きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「室の花(むろのはな)」__金曜俳句への投句一覧
(11月26日号掲載=10月31日締切)

温室の中で栽培して、春に咲く花を咲かせたものが室の花です。シクラメンが代表的ですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年11月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【室の花】
歌わんとして噤みけり室の花
正月の座敷めでたき室の花
室の花吾が生い立ちもぬくぬくと
起業せし机一つや室の花
室の花反抗期なきお人好し
現し世の余命宣告室の花
手をかける最後のひとつ室の花
室の花母は経管栄養に
あるがまま生きてゆきたし室の花
室の花韓流ドラマ観る余生
客人の眼鏡も曇る室の花
騙されたふりして騙す室の花
来年はチョコの代わりに室の花
外からも目立つ出窓や室の花
水やりは抱く子の手から室の花
日あたりに母の好みの室の花
室の花メモに言いたいことを書き
室咲の薔薇繚乱の内覧会
ファックスの音突然に室の花
室咲や指で子の名の硝子窓
室の花探し買い持つ帰り道
室の花満つボイラーの微振動
西北に木星匂う室の花
室の花愛でて孤独な令夫人
酒好きの友に送らん室の花
室の花矛盾抱えて季語である
いちいち話しかけらるる室の花
室咲や「昼のいこい」の短歌聞く
客間へと移りて惑う室の花
硝子戸の影に濡らされ室の花
短調の隣より漏る室の花
懐かしき唄流れくる室の花
うすいろの色とりどりが室の花
室の花味方にも敵にもならず
室の花抱きて急ぐ家路かな
記念日に愛の一鉢室の花
室の花散らし雑書を散らす部屋
手洗ひの位置を尋ねて室の花
多弁なる言葉は無用室の花
室咲きや希望の光差す角度
ネオン街騙し騙され室の花
玄関に赤札付きの室の花
食卓にまさかのケーキ室咲も
彩りの淡く優しい室の花
室の花蕊切る夜の軽い咳
室の花どこかで誰かが待っている
室の花夜勤に狂う腹時計
家主消え残るは室の花一つ
造花かと疑うてゐる室の花
室の花安息叶ふ定住地
遠い旅アフリカローズも室の花
室咲やメトロノームの重き針
室の花一度破談となりたるが
室の花長き旅路にひと休み
室の花集め店先明るくす
幻想も生きる力や室の花
室の花半永久を夢に見て
季の違ふ師の染筆や室の花
室の花リルケ待つ身の外は雨
室の花長く咲いててくださいね
まだ春ははるかに遠く室の花
室咲の弔花の甘き匂いかな
身辺のリモコンふたつ室の花
室の花大幹部たちが七人も
山小屋に皇女の写真室の花
室咲きの鉢の増えゆくサンルーム
華やかな色なき季節室の花
室咲や主任教授の紅茶好き
室咲きの長き旅路に水をやる
採点をひたすら終へて室の花
をととひの自画像古び室の花
窓を打つ雨を聴きつつ室の花
黄や朱の室の花咲きうつくしく
あかつきに室の花見て保養先
出番待つビニールハウスに室の花
独り言ばかりの日々や室の花
嘘をつく弱さを見せて室の花
愚直なる心のままに室の花
早熟の室の花なり首たらす
室の花許さるる嘘と云ふ嘘
雨音は字幕のように室の花
室咲のいろを違へて反抗期
室の花恋といふ字にある心
差別よりともに生きたし室の花
夕映えの窓に背きて室の花
室咲きの薔薇微かに香る
さみどりの深まらぬ葉の室の花
室咲きの自由なりしか今の世は
物言ひは玉を噛むごと室の花
室の花灰の隙間に光あれ
望郷は絮吹く想ひ室の花
さりげなく競ひ合ひたる室の花
