きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「柿簾(かきすだれ)」__金曜俳句への投句一覧(10月31日号掲載=2014年9月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』10月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【柿簾】
すだれなく鈴なりのまま柿の里
謹呈のしをり入り日に柿簾
柿簾何時の間にやら他県なり
大和路や芋茎大根柿簾
柿簾抜けきし風を遺影まで
たはむれに猫潜りける柿簾
手にひとつ孫待つ祖母の柿すだれ
柿簾残して暮るる山家かな
山間の半日の陽や柿簾
柿簾限界部落といふ暮らし
白粉つけ誰に嫁ぐや柿すだれ
柿簾今年の連は重たげな
盗み食い渋き思いで柿すだれ
母のみの生家二連の柿簾
絵手紙に柿簾載せ孫のこと
柿簾風に吹かれてボブディラン
山里の柿干す風情うすれけり
沖縄の人心見るや柿簾
柿簾家屋の中はがらんどう
柿簾風に揺れるよドレミファソ
柿すだれ一つ失敬してしまう
日中のぬくみの残る柿簾
番犬の人寄せつけず柿簾
教科書の国語のもくじ柿簾
近景をズームしてみる柿簾
三代のたつきを繋ぐ柿簾
家からの主峰隠すや柿簾
猫も居り盗られられんと柿簾
柿簾髪の薄きも気に掛かり
上半分なほ暮れ残る柿簾
番犬に遠目鴉の柿簾
藁縄の代りは紐で柿簾
絵日記に三日続けて柿簾
柿簾透して白き山見ゆる
太陽はあまねく照らす柿すだれ
餓鬼道や盗み食いせし柿すだれ
村人の数を超えたる柿簾
柿簾一粒毎に夕日差す
柿簾越しに夕餉の灯かな
柿簾ありて空き屋も父の郷
雲低く峡にとどまる柿簾
下着泥棒から守る柿簾
柿簾でつかいパンツ干してある
柿簾ドライブ中は筆記中
コラット言う祖母の笑顔や柿すだれ
柿すだれ午後の日差しの旗日かな
常念の初冠雪や柿簾
柿すだれそしらぬ顔で盗みおり
盗まれぬ高さなのかな柿簾
鐘楼の鐘がはぐくむ柿すだれ
柿簾会津の旅は雪催
柿簾の内より流る夜想曲
枝垂れ柿たくみの技の柿簾
日暮れてもほのかに甘し柿すだれ
子守唄やがて止みたる柿簾
村ひとつ地図より消えぬ柿簾
柿簾湖北に風の集まりぬ
枯露柿の襖や金鉱脈の国
吊し柿信玄公を愛でる街
吾の中に蒼の残りて柿簾
柿簾記念写真で旅終へむ
みじか日に日差もとめて柿すだれ
算盤は下火なるとも柿簾
柿簾風のこなれて渡りけり
過ぎ行けば広告なりき柿簾
夕焼けに張りおうたるや柿すだれ
枝垂れ柿代々つなぐ柿簾
盗つ人の届かぬ丈の柿簾
羊雲群れ行く先の柿すだれ
柿を干す手間の残るや過疎言ふ地
天高く日ごと赤らむ柿すだれ
恵林寺の山門みえぬ柿簾
誰もまだ帰らぬ家や柿簾
柿簾風に吹かるる重さかな
川霧が優しく包む柿すだれ
朽ちかけた軒先低し柿簾
晩鐘の滴り落ちぬ柿簾
蔵王嶺の噴火しづむる柿簾
柿すだれ道に迷うた軒の下
柿簾叩けば音の鳴りさうな
達筆な店の看板柿簾
過疎の里住む人ありと柿すだれ
胡座かき皮むく父に柿簾
柿簾家の中より返事なし
星々を間に見せて柿簾
柿簾存在自体が広告に
柿簾隣家に委ね村を出る
柿簾手堅く生きてゐて侘し
坂多き父の集落柿簾
故郷はまだ活きていた柿すだれ
柿すだれ皮剥く老婆の腕確か
縁側の回覧板や柿すだれ
柿すだれすき間の闇に祖母の顔
柿簾家族は一人か二人らし
朝靄の色づくところ柿簾
躁鬱の夫かき分けて柿簾
染め合ひて夕日を照らす柿簾
夕さりをふふみて点す柿簾
柿簾慰安婦の霊慰める
日が育て風が育てぬ柿簾
日だまりに猫スヤスヤと柿すだれ
風去りて揺れはじめたる柿簾
拉致された民の心や柿簾
無人駅守る里人柿簾
柿簾風の音してひとりなり
通過して駅舎の窓の柿簾
帰省子を迎へてくれし柿簾
南面の家ことごとく柿簾
たとふなら家は流木柿簾
憲法と原発想う柿簾
客人を見送る間口柿簾
伊那谷や谷それぞれの柿簾
婆つるす干し柿の透く日和かな
シワふえて父のグチ聞く柿すだれ
熟れ熟れて老婆のような柿すだれ
柿簾昼の明るき峡部落
滋賀知事選民の意示す柿簾
いにしへの里に守り人柿簾
編み籠の古きは丈夫柿簾
柿簾塔なき村の近景に
柿簾めくると星の降ってくる
しのび寄る畑の煙や柿簾
柿簾過ぎて天体観測所
柿簾までを遮るもののなく
柿簾揺れ止むころや一つ星
柿簾の朱で飾りをり峡の村
真つ先に朝日を受くる柿簾
夕闇を少し飲込む柿簾
柿すだれ幼き頃の帰り道
柿すだれ汽車を眺めて下がりおり