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兼題「祭一切」__金曜俳句への投句一覧
(5月25日号掲載=4月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

今回の兼題は「祭一切」でした。俳句で「祭」と言えば、夏に行なわれる各神社の祭礼の総称です。祭一切とは祭に関係するすべての副題を使ってよいという意味です。具体的には「祭獅子」「祭太鼓」「祭髪」「夜宮」「山車」「神輿」「渡御」「祭舟」など多岐に渡ります。さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年5月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【祭一切】
伏せられし一冊の本夏祭
今日だけは喧嘩神輿の荒き町
紅つけて少女艶めく宵祭
宵果て祭の音を夢に聞く
祭鮨旅の客にも振る舞へる
遠き日のハヤシ太鼓や夏祭り
独り居のひとりのための祭ずし
走り根に座り祭の足袋代へる
人と地を揺り動かして祭かな
宵宮や廃坑の街灯しけり
樽神輿追ふ懐に歩数計
揉みながら聲のはだける神輿かな
我が思い調子外れの祭笛
祭役祝い気分と憂鬱と
山車右へ左へ母の背の記憶
神輿渡御お菓子を配る集団も
草色の刺繍姉妹の祭笛
ジェンダーはどういうことか祭笛
夏祭また皺の増え露天商
夏祭夜空彩る五尺玉
石段の下から拝む村祭り
偏頭痛祭りの午後はやや軽し
若い衆に揉まれ荒ぶる神輿かな
みちのくの一湾ごとの祭かな
商談のとんと決まりぬ宵祭
祭りの子パパとそろいの豆絞り
遮断機と祭囃子が競ひあふ
宮入りでほっと微笑む三社さま
夏祭用意に半日使ひけり
お神楽は五年に一度の村祭り
駆け抜ける赤黒二頭競馬
祭太鼓全身投げ打つ男かな
影薄き御霊神社の神輿かな
祭笛音近くなり遠くなり
男らの脚に耐へたる祭足袋
祭笛家中の戸を開け放つ
山車に乗るここを先途の鯔背かな
行く先を清めゆくかの祭笛
子ら巣立ち祭り寂しき笛の音
祭馬も巻かれまつりの絵巻物
冷酒を呷りて神輿担ぎ上げ
ひとりごち祭太鼓にゆきあたる
葬の家しづしづ過ぎる祭笛
山車の行く坂を一人でついて行く
元議員の名あり祭の提燈に
嬰児に泣かれてしまふ祭馬
渡御待ちて期末試験に遅れけり
村祭り口紅強き媼かな
宵祭小指と小指繋ぎけり
夏祭何はともあれ一升瓶
夏祭惣菜よそふ皿もらふ
踊り場に神輿のあげる鬨の声
祭笛暦に丸をつけてをり
宵宮の音聞こえたる通夜の席
祭には帰ってこいと母じゃより
坂のうへ祭みおろす雲が浮く
夏祭俺がおれがと担ぎけり
上司部下祭太鼓に団結す
笙(しょう)の音(ね)と笛の音(ね)境内静まれり
涼やかや牛車の軒の葵の葉
口笛で祭囃子を古書店主
子ら燥ぎ焼きそばの列夏まつり
四十九日やつと終はりて祭髪
君をりし遠き宵宮はるかな日
破産せる村一丸の祭かな
何時もより念入りに染める祭髪
鄙ぶりの調子外れや祭笛
村祭べつこう飴のいびつなり
祭あと笑ふときにも声嗄れて
祭舟汐の流れをいつはらず
祭足ふかく抉れし土踏まず
宵宮のあの方角はなつかしき
薬品に信頼寄せて夏祭り
右肩を抉る千貫神輿かな
草も木もいつかひとつに祭太鼓
祭の夜手込めにさるる村娘
祭笛憂ひ纏えば闇に溶け
安売りのシャツに街の名夏祭
村ぢゆうに振動与ふ祭かな
今年また神輿担ぎに孫が来る
若い衆の汗におい立つ神輿かな
祭笠ぬいで粗末な椅子におく
遠く聴く祭囃子の途切がち
幼子や山車に引かれし足もつれ
けんかして仲直りした祭の夜
花神輿追ひかけてくる鳩の数
もたつきの後は一気に山車廻る
会話めく法螺貝の音や野馬祭
