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兼題「漱石忌」__金曜俳句への投句一覧
(12月23日号掲載=2016年11月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年12月23日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【漱石忌】
遠目にも八ツ手の花や漱石忌
本屋より宅配便や漱石忌
洋食に垂らす醤油や漱石忌
胃の袋ある憂さ去らず漱石忌
漱石忌饅頭二つ止められず
漱石忌猫は昼寝す知らん顔
日の移り文机移す漱石忌
亭主の嗽(うがい)勇まし漱石忌
ある筈の無き歯の疼く漱石忌
猫の名はココ・ナツ・コナツ漱石忌
草枕道草虞美人漱石忌
振り向いたうなじに風の漱石忌
漱石忌憂ふ写真に一目惚れ
双眼の色を違へて漱石忌
熊本の絵葉書を買ふ漱石忌
胃薬の喉滞る漱石忌
漱石忌マイナンバーを取得せり
句習ひたき先輩なり漱石忌
満州の夕日燃えた日漱石忌
吾独り羊羹厚く漱石忌
英国に留学したし漱石忌
明暗の定かならずや漱石忌
飛び切りの笑顔がみたき漱石忌
折れ易きシャープペンシル漱石忌
漱石忌声あげて読む句集かな
石鹸を泡立てて嗅ぐ漱石忌
駆け抜けし猫は獣か漱石忌
坊っちゃんを憧れ勤め漱石忌
漱石忌猫に小言を言いにけり
黙つては居られぬ猫や漱石忌
きつぱりと俳句を忘れ漱石忌
漱石句好集めて漱石忌
書斎での珈琲旨き漱石忌
漱石忌黙って土産置く夫
漱石忌猫は日向で大あくび
吾輩は猫であるかも漱石忌
日向猫我関せずと漱石忌
師の引きし下線をなぞる漱石忌
雨降ればジン酔いやすし漱石忌
漱石忌犬より猫と言ふ男
人生は唐草模様漱石忌
漱石忌倫敦塔は鼠色
木蓮の落葉音立て漱石忌
漱石忌巨大迷路となる畑
縦のもの横にする川漱石忌
まんじゆう屋の行列長き漱石忌
漱石忌ポイ捨てならぬぞ三四郎
俳号はまだないままに漱石忌
欠けてゆく記憶の端に漱石忌
三毛のみな雌であること漱石忌
本棚に本並べてる漱石忌
櫨赤く散り際見せて漱石忌
漱石忌道後温泉下駄の音
猫飼ひてなほ慕はしき漱石忌
人断ちて人懐かしや漱石忌
厨まで陽の届く日や漱石忌
漱石忌猫は便秘に糖尿病
漱石忌人のうわさは微粒子で
漱石忌日々硬くなる吊るし柿
「坊ちゃん」のさはり諳ず漱石忌
歳時記を開きて暮るる漱石忌
漱石忌リボン結びの箱届き
漱石忌自己と非自己が喧嘩する
飼ひ猫の手術見守る漱石忌
漱石忌抜いても減らぬ鼻毛かな
蜂蜜の喉にとどまる漱石忌
坊ちゃんの性格読みたくて漱石忌
新版の活字の大し漱石忌
諳んじし詩句は未だに漱石忌
甘味屋に男独りよ漱石忌
漱石忌思い悩みし我が友よ
漱石忌猫に名前をつけてやろ
マニュアルの教師の多き漱石忌
漱石忌猫の言葉を訳しをり
漱石忌猫のよく知る猫嫌い
ぜんざいのほど好き甘さ漱石忌
漱石忌女難の相と辻占ひ
坊ちゃんを読む金曜日漱石忌
久々に手紙を書きし漱石忌
物を言いたくてあきらめ漱石忌
おほらかに笑ふ女房漱石忌
九日の木曜となる漱石忌
英辞書にラインマーカー漱石忌
