きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「黄水仙」__金曜俳句への投句一覧
(2月22日号掲載=1月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

黄水仙とは春の季語です。冬の水仙とは異なったおもむきがありますよね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年2月22日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【黄水仙】
眩暈にもいろいろあつて黄水仙
肩の凝るかたちに群れて黄水仙
雲の影五つよぎりし黄水仙
黄水仙波の音なき海見えて
月の色ひろふ野辺にも黄水仙
陶酔を丸呑みしてや黄水仙
鉄塔へ鴉来て去ぬ黄水仙
黄水仙遅れて笑ふ香りかな
黄水仙母の形見の姫鏡台
聖堂を取り囲む壁黄水仙
名も知らぬ土饅頭あり黄水仙
大地まだ怒りほどかぬ黄水仙
黄水仙あちこちを向く好みかな
黄水仙コントラバスの陰に咲く
黄水仙試験日までを香りけり
黄水仙日記の言葉ながくなる
黄水仙わが照準に揺れており
流人墓地今日も島人黄水仙
子に嫁御切に欲しかり黄水仙
黄水仙今年も土手の中腹に
道のべの匂ひの渚黄水仙
お受験の面接待ちや黄水仙
廃屋を囲み楽しき黄水仙
黒に髪染め戻したり黄水仙
向こう岸より歌声す黄水仙
この色を身に纏いたし黄水仙
嘘つきの小人隠るる黄水仙
黄水仙くくり仲直りのしるし
美術部の銀の馬穴の黄水仙
黄水仙のうなづき合ひて咲きにけり
おしゃべりの止まぬ娘ら黄水仙
黄水仙湖面に光きらめきぬ
水鏡忌むナルシスや黄水仙
子の髪を少し刈り過ぎ黄水仙
黄水仙まぼろしの村ありありと
骨上げの箸ほどの縁黄水仙
コルセット巻いてすくつと黄水仙
黄水仙事故死の鳩を葬りぬ
黄水仙曾孫の嘆き聞いてをり
殉教徒眠る丘なり黄水仙
黄水仙おのぼりさんになる明日
黙祷の手に数本の黄水仙
黄水仙祖母の忌日の近づきぬ
黄水仙わずかな風に答へをり
黄水仙後戻り無き季節来ぬ
暗渠へと注ぐせせらぎ黄水仙
潮風に瞠目せよと黄水仙
一年に一度の便り黄水仙
群れ咲きて入日に染まる黄水仙
あつちにはいいことあるよ黄水仙
友と髪重なりてをり黄水仙
土手はやがて天へ続くや黄水仙
交番に一輪光る黄水仙
合格を黄水仙にも報告し
色硝子ごと煌めくや黄水仙
さあはやくこつちにおいで黄水仙
保健室のベッドひんやり黄水仙
黄水仙の如並び居り入園児
階の石の隈にも黄水仙
昨日より色少し濃き黄水仙
黒土も笑むかに緩む黄水仙
黄水仙野辺山までは遠からず
黄水仙農家の庭に誰も居ず
黄水仙己が意見を高らかに
ピアニカのラの音でない黄水仙
体質の変はらぬ田舎黄水仙
昔から身勝手な人黄水仙
仏壇の華やかとなり黄水仙
黄水仙千倉の海へ半里ほど
黄水仙陽あたる路の続きけり
復学の煉瓦の校舎黄水仙
黄水仙あんたもおれもそのうちに
円筒の瑠璃を縁どる黄水仙
尾も耳も畳まれる猫黄水仙
見栄を切る歌舞伎役者や黄水仙
高土塁すそより季告ぐ黄水仙
ある日ふとキャスターの横黄水仙
大声に話す夫婦や黄水仙
少年の旅の始まり黄水仙
日当らぬところに一つ黄水仙
病室を少し明るく黄水仙
黄水仙たしかどこかで見たような
紺碧の空一叢の黄水仙
黄水仙遺骨はいまだ海にあり
黄水仙瞽女唄流る鄙の宿
黄水仙こんな種類のあつたとは
今日のよきこと希ふ妻黄水仙
黄水仙小さな夢をあきらめず
光琳に描かせてみたき黄水仙
卒園児黄水仙帽放り出し
黄水仙君には見えぬ君の背な
そんなにも見つめないでよ黄水仙
黄水仙自己愛も度を過ぎたれば
縄文の復元住居黄水仙
独り住まひ一輪挿しの黄水仙
黄水仙下校の子らの声高し
明るさや一輪挿しの黄水仙
薬局の明るき世界黄水仙
剪りに出て切らずに戻る黄水仙
黄水仙山田に注ぐ滝のそば
ペンギンの列長々し黄水仙
銘仙をゆったりまとひ黄水仙
黄水仙三本立ての映画館
ローファーの飛び越えてくる黄水仙
花も葉も球根も毒黄水仙
黄水仙朝日を浴びて歩む吾子
翳りても花気衰えぬ黄水仙
せせらぎに頷きゆれる黄水仙
空つぽの飼育小屋なり黄水仙
黄水仙ただひとつある障子の間
借景の端島も近し黄水仙
熱の子も指を差し出す黄水仙
黄水仙カメラはおよそ闇の部屋
二階まで春の香りや黄水仙
店先の壺にバサッと黄水仙
永遠に仮設暮らしか黄水仙
風吹くと天上のこゑ黄水仙
大仏の足の裏見る黄水仙
一ト筋の寓話のごとし黄水仙
耳栓をして寝る夜の黄水仙
黄水仙愛のなぐさめ香り嗅ぐ
黄水仙校歌にありし山あそこ
マドンナを探す旅路や黄水仙
黄水仙咲いて明るき家となり
背伸びして丸く戻るや黄水仙
黄水仙匂う踏切急ぎけり
退職の灯台守や黄水仙
役目終ゆ石州瓦黄水仙
流人墓地一段低し黄水仙
年齢は仕草に出でし黄水仙
活くるたび他所を向きたる黄水仙
体力の徐々に戻るや黄水仙
黄水仙ターシャテューダー夢の庭
黄水仙白物家電に囲まれて
愛憎も怒りもしづか黄水仙
ガレージのコンクリの隅黄水仙
黄水仙団地まぶしい窓ばかり
下校時の子らの喚声黄水仙
キラキラと日溜まり添ひて黄水仙
黄水仙猫の後ろを猫歩く
主亡き書斎一輪黄水仙
通る人あいさつ交わす黄水仙
黄水仙己が美誇ることもなく
俎板を立てたる水屋黄水仙
取りたての運転免許黄水仙
車椅子通る方向く黄水仙
黄水仙しづかに歩く牧師かな
寺の端に朝日を連れて黄水仙
牛小屋のうしろは拓地黄水仙
黄水仙盛りの今を微笑みて
黄水仙庭に砂場のありし頃
来客に揺れて知らせる黄水仙
閖上の町甦る黄水仙
添ふやうに合はす歩幅や黄水仙
山墓の苔むすばかり黄水仙
カーテンのレールは二本黄水仙
休日の無き食堂の黄水仙
亡き妻の面影に立つ黄水仙
黄水仙飽くまで白き割烹着