きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

テロ対策3法と民主党、そのほか

「米国同時多発テロ」がらみで3つの悪法が成立もしくは改悪された。書くのも面倒な正式名称が異常に長いいわゆる「テロ対策支援法案」(全12条)と「自衛隊法改正案」、船体射撃の要件を緩和する「海上保安庁法改正案」である。

 自公保与党は、ほぼ1枚岩。「平和と人権」を掲げる創価学会を支持母体とする公明党はどこまでいくのか。すべてに反対したのは「ガンコに護憲」の社民党だけ。共産党ですら海上保安庁法改正には賛成している。ここでは、主に争点となったテロ対策特措法と自衛隊法改正案について報告する。そして、かつて本誌でも掲載した359号(4月13日)特集「民主党で大丈夫か?」のように、まだら模様の民主党の議員の動きに注目しつつ法案の成立についてもう一度振り返ってみたい。

 だが、特別に民主党が一枚岩ではないということを証明するのが目的ではない。加藤の乱、そして小泉首相の登場で今や、永田町や政治で喰っているマスコミ関係者も政界再編を待ち望んでいる状態。ほとんどの党が波乱を待っている。

 むしろ、今回の法案に絞って野党第一党としてのプライド・意地が、政治的かけひきにおいていかに党の姿勢を複雑にしているかを見てみたくなった。

 民主党は衆議院では、テロ対策特措法案政府案反対、修正案提出、自衛隊法改正案賛成という党の方針だった。テロ法衆議院で党の方針への態度を軸に衆議院で取り沙汰された3議員を見てみよう。奇遇にもいずれも1年生議員の小林憲司、後藤茂之、今野東の3氏だ。

 小林憲司氏、「コバケン」37歳は元「上田ハーロー」社員。詳細は不明だ。 

 後藤茂之氏は元大蔵官僚。政策集団「ミッション日本」メンバー9人のうちの1人。この「ミッション日本」というのは、どうやら党内にいる若手官僚出身者のクラブという印象を受ける。主なメンバーの出身は旧大蔵省出身2人、農水省出身2人、自治省1人、外務省1人、日本興業銀行出身2人。ひがみと言われようが、なんともイヤミなお見合いクラブのようだ! 彼らのお友だちらしいのが、これまでに総選挙を2回落ちている池坊雅史(彼も旧大蔵省出身で池坊家の婿養子)氏も、いい先輩たちですと応援文を送っている。

 今野東(こんのあずま、本名・今野東吾)氏は元フリーアナウンサーだそうだ。宮城県というよりは東北を舞台にラジオ放送など広く活躍している。東北弁を大切にする寄席を主催するなど文化のわかる風流人。ネットで掲載されている日記では(安全保障委員会の委員らしい)<国連PKOに派遣される自衛隊員の給与は年俸約1900万円、ふざけるなぁー!>と素直に怒ったり「あっ、インタビュ―の途中でゲップしちゃったんだった」と恥ずかしがったり、3人の中では一番、いや民主党でもかなりの「庶民派」と見た。

 彼らの行動を党の行動に即して言えば、後藤氏は政府案に賛成の起立(党議拘束違反)。これはかなり目立つ行為だ。コバケンは修正案に賛成した後で退席。つまり、“政府案にとっとと賛成して修正案なぞ出すな”と、党の“腰砕け”姿勢への不服ぶりをアピールしていた。ちなみにコバケンは、安全保障委員会に所属している。

 後藤氏は、小泉構造改革に半ばエールを送り政界再編を熱望しているだけに、いつ民主党を割るかわからない人物である。

 与党を見てみれば、自民党では野中広務、古賀誠が退席した。退席の理由は、法案の採決方式を起立式ではなく記名式をとるよう主張したため。結局、審議では起立式がとられることになったので、抗議の意思を示して退席した。だが、法案自体には賛成だったとも言われている。

