きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

◆覆面姿で議場に入り、何が悪い◆

<北村肇の「多角多面」(118)>

 こういう騒ぎが起きるたびにイラッとする。大分市議選で初当選した覆面レスラーが、3月の議会で議場に入ることを拒否された。覆面を着けたままでの入場は「議会の品位を欠く」からだそうだ。

 無所属のスカルリーパー・エイジ議員は覆面姿で選挙運動をし、当選した。その格好で議会に赴き何が問題なのか。報道によれば、会議規則は議場での帽子や外とうの着用を認めておらず、覆面は帽子の類いに該当するという。18日の本会議で圧倒的多数により、正式に決定された。笑止千万。

 覆面レスラー議員としては元岩手県議のザ・グレート・サスケ氏が有名だが、同氏の場合は素顔の確認を条件に覆面着用が認められたという。なりすましの可能性を考えれば確認はやむなしだが、あとは有権者の判断に任せればいい。スカルリーパー氏は「このままでは仕事が出来ない」として議会決定を受け入れた。さぞ無念だろう。

 そもそも「品位」とは何か。パリッとしたスーツ姿の議員が聞くにたえないヤジを平然ととばす。国会から地方議会まで、さまざまな議場で目撃した。彼らこそ議場に入れなければいいだろう。鉄面皮のほうが余程、たちが悪い。

 覆面だろうが金髪だろうが、議員としての仕事さえしていれば何の問題もない。姿格好で評価するなら、公約は無意味ではないか。

 覆面議員の話は地方議会の問題にとどまらない。長髪はダメ、丈の短いスカートはダメ……。一部の教育現場では相変わらずとんちんかんな「人格教育」が行なわれている。校則でがんじがらめにしてどんな生徒をつくろうというのか。「形式だけ整えておけばいい」という発想の人間が大量に生まれたら、どんな社会になってしまうのか。

 安倍晋三首相の推進する復古教育は、形式主義の品位重視につながる。身だしなみを整えるのはもちろん、教師にはきちんとあいさつし、「日の丸」には45度のお辞儀をする――。「君が代」を大声で歌っているかどうか計測するという馬鹿げた事例が大阪であったが、あほらしいと笑ってすますことはもはやできない。

 右向け右の強制と規則だらけの社会。想像しただけでイラッとする。「自由」より「公の秩序」が重要だなんて、冗談ではない!(2013/3/22)