漱石忌やはりノボさん顔を出し
国語より英語が好きよ漱石忌
漱石忌にゃんを文語でねうと書き
有る程の知を投げ入れよ漱石忌
全集の金文字薄れ漱石忌
人恋ふを怖れる君よ漱石忌
頬杖を真似してみてる漱石忌
装幀の違へば買ひて漱石忌
日向にも羽膨らます漱石忌
立ち止まる犬と目の合ふ漱石忌
通学路柚子色付きて漱石忌
漱石忌謡をするは猫かいな
倫敦の高き雪隠漱石忌
漱石忌猫なでながら句を作る
電飾のきらめく街や漱石忌
円卓の密議の紅茶漱石忌
あつさりと夕日の落ちて漱石忌
漱石忌新聞で拭くガラス窓
漱石忌鼻毛を抜いてみたりけり
一巻の書を書き遺す漱石忌
全集の驚く安値漱石忌
奥付の増刷の版漱石忌
漱石の小説写す漱石忌
一切れの羊羹残し漱石忌
パンにジャム二種類塗って漱石忌
障子紙破いてみたり漱石忌
満州の夕日悲しき漱石忌
千円で文庫本買う漱石忌
日だまりの猫は動かず漱石忌
連れ合いの胃が痛むころ漱石忌
妻怒る鏡子夫人や漱石忌
漱石忌聖書の上で眠る猫
それからと言ひかけてふと漱石忌
出題にミス見つかりて漱石忌
その人を先生と呼ぶ漱石忌
走り去る路面電車や漱石忌
のど飴の残りわづかに漱石忌
亡びるぞまた亡びるぞ漱石忌
革装の辞書出してきて漱石忌
股ぐらに嵌まりたる猫漱石忌
漱石忌父の字引を拝借す
漱石忌胃薬切れて眠られず
思春期の剃る髭淡し漱石忌
雲行の怪しくなりぬ漱石忌
年の差はひらくばかりや漱石忌
露天湯に浸かる間の夢漱石忌
漱石忌漸く下巻読み終へし
枕頭に猫のたたずむ漱石忌
野良猫に一瞥されし漱石忌
東京に雪降りさうな漱石忌
散りぎわの紅葉きらきら漱石忌
皺の札泣き顔めくや漱石忌
初めて読みたる小説漱石忌
芋坂やそぼ降る雨の漱石忌
馬穴(ばけつ)に水汲み入れる漱石忌
善人も紙幣の顔に漱石忌
漱石忌寒月さんに思ひ寄せ
イギリスが星より遠き日漱石忌
小天の湯ただ鄙びたり漱石忌
漱石忌松山城の青き松
漱石忌猫舌用のお味噌汁
朗読をヘッドホンより漱石忌
薬箱久しく開けず漱石忌
気遣ひの過ぐるは罪と漱石忌
船便で届く洋書や漱石忌
頬杖で鏡見つめる漱石忌
飼ひ猫にジャム舐められし漱石忌
下宿先慌てて探す漱石忌
弓の音落つ心字池漱石忌
老いた葉を掃き清めての漱石忌
猫に名を勝手につけて漱石忌
スーパーで千円ちょうど漱石忌
少しばかりおどけて作る句漱石
漱石忌写真の父の目の赤し
三四郎それから門よ漱石忌
口髭は我に似合はず漱石忌
大いなる力に抱かる漱石忌
今もまだストレイシープ漱石忌
大動脈破れて復活漱石忌
池をただ一周回り漱石忌
漱石忌思い起こせし初恋を
今朝も会ふ老ひた黒猫漱石忌
修善寺の紅葉深きや漱石忌
住み難いこの世とばかり漱石忌
おのが名を覚えぬ猫や漱石忌
潰瘍で死なぬ時代や漱石忌
頬杖は思案のかたち漱石忌
縁側に午睡の猫や漱石忌
何ゆゑに胃の腑の痛む漱石忌
胃が痛む同病の友漱石忌
パンにジャム二種類塗りて漱石忌
四十より余生と思ふ漱石忌
狷介も胃丈夫ならず漱石忌
風音に雨音混じる漱石忌
漱石忌一文字書くのも難儀なり
漱石忌三四郎池ただ静か
野良猫と挨拶交わす漱石忌
漱石忌靴墨匂ふ上がり口