 衆議院で自衛隊法改正に反対した議員は「あずま」1人だ。あずまはHP上でも「自衛隊法改正はやはりおかしな法律だ。これは防衛庁にとってつごうがいい法律で、国民にとってつごうがいい法律でない」と激怒している。あずまは憲法調査会のメンバーでもあるらしく、その発言を見ると論憲派を含む広い意味での「護憲派」だろう。

 

 この3人を見ただけでもなんとなく、民主党の姿勢が垣間見えたような気がする。

 ちなみに、自民党では野中広務と古賀誠の両議員が本会議の採決を退席した。野中氏の主張する起立方式がとられず、記名方式が採用されたことに対する抗議の意思と言うのが表の理由だ。だが、文藝春秋の『諸君!』11月号で「野中は中・朝・韓との連絡通信塔みたいな男だから、自衛隊を憎むのは当然」とこき下ろされている野中議員。「野中は自衛隊が海外に派遣されるのが我慢ならなかったのでしょう。古賀は思想信条に関係なく野中の後についていっただけでしょう。だって古賀は日本遺族会副会長ですよ」(永田町周辺筋)という声も聞こえてくる。

 参議院の民主党を見てみると、テロ対策支援法の10月29日の参院本会議採決で、民主党は全員がテロ対策特措法政府案に反対し、造反者はなかった。この時点でテロ対策特措法は衆議院から修正されていた。

 改正自衛隊法の採決では民主党は賛成の立場。しかし、今井澄、大橋巨泉、岡崎トミ子(参院政審副会長)、神本美恵子の4氏が棄権。円より子氏(参院政審会長)が欠席した。結局、党の方針に逆らった5人は「反省」しているので不処分となった。だが、政審とは、党の政策を司る部門だ。その会長と副会長が棄権・欠席した意味って大きいのではないか。いまさら民主党がごねても修正の余地がないしカッコつきの「世論」もあるから、党としては賛成したけど政策的にかなりムリがあったということを意味するわけじゃないの。それほど、この法案の問題は大きかった。

 11月半ば以降には国連平和維持活動(PKO)協力法改正問題が待っている。

(おまけ)

トマホークと内閣法制局

 11月6日付『朝日新聞』に津野修内閣法制局長官のインタビューが出ていた。16日の衆院テロ対策特別委員会で、中谷元・防衛庁長官がトマホークミサイルの発射後に人が誘導すれば、発射行為は非戦闘行為に当たるとの政府見解を「恥ずかしい」と修正したわけだ。理由は「憲法は個別的自衛権以外の武力行使を認めていないから」。そんなこと今さらわかったようなことを言う難しい話ではないでしょうが。テロ対策関連法が成立した後、何を言っているんだ。あ、成立後だから言っているのか。白状しないよりは遙かにマシだけどね。 

 ということで、トマホークを発射する米国洋上艦に自衛艦が補給することは戦闘行為ということになりました。

(注)内閣法制局の仕事については西川伸二明治大学教授の論文集『知られざる官庁 内閣法制局』(5月書房)や財務省官僚が書いたと言われる小説『3本の矢』(榊東行・徳間書店)が詳しい。

セブンが8号で

 「新しい週刊新聞」と自称していた『seven』(朝日新聞社発行)が11月6日発売号で「休刊」になった。わずか8号目である。業界では「休刊」は実質「廃刊」を意味する。コーヒーショップのスターバックスで売っていて、最近ではキオスクでも売っていた。全ページカラーで、「レイアウト・デザインに金かけているな~」と感心していた矢先なのに残念。

がんに関心のある方または381号及び385号を買われた読者の方への口コミ情報

 385号(10月26日)の「論争」欄で、「地域がん登録事業の意義について議論を」と題して投稿している大島明さん(医師)。この方は、地域がん登録(注)の第一人者というかこの世界ではエライセンセイと知り合いの指摘で判明。このお方が発言したことで関係者は仰天したそうです。これまで、まったく「国民的議論」が存在せず、医学界の聖域であった「地域がん登録」に小さな穴が空きました。

(注)簡単に言うと、がん患者がモニターとしデータをとられるシステム。本人の了解をとらずに診療情報や死亡情報をとられるシステムなので問題を含んでいる。
(平井康嗣)