さまざまな事思い出す夜宮かな
櫂練りの子のよく反れり祭舟
子の記す政治不信や星祭
ふくらはぎ剥き出しのまま神輿かな
祭笛消えて重たき夜の闇
少子化の団地祭りのしずしずと
鶏を捕へる役や祭の子
留守番に迫りて来たる祭笛
酔漢も祭提灯には勝てぬ
碧眼も屈みて担ふふとん祭
祭はね頭しづかに手を合はす
今は昔乳母日傘の祭髪
新人の先生の打つ祭太鼓
場所取りのブルーシートや団地祭り
音響の祭り音頭のエンドレス
夜祭や遠い記憶の蛇女
高音吹くための息吸ひ祭笛
山車からくり六法踏み手見栄を切り
夕星(ゆふつづ)や祭太鼓の胴に疵
徹夜明け祭りのなかを帰りけり
更けゆくに連れ澄みわたる祭笛
宵宮や白く浮かぶはふくらはぎ
林道に祭提灯整列す
神宮祭ルーツは内地開拓碑
大漁の願ひや漁網かくる山車
馴れ初めは切れた鼻緒や宵祭
成分は祭囃子のをとめかな
口真似の太鼓で山車の試し曳き
御旅所や曳山八基曳揃え
縁打てば祭太鼓の空晴れる
飛び交ふや異国のことば三社祭
人近くなりし祭りの準備かな
シャンプーの香りの仄か祭髪
祭衣肩に天然痘の創
ショパン演奏はねて祭りの囃子かな
さっきまで泣いていた子も樽神輿
登り来る祭太鼓や宵の雨
二階よりお神酒を注ぐ喧嘩祭
山間の祭肅か笛の音
名も知らぬ神もて進め祭舟
笛の音を乗せて祭の血は巡る
明るむや祭囃子の杜辺り
引つ越して五年神輿の役もらふ
まつろわぬ面構えなり山車を引く
大太鼓打ち鳴らしつつ神輿渡御
信号を待つ間糞する祭馬
宵宮の水槽に寄るつむじどち
笹と幣まつり気分の二号線
祭笛湖周って近づけり
潮の香を吹き込み揺るる祭笛
同窓会祭の前と決めてをり
引揚げの母遠ざけし夏まつり
若き日よ後の祭りの二日酔い
祭笛録音とせし老ひの町
村道の草刈り終えて待つ祭り
薄闇に祭太鼓の音かすか
祭衣風が主役となる事も
馬のあと獅子が続いて神輿渡御
弟は兄のお下がり祭笛
会社員みな窓際に祭の日
模擬試験名前だけ書き祭笛
恋人の祭衣や夜半の風
磯宮に祭囃子の休みけり
にぎはひの神輿の過ぎて虚無の風
刺青の祭衣をはみ出しぬ
ひとり居て祭の夜は寂しけり
春祭り呪いと怒り内閣へ
宵祭夭折の友連れ歩く
夏祭命ひしめく聲となり
祭太鼓の律動にある国訛り
淡々と祭りを守る宮司かな
忌竹の高さの風や祭前
いなせだね腰に差したる祭笛
御旅所に幼馴染の老の顔
男らの蟹股あるき祭後
路地奥の祭支度の男衆
ジャズマンが吹くらし祭笛弾む
夏祭空の吸い込む担ぎ声
結いあげし乙女のうなじ祭髪
夫婦とも江戸の生まれや祭好き
祭果て男女の仲となりにけり
アセチレン燈煌々と宵祭
宵宮やそぞろ歩きて西の京
陰祭団体行動は苦手
成績のパッとせぬ子の祭の目
すつぽんの口に溢るる喧嘩祭
人影の流れの止まず夏祭
Uターン理由は聞かぬ夏祭
月に影のよぎる早さや祭笛
石段のすり減りてをり神祭
祭果て風の淋しくなりにけり
春祭り石の地蔵に甘茶かけ
山鳥の翼まぶしき祭かな
祭笛のほうに傾く寝落ちの子
御旅所に賑ひ遠し忘れ足袋
今は無し待ちに待ってた春祭り
担ぐのは神輿か己が人生か
こんちきちん鉾の巡行京大路
どの家も門扉の開き夏祭
若き日の祭御輿で乱れた夜
大神輿二百余段を昇り切る
こと果てて一人でほどく祭髪
母さんの胎で祭の笛を聞く
祭来てうからやからの揃ひけり
担ぎ手が禿げと白髪の神輿かな
着流しの高倉健や祭笛
神輿の子かほに碁石ほどの可憐
島の子ら祭囃子を気流とす
炎天を貫く鉾や京の夏
大振りの祭太鼓や宮司の子
祭鉦杉に張られし注連の見ゆ
舟揺らし潮に禊の神輿かな
山車の行く先の小石を拾ふ猛者
妻どもの張り付く子供神輿かな
夏祭イチタスイチガニデハナイ
着付け終ふ祭浴衣に市の名前
伝法の口調飛び交ふ宵祭
宵宮の笛に吹かれて微酔か
夏祭異人さんらも協力す