奥行の凛と生まるる室の花
洗濯を干してうとうと室の花
明け方の風の煮詰まり室の花
地球にはやはらかき熱室の花
早起きの妻の鼻歌室の花
払暁の玻璃戸に淡き室の花
囚はれのまま室の花だらり垂れ
もやしっ子室咲きばかりの世になりぬ
真っ直ぐなロマンチストや室の花
淋しさに温もり伝わる室の花
夜の花舗に選る繚乱の室の花
室咲の花や孤高のたたずまひ
室の花虫つかぬまま青臭い
ひそやかにシェーカーとジャズ室の花
はなびらに残火のほてる室の花
北国の二重玻璃戸や室の花
室の花並べ湯の町暮らしかな
疑いの心知らずや室の花
室の花祖母の管理が行き届き
頼りなき日日に潤う室の花
新築の匂ひのまろく室の花
室の花反戦フォークのCD
人のおごりや百花繚乱室の花
肩の荷を解くかに散りぬ室の花
室咲のごとき猫なり野を知らず
白闇に匂ふ一輪室の花
室の花季節はうつろう箱の中
室咲きや外を羨む皇女の目
パチンコ屋台入れ替えて室の花
室咲きの鉢に黒土あふれけり
庭先に室もどきありシクラメン
室花に細きひかりの届きけり
室の花大空知らぬ愛らしさ
新品の眼鏡くもるる室の花
点心の如くゆやりと室の花
騙される側でありたし室の花
定宿の主人の飾る室の花
コミュ症の人とむきあう室の花
藁の室奈良は真紅の寒牡丹
水やれば水の白さに室の花
室の花不思議さうなる犬連れて
九十六歳母の窓辺に室の花
雀荘は禁煙となり室の花
原色の絵本眺むる室の花
古文書の江戸人も愛で室の花
室の花でも逞しく生きていく
室の花色とりどりに年の暮
予定日を訊き合うてをり室の花
夕されば影の中なる室の花
室の花孤独を語るベートーベン
室咲を挟んで記念写真かな
昨日より長き晩鐘室の花
碁会所にわれら一組室の花
室の花たをやかに咲き淡き白
室咲や今生きてゐる者のため
風向きを知らずに開く室の花
五十路にて貰ふ賞状室の花
室の花今宵夜景を独り占め
薄幸のうす紅色に室の花
リモートのオフィス静まり室の花
室の花虚空透徹蝶官界
霧の奥の窓辺に赤き室の花
ふっくらと匂い立つなり室の花
塵の舞う光線の先室の花
文鳥には話せないこと室の花
尊厳を失うなかれ室の花
告別の辞を聴くやうに室の花
室の花背広の人のまた来たる
室の花ひとりカフェで過ごす朝
退官の講義の卓に室の花
室咲きや野望結実する月日
煌々とコンビニ光り室の花
大温室のしばしの主役室の花
室の花もう取り返せない昨日かな
一茎は壁に凭れて室の花
窓際のハエ元気よく室の花
潮風の生るる如し室の花
前撮りのライト明るし室の花
だるまさん転びし先に室の花
アンティークの木目美し室の花
やはらかい光の中の室の花
室咲や佇てば背骨を夜の流る
ゆくりなく走る恋路や室の花
室の花温もり届かぬアクリル板
楽屋には入り切らざる室の花
遺されしカトレアの鉢もてあます
特養の本日開店室の花
室花のひとつに涙遣りしとも
カーテンを開けてまづ見る室の花
室の花午後の市況を聞きながら
校長は今年定年室の花
置く場所のなき室咲を貰ひ来し
洋館の暗き天井室の花
室の花夜の笑顔に迎へられ
水やりもシフトとなりぬ室の花
室の花貰ひ今日より介護受く
慈しむやうにそだてて室の花
義母からの室咲目立つ新居かな
室の花息にて曇る二重窓
本心と裏腹淋し室の花
君のもとへ抱きて急ぐ室の花
室の花姉妹ならんで弾くピアノ
室咲の花の散りゆく音を聴く
点滴のベッドに横たへ室の花
室咲や平方根の式細し
室の花南の人に訊く名前
夕さりの屠畜工場や室の花
室の花選ぶときには他者の意思
室の花分かり合へない仲のまま
室の花飾る出窓や人を待つ