きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「サフラン」__金曜俳句への投句一覧
(10月25日号掲載=9月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

淡い紫色のサフランの花は10~11月にかけて咲きます。印象的な花ですよね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年10月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【サフラン】
泪夫藍を噛む隠し包丁の魚
サフランの力強さよ血の色よ
サフランや海を見下ろす亡父の家
サフランの秘めたる毒を我も持つ
サフランのほどほどがよし花の数
せせらぎにサフランの花ゆれ揺れて
サフランの香り漂うトルコ料理
サフランをさがしに月へロバつれて
サフランや美馬が近くに寄り来る
サフランや微熱の潤む君の頬
花サフラン終の住処のケアハウス
サフランや一人で海を漂流す
サフランや瞳の色を気に病む子
サフランや初老の医師の鬢白し
世の闇にうすむらさきの花サフラン
バラは愛サフラン行き過ぎ目を覚まし
サフランの客になりたしポスト出す
花サフラン赤カクテルを好む君
サフランや美しかりし叔母は逝き
サフランの花にむかってたじろがない
明日君に返す詩集や花サフラン
サフランや遠くの窓の開かるる
サフランや雌蕊三本赤い糸
サフランの花咲く土の粗さかな
後生はかく在りたしサフランの花
恋をしてサフラン枯れる予感する
サフランや日常茶飯と死を想ふ
サフランや今此処に在るパレスチナ
夕焼やサフラン色の空深く
サフランの様な恋にも愚策あり
サフランや指名手配の顔写真
サフランの夜は間接照明に
信濃路の日暮れの畦に花サフラン
サフランやプライドパレード賑やかに
故郷なる母やサフラン﨟たけて
過呼吸の真白き仮面散るサフラン
南欧にサフランの径辿りたし
サフランや校舎にはゐる幽霊が
吾が胸の明眸の眼や番紅花
サフランに径あり空へゆく径が
風萎えてサフランの花磁気帯ぬ
サフランの笑顔を飾る紅茶かな
サフランの花しべの色ブイヤベース
サフランの花はばあばの髪の色
サフランや雨かぐはしき夕間暮れ
洎夫藍にしつかり届くものあまた
サフランやクレタの女神髪に挿す
サフランやベリーダンスに揺るる夜
サフランやスエズに運河拓く日々
夢包む祈りの形サフラン花
時化の日にイヌサフランを摘みにゆく
サフランを見ぬままチャイムまた押せり
サフランの想い出哀し亡父の愛
サフランや西部劇めく丘に咲く
サフランや風邪のオードリ・ヘッブバーン
サフランや芙美子の卓の庭を向き
洎夫藍や涙を秘めてフラメンコ
サフランを庭のはじめや職退きし
サフランの開きぬショパン聞きたる夜
サフランや香辛料の時代かな
サフランを育てし畝の跡ばかり
サフランを愛でて社名に名付けたり
サフランや日本にもギリシャにも神
サフランを見つけて止まる野良仕事
サフランの淡き紫幼恋
サフランや旅の果てなる空も蒼
泪夫藍や湖面の月を染め上げし
サフランの香ほり染み込む秋時雨
サフランや吾を叱りし妣の櫛
サフランや電子頭脳のごと雌蕊
サフランよなんでもないよサフランよ
唄ふ夢風に預けてサフラン花
サフランの花相席のカレー店
サフランやナースコールの鳴らぬ夜
サフランやヴァン猫のゐる絨毯屋
サフランのしべを挟みし文庫本
名だけ知る花は知らずのサフランや
サフランが手元に残り君は消え
サフラン咲いてサーカス小屋の杭揃ふ
サフランやレースの似合う女学生
壊れる母に少し陽気なサフランを
サフランや返しそびれた砂時計
枕元よりサフランの風が来る
サフランの色を宿した置手紙
終焉の部屋に残されしサフラン
サフランに母の秘めごと有りにけり
嘘をつくサフラン色の唇で
サフランやショコラ好きなるポアロの脳
サフランの蘂や飛行機雲の先
サフランやカフェの飾りし地中海
サフランの花咲き誇る温泉町
サフランの内に秘めたる妻の愛
三本に分ける血液番紅花
サフランやササン朝波斯の風
サフランと呼びかける歌ありにけり
サフランを摘む母の背ただ閑か
サフランの匂ひの硬く広がれり
シングルマザーじっとサフランの花
サフランやフランス人形のぞく窓
サフラン咲く恋より密な思慕ありぬ
洎夫藍やアラビア文字の砂めいて
サフランや女系家族の黒き猫
群生のサフラン風に囁けり
サフランにだけ聞こえたるこゑがある
サフランの花の並びし窓辺かな
荒れ庭のサフラン女神降りしごと
さふらんや托鉢僧の鉄臭し
サフランや風の詩聞くラブレター
サフランの一輪挿しの読書かな
サフランも女性の愛も滅びません
サフランやピエロの踊るオルゴール
花サフランをんなあるじは不眠かな
祖母の背なのまろみサフラン三つ寄れり
泪夫藍の生絹まとふ天女かな
サフランの色の新し小糠雨
色付けのサフランつまみ指匂う
サフランや咲けども咲けどもただ静か
嘗てごみ山サフランの花風に
サフランや欠伸して待つ心電図
街頭にサフラン売りやトルコ旅
サフランの蕊に座れるミダス王
サフランや破るるやうに日へひらく
サフランや呼びかけ来るや異邦人
ボサノバの流るる茶店よサフランよ
サフランやカッパドキアの迷路かな
サフランや希臘の舟で密輸さる
サフランに顔を寄せるや香りたち
サフランと教へし人の指使ひ
遣り遂げた休みの労作サフラン日誌
サフランや魔法のランプめく器
サフランや行方不明の送り状
サフランや橋に埋もるる人柱
濃く長き風車の影や番香花
サフランが虹を背負いて咲きにけり
サフランや土の塊ごろごろ
サフランを摘む道海を衝く砦
今日のラッキーアイテム花さふらん
大坂なおみの片言(かたこと)サフラン咲く
朝市のサフランのしべ入る小瓶
サフランやオーラミン越す時近し
サフランの鉢木製の教卓に
サフランの花香港の今朝の晴
サフランやハッピーエンドは歌詞の中
サフランの花日だまりの煉瓦塀
泪夫藍やラマンチャの空は群青
サフランが風に揺れればのろく行く
サフランや薄紫に戦ぎたる
サフランの花摘みたくて職を辞す
0.5グラムの重きサフランや
サフランや遠く悲鳴のごときもの
サフランやサナトリウムの一角に
サフランのどこかで逢つたかもしれぬ
背面跳びの空にサフランの花
サフランの想いの深き色と見し
泪夫藍や白髪交じりの漢方医
サフランや欠点が好きといふひと
サフランや羽音に震ふ帰還兵
サフランや気の合う姪と観た洋画
サフラン咲く論より証拠の恋の道
サフランを青銅の器に活ける
サフランの揺れてチャペルも揺れてをり
サガレンのサフランの野に風渡る
サフランの咲くやコーラン響く丘
紀元前五年サフラン売られをり
サフランを妻のためにも摘むがいい
サフランやこれから生まれる恋のこと
サフランの薄紫に香りけり
秋日射しサフラン白き根水栽培
サフランが並んだ西の窓の下
秋涼やサフラン庭に香漂ふ
サフランの咲く四世代住みし家
階段の濡れてサフランやはらげる
サフランの呼びかけてゆく浮雲よ
サフランの黙して咲きし決まり事
サフランや雲は水面にただよひて
サフランや肺に沁みいる雨のかざ
サフランや兄に絶縁告げらるる