きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

金曜俳句への投句一覧(5月27日号掲載=4月末締切、兼題「葉桜」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』5月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【葉桜】
葉桜を思ひ出してる錦鯉
窓少し開け葉桜の髪床や
葉桜やきようときのうとしあさつて
葉桜の町の真ん中すすみゆく
片恋は片恋として花は葉に
葉桜は一週間後にあり風薫る
葉桜や港の見える丘に立つ
遠くから来て葉桜の道であり
葉桜に思い出したくない過去が
葉桜の葉の囁くや水面揺れ
葉桜や「退院」と医師の言葉まつ
葉桜や歩道はすこし暗くなり
逝きし君へ葉桜一枝手向けてん
葉桜が聞く新人の胸の裡
葉桜のバス停までは駆けていく
葉桜や詰襟の子らよく笑ふ
雨が降る。桜葉は光る。春が逝く。
消息を知らされぬまま花は葉に
葉桜や抜け道覚え新入生
葉桜やたがひの画帖のぞき合ひ
葉桜やうなじに強き風の音
葉桜や沖に豊かな水のあり
葉桜に次を備えを学びけり
葉桜や一枚ガラスの一面に
葉桜に吸ひ込まれゆくああ身空
葉桜や幹を揺らすは修司かと
はだら陽を浴び葉桜の下を過ぐ
葉桜や今日馬跳は馬の役
葉桜や居眠りしてる新入生
葉桜の中にたわむるひかりかな
真っ直ぐの葉桜並木往復し
葉桜やCumalinの香懐かしく
葉桜や山が沈みてゆくところ
雨が降る。桜葉ひかり、春は逝く。
葉桜ややがて静かさ広ごりぬ
葉桜や着替えは三分飯五分
葉桜やセーラー服の歩巾とび
復元の火の見櫓や花は葉に
葉桜や夜もようように温うなり
葉桜や早弁覚え新入生
葉桜や僧の名のつく長き坂
葉桜や色失ないて鳥の声
葉桜が色盛る八重をたしなめり
風すさぶ葉桜のへの雲迅し
花は葉にけふは一句も整はず
葉桜の空を恋しているところ
葉桜にお疲れ様と言ってみる
葉桜や古典に耽り移ろえん
葉桜となれば影絵の城下町
葉ざくらをくぐりほのかに墨擦る香
葉桜のさやぐときあり宴のあと
葉桜やきのうまでとは違う人
葉桜の湖をしんしん歩みけり
葉桜や酒酌み交わす同期生
葉桜の傘で和らぐ陽射しかな
葉桜や年甲斐もなく念新た
葉桜になるまで見つめをるといふ
葉桜や見えない物の数数え(放射能数値)
葉桜に囲まれてゐるこども兵
葉ざくらの風に呼ばれて立ち止まる
葉桜や安倍川餅を買うてくる
葉桜や金属音の船溜り
葉桜や舞台を了へて人中へ
葉桜やモーツァルトの階調で
宴の様見し葉桜の寡黙かな
葉桜へ飛び込んでゆくホームラン
葉桜へバトンを継ぎて蕊落ちる
花は葉に瓦礫の都市を見おろして
掌にひとつみちのくの菓子花は葉に
葉桜の下に遊ぶやお飯事
葉桜の一樹差掛傘となす
葉桜や葉加瀬太郎の光る靴
葉桜やいつの間にやら中間試験
葉桜となりて少女の秘めしこと
散り落ちし花も消え去り葉桜は
葉桜や頬杖の杖ぐらぐらす
葉桜は今は楓とお友達
葉桜のトンネル抜ける子らと犬
葉桜やひとみの中の飛行船
葉桜や沼の匂へる遊歩道
葉桜は眼にしむごとし病癒ゆ
葉桜の花の数だけ葉を纏ふ
駆け上る落城の坂花は葉に
葉桜や落ち着き乱す名残り花
葉桜や里の古刹の魚鼓の鳴き
花は葉に子はランドセル背負ひ馴れて
葉桜や染屋にありし藍の甕
葉桜を見上げる子の歯直つ白き
葉桜や弥生の路の農学部
葉ざくらの影さわさわと水面かな