兼題「竹婦人」__金曜俳句への投句一覧
(7月25日号掲載=6月30日締切)
2025年7月8日4:32PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
竹婦人とは、竹で編んだ筒型の籠です。抱きかかえて寝るなどして、涼を取ります。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年7月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【竹婦人】
過不足の無き学歴や竹夫人
竹婦人風のかたさを確かめる
泣寝入して終わる日も竹婦人
竹婦人抱山山の風通る宿
蔵にある薄き埃の竹婦人
無趣味なる父の遺せし竹婦人
押入れに隠す昼間の竹婦人
ワクチンの腕を庇ひて竹婦人
さかさまの夢をみるかな竹婦人
抱籠の軽さや風の止まぬ夜の
竹婦人頬の辺りを猫が掻く
抱かれて抱いて一人竹婦人
やや硬き風の色なり竹婦人
古物屋に買ふ人のなき竹婦人
竹婦人蛻の空の涼しさよ
うたた寝の島唄遠き竹婦人
竹婦人関節痛を響かせる
妻以上に妻に似てくる竹婦人
朝まだき足で追いやる竹夫人
われにひと言ありさうな竹婦人
抱き癖の小さき凹みや竹婦人
竹婦人はさんで妻と川の字に
竹婦人ちぐさの想いくぐり抜け
ほつれ初めし竹夫人をば遠ざけり
問われれば応えに窮す竹婦人
竹婦人寝返るときも抱き抱へ
高貴なる姫の目覚めて竹婦人
顔も情も無きがよろしき竹婦人
竹婦人寸胴なるを見られけり
幾年を閲せし納戸竹婦人
文豪の歪もいびつ竹婦人
くびれなき竹夫人あらあらと抱き
愛されて今宵邪魔者竹婦人
声あらば此の世ならざる竹婦人
血の気など通さぬ体竹婦人
小さき荷を解き一泊の竹婦人
父遺す寝間に飴色竹夫人
追従に疲れたる夜の竹婦人
竹婦人厳父の留守に抱いてみる
通訳のさらりと訳す竹夫人
竹婦人初日の固さ味わえり
竹婦人ささくれ立てる悋気かな
無口なる事の安らぎ竹婦人
竹婦人空洞を抱く目つむりて
竹夫人の報復指にすいばり
床の間に立て掛けられて竹婦人
竹婦人つんとクールな君が好き
竹婦人抱え一陣風になる
竹婦人ひととき山の風とほす
妻かと思う体型の竹婦人
一人寝に慣れぬ背中の竹婦人
抱かれゐし姿で運ぶ竹婦人
抱きかかへ父の匂いの竹婦人
整体院壁に立て置く竹婦人
あかつきの雨に艶めき竹夫人
もう一人女帝御座すや竹婦人
独身が長し竹夫人に愚痴る
植民地時代の宿の竹婦人
連れ添ひて艶ましゆける竹婦人
竹婦人足蹴にしての起床かな
雑貨屋の無雑作に吊る竹婦人
竹婦人のっぺらぼうのほくそ笑み
共寝して息のかそけき竹婦人
竹夫人とならびて聞くや夜の雨
さうそれが松の間さんの竹婦人
ひとり寝の添い寝の肌の竹婦人
添ひ遂げて本望なるや竹婦人
背かれて足に引き寄す竹婦人
ささくれてもすずしいそぶり竹婦人
離れにて夫を待ちをり竹婦人
竹婦人抱くことこれもエコ暮らし
ザビエルの腕毛むくじゃら竹夫人
竹婦人抱きかかへても寝汗かき
抱籠や頬に残りし竹の跡
雨去りてかすかな風が竹婦人
竹婦人風入れ替わる丑の刻
チョキで負け古びたほうの竹婦人
熟睡をとうに諦め竹婦人
竹夫人のほつるるままに捨て置かれ
物置を連れ出って出る竹婦人
抱いてゐておのがぬくとさ竹婦人
借用の介護ベッドに竹婦人
竹婦人好み通りのくびれかな
季語と知りいとど愛しき竹婦人
竹婦人残して妻の逝きにけり
抱いてやるだけの女ぞ竹婦人
竹婦人夢と現を転がして
口答へせぬがよろしき竹婦人
風音を返事とすなり竹婦人
飴色に変はる年月竹婦人
竹婦人ほどよく腰のくびれたる
モナ・リザを見しパリの夜の竹婦人
竹婦人腹に何にもありません
竹婦人にも縦縞のユニフォーム
攻めらるる夢に醒めけり竹婦人
夢に会ふ汝の声若し竹婦人
竹婦人てつきり日本生まれかと
素っ気なき猫と似てゐし竹婦人
竹ごとに正確違ふ竹婦人
竹婦人夢の秘密もぬけがらに
竹夫人の古び老猫転がせり
朝はもう雑な扱ひ竹夫人
抱籠に夢の名残のほつれかな
へんなことしたらおしまひ竹婦人
長きものに巻かれてみたし竹夫人
ひび割れし夢が二体の竹婦人
納戸より古き匂ひや竹婦人
定年の身に相応しき竹婦人
竹婦人女嫌いの距離保つ
放されて忘れられたり竹婦人
見惚れたる薩摩隼人の竹婦人
足元の竹夫人引き寄す夜中
ギシと鳴った後の静けさ竹婦人
未使用の竹婦人部屋隅に座す
竹婦人足をのせるといふことも
だいたいあのあたりがへこむ竹婦人
三食の介助かたわらに竹婦人
定宿にわれ専用の竹婦人
竹婦人立てかけておく昼下り
屋根裏の暗きに傾ぐ竹婦人
片恋を宥むることも竹婦人
竹夫人を挟みて夫とハスキー犬
たよりなげ否ずん胴の竹夫人
悔しさを聞いて貰ふや竹婦人
思うより柔らかなりし竹婦人
指先の外側に反り竹婦人
