きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

金曜俳句への投句一覧(8月26日号掲載=7月末締切、兼題「蜘蛛(くも)」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』8月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【蜘蛛(くも)】
少なくも見ていたりするくもの道
くもの巣を顔に受けての枝折道
蜘蛛の囲のありどころ知る月夜かな
おはようさん昨夜の蜘蛛に声かける
落日を絡めとりまり蜘蛛の糸
脚高に蜘蛛這う夜や長廊下
蜘蛛の囲や蚊帳吊るしたる母想ふ
足音のたえて蜘蛛またうごきだす
一人居や蜘蛛の張る囲を見届けり
蜘蛛の巣の高層住宅鶏小屋に
助手席に透けるベルトの蜘蛛の客
自転車に蜘蛛くっついて唐橋まで
蜘蛛の囲の舳先に在りし虚舟かな
机には一書もなくて蜘蛛おはす
風に乗り海一つ超え蜘蛛着地
壁に蜘蛛動かぬだけにあくびかな
蜘蛛の圍にかほ全面を盗られけり
風落ちてヨーヨーのごと蜘蛛おりる
蜘蛛の囲をこはさぬやうに朝の畑
夕暮れに蜘蛛の囲つくる小半時
あれからは蜘蛛の囲さへもいとほしむ
しなふ肢や譜面を蜘蛛のピアニスト
ストレスを絡めとつたる蜘蛛の圍か
山門の隅に蜘蛛の囲やぶれけり
揺れる蜘蛛なかなか消えぬ手術灯
怖いのかかわいらしいのか蜘蛛睨み
蜘蛛の囲も立退き老舗解体す
下駄箱と勝手口には同じ蜘蛛
風のきて繕ふ蜘蛛の智恵みたり
経長し鴨居に蜘蛛の動かざる
蜘蛛の巣の隣に越した山田君
日々残業見守っている女郎蜘蛛
蜘蛛の巣に遊びに来たか糸蜻蛉
蜘蛛の圍にかはたれどきの壮麗さ
女郎蜘蛛編み終へどかと陣取りぬ
いづこから湧き出でてきし蜘蛛と子等
繕ひてBMWのうらへ蜘蛛
蜘蛛の囲を逃れんと蛾や日の暮るる
蜘蛛の巣にひっかかっている肝機能
くもの糸糸だしながらえだからえだえ
蜘蛛の囲の帆走できぬ青田波
飲むだけの安い友ならいるぜ蜘蛛
ここがまあ世界の果てや蜘蛛の糸
黄昏に輝きわたる蜘蛛の糸
胸郭に蜘蛛の巣を見て旅に出る
蜘蛛の子の飛ぶスペインの石畳
蜘蛛の囲を網戸代わりにハンモック
蜘蛛の糸富士の高嶺を縦に裂く
蜘蛛の囲の逃さぬ骨のありにけり
水打つや蜘蛛の囲の蛾にかかりけり
竹ぼうき蜘蛛の巣避ける溝掃除
蜘蛛はねて夜は平らかに新畳
蜘蛛といる私は君の何なのさ
蜘蛛の糸は釈迦の意のまま蓮の池
デジタルの蜘蛛の画像に魂消てる
蜘蛛の囲にすでに主なし稲光
蜘蛛は囲を張りたる後の孤独かな
蜘蛛の糸体重制限ありません
あさつゆにきらきら光るくもの糸
大空と風の便りと蜘蛛の巣と
一人居て糸張る蜘蛛を眺めをり
白日の白髪の如き蜘蛛一糸
定年やしばし蜘蛛の狩ながめたり
水晶の飾り付けたり今朝の蜘蛛
蜘蛛の巣に占領されて三輪車
蜘蛛の囲に宿題置いて靴脱いで
からまってこんがらがって蜘蛛の子め
逢へぬ日の窓に昨日の蜘蛛のいて
蜘蛛の糸霊峰富士を真っ二つ
方丈の壁より落ちし蜘蛛一つ
蜘蛛の巣の一番大きな納屋の主
可愛いと蜘蛛を詠いし亡き夫
蜘蛛は囲を部屋の隅から張ってゆき
横糸に雫編み込む女郎蜘蛛
ひと雨で真珠現る蜘蛛の糸
蜘蛛の息張りつめてゐる枕元
書斎には無口で懈怠な蜘蛛といる
蜘蛛の子とたどる石碑の謂れかな
蜘蛛がきて足の裏から這い上がり
厠蜘蛛囲ひをかたに通ひけり
蜘蛛の囲の濃くなりてをり工場跡
蜘蛛の囲に蜘蛛からまりて風動く
びくびくと猫の仕留めた蜘蛛片す
巣を繕う蜘蛛忙しき雨上り
日が暮れてなすこともなし蜘蛛がいる
みんな逝き孤老の部屋に下がり蜘蛛
蜘蛛の糸東の空を繕ひて
この先に浄土はあらじ蜘蛛の糸
女郎ぐも空を捕へてゐたりけり
蜘蛛の巣を見てゐる老いし眼かな
蜘蛛の網を抜け聞えくるジャズ虚ろ
切られてもまた切られても蜘蛛の糸