兼題「雪達磨」__金曜俳句への投句一覧
(1月27日号掲載=2017年1月5日締切)
2017年1月10日5:14PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年1月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【雪達磨】
足許を犬に嗅がるる雪達磨
山茶花の紅の簪ゆきだるま
犬小屋の犬窮屈に雪だるま
雪だるま小さきあれほど降りたるも
軒下にまだ陣取りぬ雪達磨
雪だるま後ろ姿の膨らみて
雪達磨囲んで記念写真かな
まつさきにとけたるたましひ雪だるま
楼蘭の駱駝のゆく手雪達磨
作り手に似た顔だちの雪達磨
外燈に影長くせり雪達磨
誰に会ふ雪達磨立ち無人駅
何想ふ夕陽見つめて雪達磨
目鼻付け人になりたき雪達磨
「幸福な王子」の話雪だるま
女子校に睫毛の長き雪達磨
目鼻なきのっぺらぼうも雪達磨
雪だるま太らせパパと呼んでをり
転がつてこんがらかつて雪だるま
雪達磨失言戻ることは無く
祖父つくる布袋腹なる雪達磨
居酒屋の提灯下げて雪達磨
雪達磨スプレーインクの目鼻立ち
パパよりも大きく丸い雪達磨
三日目の魂抜けしごと雪だるま
雪達磨どこにも立てて温泉郷
雪達磨でこぼこあるも子らの技
雪だるま汚れし雪のかたはらの
歓声を一身に受け雪だるま
微笑みて星に夢見る雪達麿
雪達磨とけて炭団の涙かな
片町の人の疎らや雪達磨
まぼろしのごとく輝く雪達磨
古書店の傍にあり雪達磨
雪だるまそつと星空仰ぐらん
泥纏ふ東京都下の雪達磨
雪達磨まだ論文は出来ないな
雪達磨のっぺらぼうを良しとする
往来に裾ひろげをり雪達磨
いくたびもカーテン開くる雪達磨
雲流る時々青き雪だるま
かはたれの郷深深と雪達磨
眠さうな後ろ姿の雪達磨
目を入れて犬に吠えらる雪達磨
平等に解けてゆくなり雪達磨
日の暮れて顔あらぬまま雪達磨
雪達磨耳描きて聴く君の声
友の死に間に合わぬまま雪達磨
赤き目を盆にこぼすや雪うさぎ
雪達磨蹴りやパンチに痩せ細り
雪達磨お地蔵さんの脇立に
雪だるま炭も炭団も昔かな
一言もなく消えゆけり雪だるま
看護師が総動員で雪達磨
ふるさとの天気図既に雪達磨
心臓も真つ白であり雪兎
雪達磨こちら日本平和です
雪達磨最後に土を取り出来る
雪だるま立ちて隣家の恙無き
雪だるま鼻人参にして異人
雪だるま音絶え果てて窓灯り
雪達磨祖母の作りし御けんちん
公園に置いてけぼりや雪達磨
路地裏の地蔵と並ぶ雪達磨
家族だよ大中小の雪達磨
妻和美さんの誕生日まで雪だるま
黒こしょう目に据え小さき雪だるま
ゆきだるま身も蓋もなき一生かな
笑ふこと知らぬ日本の雪達磨
雪達磨怒る喜ぶ腕次第
雪達磨小児病棟裏庭に
もっと降れ孫と作るぞ雪達磨
こどもより夢中になりて雪だるま
それほどに泣きはらしたか雪兎
朝が来た泣きべそ顔の雪達磨
雪達磨溶ければもるる春の音
心根の温かさうな雪達磨
雪達磨雪が嬉しき町の人
たこ焼き屋並ぶ親子の雪だるま
先生と生徒の手形雪達磨
雪だるま放置プレイのまま終わる
ゲレンデに転げてできた雪達磨
静けさに寝息も聞こゆ雪仏
雪達磨イケメン叔父の帽子良く
賑やかな子等の声染む雪達磨
雪達磨一途につくる我が子かな
門松のありしところに雪達磨
担任の先生に似る雪達磨
雪だるま老いずに果ててしまひけり
煌きがこぼれ落ち行く雪達磨
