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本誌記事をめぐる誤解と中傷について

2016年7月29日
『週刊金曜日』発行人  北村肇

本誌2016年7月15日号記事「ベストセラー『日本会議の研究』で注目の作家 菅野完氏が性的「暴行」で訴えられていた」に関し、インターネット上で、誤解や、根拠のない中傷が飛び交っています。記事中の「被害女性」(以下Aさん)の方ならびに取材を進めるにあたり相談をさせていただいた方にも影響が出ていますので、事実関係を明らかにします。

本誌に対するいわれなき批判の筆頭は「ステルスマーケティング(ステマ)疑惑」です。ステマとは、「宣伝であることを隠し、第三者を使って消費者をだましたり、消費者に不利益をもたらす」行為を指します。多くは対価が発生します。いうまでもなく、本誌がステマをするわけはないのですが、ありえないことが「疑惑」とされたきっかけは、ある人(以下Bさん)が書いた7月14日(木)のブログでした。

同ブログには、記事の紹介文とともに記事全文の画像が載っていました。本誌の発売日は毎週金曜日で、前日に記事全文がネット上にアップされることは本来、考えられません。ブログを見つけた業務部員から私(北村)に相談があり、著作権の問題も生じることから、Bさんに対処をお願いすることにしました。ただ、この時点では、Bさんのことを本誌の定期購読者と思っていました。本誌は水曜日に発送するので、定期購読者の方なら木曜日に手にすることもあるからです。

そこで、定期購読のお礼、記事を宣伝してくれたことへの感謝をしつつも、記事の全文が写った写真の掲載について「正式な発売日(7月15日)前ということもあり引用の範囲内で行なっていただくなど著作権に充分ご留意いただければ幸いです」と、ツイッターのダイレクトメッセージでBさんに送りました。直後にBさんから「わかりました。明日売れることを祈ってます」という返事があったため、記事の全文が写った写真は削除してもらえると判断しました。

一方、本誌取材班には同日、掲載誌を送っていたAさんから、Bさんのブログで記事が紹介された旨の連絡がありました。取材班は、全文転載の問題を感じたものの善意であるだろうと考え、「(全文転載されている)現状のままでは困る」という旨だけをAさんに伝えました。

翌15日(金)、Bさんのブログを確認すると、記事の全文が写った写真は削除されており、これ以上の問題は起きないだろうと判断しました。しかしこの日の18時ごろ、Aさんから本誌取材班に連絡があり、Aさんのツイッターのアカウント名などがBさんのブログでさらされてしまっていること、Aさんが記事の宣伝を頼んだ人(以下Cさん)の依頼を受けてBさんがブログを書いたことを聞きました。そこで業務部は再びBさんにツイッターのダイレクトメッセージで連絡し、記事の全文が写った写真を削除してくれたことと記事紹介をしてくれたことへのお礼についてメッセージを送りましたが、その時点ではBさんから返事がありませんでした。

Bさんと連絡がつかないまま、Aさんの情報についての暴露が続きました。弊社は常に取材対象者を守ることを徹底してきましたが、今回もAさんに対するセカンドレイプを防ぐことを最優先に考え、これ以上の騒ぎにならないように、Bさんと連絡をとることはやめ、事態が沈静化するのを待つことにしました。

ネット上ではAさんへの誹謗中傷や、「『金曜日』がステマをしてBさんを使い捨てにした」といった中傷が飛び交うようになりました。上述したように、本誌はBさんとは直接の関係がありません。

ただ、いかなる記事でも、私たちは多くの方に読んでいただきたいと考えており、筆者や記事に関係した方々に宣伝をお願いすることがあります。また掲載誌を取材協力者にお送りすることも当然です。それは通常の仕事であり、ステマとされるいわれはありません。

しかし、今回の記事は「性被害」という微妙なテーマがからんでいたことから、宣伝にも慎重を期しました。結果、大きな宣伝効果があるヤフーニュースへの配信という選択肢もとりませんでした。

また、看過できないもう一つの問題としては、複数のブログやツイッターの書き込みなどの中に、本誌編集委員の中島岳志さんを名指しする誹謗があったことです。「ステマの黒幕」であるかのような悪質なものも散見されます。

今回の記事作成にあたり、中島さんには取材を進める過程で相談をしていました。当然、誌面化の前にも相談しています。このことが「謀議」などと“認定”されているのです。心無い書き込みには正直、怒りを禁じ得ません。

さらに、記事に関しても、Aさんの証言のみによって書かれているかのような悪質なデマがあります。読んでいただければわかるように、裁判資料などの客観的な資料に基づいて書いていますし、菅野氏にも取材しコメントを載せています。事件の真偽のほどもわからないとする印象操作もされていますが、そもそも事件自体は菅野氏が「事実」であると認めているものです。いいがかりに近い書き込みを読むと、憤りとともに悲しみすら覚えます。そして何よりも、こうした状況がAさんへの二次被害を拡大させていることを憂います。これ以上、セカンドレイプにつながる言説が独り歩きしないことを願います。

弊誌は事実と真実を伝えるタブーなき雑誌として生まれ、進んできました。このことには一点の曇りもありません。今後も愚直にその方針を守り抜いてまいります。

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