神輿揉む衆に水打つ熱気かな
おんな太鼓櫛目きっちり祭髪
ぶらり来て葵祭の列に逢い
春節祭人垣に龍立ち上がる
宵宮の木遣りの響くアーケード
石段の彼方に祭囃かな
濡れゐたり祭の封鎖解けし道
御旅所にずらり氏子の貼られをり
祭笛顎(あぎと)に指の影そよぐ
灯の消えた御旅所神人も無く
遠くから祭囃子の聞こえけり
鰻屋の二階の句座や祭の夜
Uターン祭の端役貰ひ受く
紅さすや指にぎりしめ祭稚児
肉体を若返らせし祭獅子
近づきぬだんじり祭の笛と鉦
軸軋り長刀鉾の向きを変え
ぴーひゃらどんどん祭囃子の家々へ
祭笛癌病棟に届きけり
誘惑をテレビで防ぐ祭騒
村の子ら祭囃子を追いかけて
限りある命と知りて諏訪祭
国道へ出ていつそうの荒神輿
鎮まらぬ魂も乗るなり綺羅の山車
篝火にくづれ漂う渡御の澪
葵桂さして華やぐ祭髪
神輿舁くノルマ一町四半刻
灯篭祭ヨヘホヨヘホとしめやかに
神輿酒白いふんどし白い足袋
隠したる目や新宿の夏祭
浜辺にて車座になり祭笛
村祭り還暦過ぎても若い衆
足並みのよく揃ひたる荒神輿
手帳には祭とありぬパソコン閉ず
騎馬の列止まり法螺貝またも鳴る
ギャル神輿そろそろ此の名やめようや
祭笛の技法に片仮名の言葉
山手線から神田明神祭り見え
祭囃子の順を待つ顔の影
新住民いまだ観るのみ村祭
突如して裸祭の町乱る
祭太鼓櫓の上の無法松
神輿行く幅のほどよき旧き道
鶏三羽絞めて祭の支度かな
川風に少しほどけし祭髪
遺伝子を緻密に継ぎぬ祭髪
みちのくの野馬追祭り旗幟連ね
肩車の上のわたあめ夏祭
人界に流るる噂祭笛
宵祭明日の準備に犬も連れ
手踊りの猫じや猫じやと町の角
村祭人目を忍び社裏
包丁のリズムも漫ろ祭前
流れくる風の匂ひや前夜祭
宵宮の地べたに残る尻の跡
火祭や火を盗みたる人のなき
手の形ごとのおにぎり夏まつり
町内の頭一喝御荒神輿
御旅所に配る餡パンメロンパン
幼き字一角多い多し星祭
宵宮の果てて雨足おそろしや
立所に女を上げし祭髪
夜神楽や陰深くなる翁
くるぶしに風乗せてゐる祭衣
山車引く児片手は母の手握りしめ
鬢付けのバス中匂ふ祭髪
宵祭うしろにいつも母の声
水かけや男神輿に湯気立ちぬ
幼児のわたあめねだる夏祭
背負われて祭太鼓の遠ざかる
祭終へまたひととせを歩みゆく
陰祭参加者少し減らしけり
宵宮の大けやきにて待ち合はす
夏祭金魚掬いは不得手なり
島あげて幟ひしめく夏祭り
山車を引くいがぐり共の男前
母と子の引っ張る山車のお練りかな
ひと仕事終へてだらりと祭木偶
霜月祭纏はる湯気に清められ
息合わぬ太鼓まつりの日は待たぬ
祭り終え家路つく人千鳥足
祭り笛おみな独りの昼支度
春祭り少女の多き太鼓団
ほつれ髪の浦島太郎山車の上
箸紙の金箔撫でて祭寿司
祭髪解きて母に戻りけり
祭舟雨後の杭には縄粘る
翻筋斗と祭太鼓と相槌と
電線の下すれすれを荒神輿
並べれば祭提灯余分無し
古書店の軒にも祭提灯が
角毎に山車の停まりて手踊りに
デパートの屋上の神なつ祭
アセチレンガスの思い出宵祭り
ラジカセのぴいひゃらと行く樽御輿
片言で教える祭太鼓かな
なめろうをたたく祭囃子にのせ
宵宮やほっこり明るい田舎道
古びたる法被の身幅天神祭
コンサートホールの横の宵祭
祭の夜明日は女衒に連れられて
夏祭ある街と知る帰りかな
ふと見れば路地の彼方を神輿過ぐ
魂を結ぶ鉢巻夏祭
スマホ手に追ひつき難き祭かな
祭あと大道筋の丸ポスト
加茂祭牛はそのあと住吉へ
上加茂社テントに葵祭待つ
落ちてある都大路の懸葵
暮れなずむうす明りよき花まつり
行き交いてよき日と称う星まつり
道祖神祭りに和む過疎地なり
かざぐるままわりまわって祭り終え
山の神出でませ感謝の収穫祭
休耕田旧労ねぎらう感謝際
米余るそれでも多謝す収穫祭