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第19回「週刊金曜日ルポルタージュ大賞」優秀賞

この命、今果てるとも

――ハンセン病「最後の闘い」に挑んだ90歳――                             

入江秀子

 全国に13箇所ある国立ハンセン病療養所の施設を地域に開放し、同時に、高齢化する一方の入所者たちの終生在園と快適な生活を保障するための「ハンセン病問題基本法」(ハンセン病問題の解決の促進に関する法律)が、08年6月11日、成立した。超党派の国会議員による議員立法として、提出されていた議案であった。
 ハンセン病問題は、01年のあの歴史的な熊本判決により、すでに解決しているのではないかと思われているようだが、黒川温泉(熊本県・南小国町)の宿泊拒否事件に象徴されるように、ハンセン病回復者に対する根深い差別は依然として続いており、全国に約2800人(本稿執筆時)いる療養所入所者のなかには、いまなお、帰郷も両親の墓参も果たせない人が多数いるのである。また直近のニュースでは、北京五輪の組織委員会が発行した外国人向け「手引」の中に「ハンセン病患者は入国できない」という一項のあることが伝えられている。
 熊本判決から7年経った今、この訴訟を闘った人たちが、さらにまた、かつて「強制収容所」だった療養所を、地域に開かれた、福祉、医療、文化の拠点にしたいという理想に燃え、新たな闘いに立ち上がった。そして法案成立時には実に93万人を超える署名を集めたのである。その運動の核となったハンセン病回復者の人たちは、平均年齢79・5歳。いわば命を賭けた最後の闘いでもあった。

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