕗味噌や主人も客も物言はず
蕗味噌の花のあたりの舌ざわり
蕗味噌に山河のひかり煮詰めけり
蕗味噌や箸先十五ミリの人
蕗味噌の苦さと母の優しさと
蕗味噌や三女の別れ話また
蕗味噌を山姥みそと人の言ふ
蕗味噌を求めてデパ地下見尽して
蕗味噌や轍は風の帰る道
蕗味噌や秘めたる色を味わいぬ
蕗味噌の味は苦手やオノマトペ
蕗味噌や十八才は大人なり
蕗味噌や自慢話の父の酒
蕗味噌の残る箸先舐めてをり
蕗味噌にやうやく直す箸づかひ
蕗味噌をひらひら炙るしじまかな
蕗味噌や語らぬ事の増えし妻
大人ぶり蕗味噌食べた兄の顔
蕗味噌の舌吹き抜ける野山あり
蕗味噌や籠編む人のとうに無く
蕗味噌を舐めて大人の列に入る
蕗味噌や都会育ちの婿来たる
蕗味噌の香の残りたる江戸木箸
みつちりとジャムの空瓶に蕗味噌
蕗味噌やうつかり踏んでからの味
蕗味噌やなおしきれない恋の文
蕗味噌やあの日の味と目を合わす
蕗味噌や遠き汽笛を聞くやうに
蕗味噌やそこそこ生きて来たのかも
蕗味噌を見下ろしてゐる大欅
蕗味噌や反りあわぬ母もうおらず
蕗味噌を白粥にのせ病み上がる
蕗味噌や細き箸もて舐むるごと
蕗味噌を舐めて故郷ほろ苦し
蕗味噌の黄金比問ふ掲示板
箸先に蕗味噌染ませ大吟醸
蕗味噌や一家言持ち拵へり
叔母からの蕗味噌添えし昼餉かな
蕗味噌や子供の頃の荷物持ち
噛みしめてもとの蕗味噌蘇る
蕗味噌や蕎麦屋出づれば浅間山
蕗味噌を独り造りて昼の酒
箸の先蕗味噌こぼれ旅の夕餉
薹の立つものこそ良けれ蕗味噌は
蕗味噌をつつむ布巾のこぎん刺し
蕗味噌や無口な兄は父に似て
蕗味噌や丸くはなれず友と呑む
蕗味噌や海に飛び込むやうに摺る
蕗味噌や引き摺る癖は親譲り
蕗味噌をぬれば軽やか握り飯
蕗味噌や叶はぬ夢の香しく
新天地初めて食べる蕗味噌や
蕗味噌や立往生の暮じまい
蕗味噌や雨を切り取る窓ひとつ
蕗味噌を足して整う朝の膳
蕗味噌や汽笛は星の相似形
瓶詰めの蕗味噌旨しふる里便
蕗味噌を炒る山小屋の暮れなずむ
蕗味噌と手塩にかける米の飯
白米のごはんのかおり蕗味噌や
蕗味噌にジョーク一言似合はずや
コシヒカリ五合ふき味噌間に合はぬ
蕗味噌や寝過ごした朝ゆっくりと
蕗味噌や借家の頃を懐かしむ

【宝船】
どつちみち夜は来るもの宝船
これ敷いて夢を見ようか宝船
宝船疫病退散文字のあり
宝船今朝はどうして眠いのか
宝船体重制限ないらしき
宝鮒敷きて今宵の始まりぬ

【桜餅】
餅盛れば香り盛りゆく桜餅
桜餅香りの渇する郷遠き
母作り桜餅食む昭和の日
桜餅頬張る稚児の頬の色
馳走てふギヤマン皿の桜餅

【初髪】
初髪やクレオパトラも楊貴妃も
初髪や鬢に混じりし白きもの
髪染めて笑いて梳くや初髪を
初髪や一年ぶりの柘植の櫛

【(不明)】
橋渡り麦の秋までもう少し
牡丹や大寺の前に煙草屋が
牡丹鉢肥料を見れば少なめで
麦の秋伊勢神宮の帰りかな
誓子館求めて歩く牡丹咲く
麦の秋識見が誰に有るかで揉め
新しきペンや牡丹輝きぬ
百貨店本屋縮小麦の秋
階段の横に牡丹と塀が有り
自転車と歩行麦の秋の道