きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「鯛焼」__金曜俳句への投句一覧(11月27日号掲載=2015年10月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年11月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【鯛焼】
大甘の鯛焼提げて帰宅かな
売れ残るやせつぽつちの鯛焼よ
鯛焼の鱗一枚ほどの餡
子らはなぜ泳げ鯛焼き気に入った
鯛焼や心ひもじき日々ありぬ
鯛焼きやお茶をたっぷり淹れにけり
温かき鯛焼き片手足急ぐ
鯛焼や分をわきまえぬ男あり
背負ふ子と抱く鯛焼の両天秤
鯛焼に体温ほどの温かさ
鯛焼の尾ひれの餡を見入る癖
鯛焼を割れば心も温まる
鯛焼きのこげ目出っ張り先ず食いし
鯛焼の一匹ごとの袋かな
客人の増へて鯛焼き切り身とす
鯛焼の尻を取りたる姉貴かな
告白ができず鯛焼き食べてゐる
鯛焼の相食みをりて湯気親し
バッハ聴き鯛焼喰べる日もありて
鯛焼の餡の少なき老舗かな
鯛焼は諦む両のレジ袋
剣士らの駆けゆく先は鯛焼屋
鯛焼の尾のあなたなる夕日かな
角の店鯛焼だけの小商
大ぶりの鯛焼持ちて子の見舞ふ
鯛焼きは喜怒哀楽に連れ添いし
回想の鯛焼き熱く胸焦がす
蹉跌なき青春はなし鯛焼食ぶ
海峡に買ふ鯛焼の身の硬き
せがまれて屋台の鯛焼きぬくぬくと
鯛焼きや尻尾の餡子でランク付け
鯛焼や腹の一物まだ熱し
鯛焼の餡こクリームチョコレート
鯛焼の名前出てこぬ人の分
鯛焼や最終バスへ道急ぐ
腹中に暗い大陸鯛焼よ
塀沿いに暖簾を掲ぐ鯛焼屋
長い列我もと並ぶ鯛焼き屋
鯛焼に呼吸をさせてから食べる
練習の帰り道鯛焼屋あり
鯛焼や街騒颯と暮れゆけり
差入れの鯛焼事務の手を止める
鯛焼きはがやがや食えばなお旨し
鯛焼もあんに思いの詰まりしか
ビジネスに遠きやここの鯛焼屋
路地乾きふと鯛焼を買ひたくて
鯛焼やとりとめのない話です
鯛焼を尻から食べる流儀かな
たましひのごと鯛焼の湯気消ゆる
鯛焼のカラフル餡子は反対し
鯛焼を食べて忘るる負け試合
鯛焼屋女子高生が前後ろ
鯛焼の窓際にいて安らげる
鯛焼のぬくみ大事に手に包む
鯛焼の餡に眼鏡の曇りけり
鯛焼の不出来を嗤ふ女学生
鯛焼をグッチのバッグより出せり
鯛焼の列にフランスパンを持ち
鯛焼の鰭にはみ出す餡の粒
鯛焼のまどろみの目の丸々と
ケーキより鯛焼うれし土産かな
寧日や客の影なき鯛焼屋
鯛焼をもて谷根千の裏道へ
鯛焼待つ小さく暮らす町はずれ
鯛焼を黄金の魚と名付けしは
鯛焼は餡を二つと決めており
モネの絵を愛でて鯛焼求めけり
鯛焼の数個切身となる茶会
鯛焼のグッチのバッグより出る
鯛焼の人形劇に飛び入りす
腹黒き鯛焼にまづ手を伸ばす
鯛焼をくわえ涙を堪えけり
鯛焼に目がなき風紀委員長
鯛焼の届く高層会議室
鯛焼の温みを腿にバスの席
妻に似た鯛焼ひとつくださいな
鯛焼きは亡き母の味夜勤後
天と地鯛焼き食べて生きやすし
鯛焼のぬくみを頬に押し当てる
ご亭主の小遣い稼ぎに鯛焼き屋
鯛焼の頭隠して尻尾食う
鯛焼屋百円ショップの駐車場
鯛焼の半身半身を合わせたる
受け継ぐもの持たず鯛焼き頬張る
鯛焼のかたちに解けるたなごころ
鯛焼を買ふ妻それを待てる夫
鯛焼に部活帰りの五六人
子等集う笑顔満ちたり鯛焼きかな
吾のための鯛焼三尾とのゐせり
差し入れし鯛焼の尾の男振り
鯛焼や放浪癖に舌を焼く
大漁の鯛焼をもて祝ひけり
鯛焼を唇部位からかぶりつく
笑ひ合ふ人に並びし鯛焼屋
鯛焼の尾まで餡子があれば良し
鯛焼は小豆にかぎる餡熱し
鯛焼の表裏もなく囓じらるる
鯛焼を給与のやうに渡さるる
熱々の鯛焼き食らう赤き頬
鯛焼のわかばを知りし人と会ふ
鯛焼の端カリカリと調えり
まだ匂う鯛焼入れし紙袋
それぞれに鯛焼買ひて帰宅せり
上からも下からも鯛焼やいた
鯛焼とともに呑み込む周期表
一匹の鯛焼分けし出会ひかな
鯛焼を宙に泳がす子供かな
鯛焼買ふ背中の語る男たち
鯛焼の腹割つてする仲直り
十八は大人なのかな鯛焼食ふ
鯛焼やしつとりと黙吸ひ尽くし
鯛焼の気合の鰭の焦げ加減
鯛焼の羽根の軽さをまづ食す
モネの絵を愛でし帰りの鯛焼き屋
鯛焼はどこから食べるか孫の訊く
今どきの鯛焼の餡カスタード
客引きの煙のなくて鯛焼屋
鯛焼は相手なくとも二尾を買う
鯛焼の臓器はみ出る温さかな
鯛焼をブックエンドに立てかける