戦前はもっと降ったと雪達磨
雪達磨グラブをつけてマウンドに
雪国の子らは作らず雪だるま
遠山の日を背景に雪達磨
雪達磨とのたたかいに敗るる子
作る子の顔の凹凸雪達磨
雪達磨信心起こらぬとひた嘆き
花街や路地奥にある雪達磨
つめたくてあたたかきもの雪だるま
雪達磨商店街に歌流れ
雪達磨みゆるガラス戸紅葉わく
さんぽして仔犬も人もゆきだるま
一晩を一生とせし雪達磨
夕焼けて少し痩せをり雪達麿
商店街通り抜けての雪達磨
目鼻つき昨日とちがふ雪達磨
雪だるま笑顔のままに溶けはじむ
雪だるま雪も上がりて星ばかり
雪達麿心の平和満たされし
雪達麿心の中は青い鳥
にはとりの通り過ぎたる雪達磨
山頂に人がいたらし雪だるま
雪達磨月の始終を知つてをり
日陰には笑まひ続くる雪達磨
雪だるま真夜に集会はじまりぬ
けふもまだ立つ雪達磨腹垂れり
町内に美大生住む雪だるま
雪達磨パイプ眼鏡をつけてゐし
融けてなほ愛らしきかな雪達磨
目の位置がずれて泣きべそ雪達磨
夕まぐれ孤高の面差雪達磨
雪達磨逃げる形に傾ぎをり
アリランの流るる路地や雪達磨
ミミとヒゲ足してカワイイ雪達磨
雪達磨太り気味なり溶ける前
雪達磨マーク外れし予報かな
ハタキ持ちバケツ被った雪達磨
強面の守衛の眉毛雪達磨
三兄弟それぞれ違ふ雪達磨
二丁目の青きネオンや雪達磨
ゆきだるま日は燦燦と大往生
なぐさみの域を超えたる雪だるま
家々の灯るを見遣る雪だるま
泣くための赤き実入るる雪兎
ゆきふりて思いでばかりの雪だるま
雪達磨作りが伝統柔道部
内臓の疾病ありぬ雪達磨
給食を食べきれぬ子や雪だるま
子はねびて上おほきなる雪達磨
雪達磨月出ぬ宵に佇めり
振り返らぬ君を見送る雪達磨
雪達磨転倒のたび太りけり
園児より教師熱中雪だるま
旅立てり跡の光し雪仏
万歳がじょうずあなたは雪だるま
洋館に座すや鼻高雪だるま
ゆきだるま大きくなれば非難され
雪だるま歩かぬことで生きてをり
目鼻立ち派手な美大の雪達磨
震度5の地震に耐えたる雪達磨
雪達磨純白とはねゆきません
道産子の指図のもとに雪達磨
外泊しそつとなでるは雪達磨
中学前市電の駅に雪だるま
雪だるま雪に埋もれてしまひけり
星の座に大犬子犬雪だるま
愛嬌は離るる眉や雪だるま
雪達磨二つの護り坂の家
ガラス戸の温みに向かひ雪達磨
けふの顔きのふと違ひ雪だるま
すっぴんの女装と写る雪だるま
窶れゆく雪達磨にも矜持あり
目鼻口みな失いて雪達磨
居残りの子の日の暮れて雪だるま
星々と交歓したる雪兎
温みては想ひ置き捨つ雪達磨
野に放ていま作りたる雪うさぎ
規則とて雪達磨にもヘルメット
黒ずみて窪みて末路雪達磨
子の遊び雪のシンボル雪達麿
雪達磨つくる喜び子も親も
積み上げて角あちこちに雪達磨
願掛けは通じなくても雪達磨
雪達磨たつた独りで夜を徹す
右の雪達磨残して雪達磨消えた
鼓動のみ聞こゆる夜の雪達磨
ゆきだるま年々歳々少さきなり
伝えない恋飲みこんで雪だるま
雪達磨日暮れの風の身に染みて
先頭は雪だるまですバスを待つ
傾むきて誰ぞに似たる雪達磨
椅子つかふテニスコートの雪達磨
お日さまがとても好きなの雪達磨
忘られて幾日雪の達磨さん
雪だるまの卵や野に転がりぬ
園児らの作る園長雪達磨
雪達磨異国帰りと言ふ人と
弟の負けず嫌いや雪達磨
黒猫がしばし隣りで雪達磨
ゆきだるま兵士の形に融けてゆく
雪だるま小枝の腕に光る粒
雪だるま頭大きいほど可愛い