きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「霾(つちふる)」__金曜俳句への投句一覧
(4月24日号掲載=3月31日締切)

春にモンゴルや中国北部で吹き上げられた多量の砂塵が、偏西風で日本に飛来する現象が霾(つちふる)です。気象用語では黄砂です。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2026年4月24日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、堀田季何さんの選と比べてみてください。

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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【霾】
きな臭き風の赤さよ霾れり
霾や崖に溶けゆく摩崖仏
霾るや赤きクレーン空を刺す
霾れるあなたまかせの風まかせ
霾や月のちぎれる久遠劫
夜景の霾五十万ドルほど覆ふ
黄塵万丈心に傘さして
霾ぐもりひねもす逢魔時なり
箱庭や霾の影夜の底
つちふる朝サザンの歌詞のエロチズム
不機嫌な姿で地球霾れる
霾や穴といふ穴秘密基地
霾や微動だにせぬスフィンクス
まれに見る霾る昼のくちびるよ
オレオレと国際電話黄砂降る
霾天や敦煌といふ如何にあり
霾や天窓少し煙りをり
霾や左肺に小さき影見っけ
霾れるタワークレーン軋ませて
つちふるや大地は天に昇れない
つちふるや臭ひ残りし洗濯物
霾や注射嫌がる患者あり
神様の落とし物たち霾の
霾や記念写真の閉じたる目
霾や元湯を守る人の日々
霾や死してなお立つ白骨樹
霾や南が上の地図ひらく
霾る纏い帰ってきた猫はっくしょん
霾に見事な文字と思いけり
霾やメソポタミアは目を伏せる
チンダルの光は倉庫へ霾か
海峡の封鎖解けざる霾晦(よなぐもり)
採血の巧き看護師霾ぐもり
霾や渡り廊下でスクワット
霾やシャンプーきしむ昼の風呂
星雲を抱く宇宙や霾れる
霾やまるで世界が終わる色
つちふるや安藤さんはAB型
霾れる地籍図なるや千枚田
つちふるや拝むばかりに予報聞き
霾や雨に車窓も見えざりき
列島はつちふる帽子を取り換える
黄塵万丈黄色き灰を吐き飛ばす
つちふるやどもまで行っても世界なり
霾や合格すればすべてよし
つちふるや普段どおりに歯をみがく
春塵や岩波文庫の天褪せり
霾や瞬時に変はる勢力図
新疆の旅人掬いし黄砂来る
霾や祖父の形見の古眼鏡
霾や灯台の灯を黄に変へて
霾ぐもり遠き異国を思ひけり
霾や失くしたスーパーボールの中
よなぐもり決め手に欠くる畿内説
髪の毛を隠せぬ帽子つちふれり
霾や朝に混み合ふクリニック
霾や英傑集ふ水滸伝
四七抜きの譜面のやうな霾晦
つちふるとぬるめのお茶を飲みたくなり
霾や避難したのか軒すずめ
霾や頬にあてがう缶コーヒー
霾ればさんふらわあの美しき
霾天の後漢襲う黄の頭巾
黄砂降る火星は赤き砂の星
霾りてレフトの守備につきにけり
黄塵の薄闇衝いて天竺へ
光陰の軋みをかくす霾ぐもり
霾の出処思い車窓拭く
オフィス街ホームシックの蒙古風
霾や一週間で捨てし夢
もう誰も残つてゐない霾ぐもり
焙煎に誘われ一杯よなぐもり
霾やいにしえびとの恐る夜
霾天や5’9(ファイブフィートナインインチ)
つちふるやだれかどこかで大嚏
霾る日メガネにマスク負けないぞ
霾や名前呼ばれず待つ患者
霾や再入力のパスワード
旧郭百年前の霾埃
霾晦タクラマカンを垣間見る
長城も大海も越え黄砂来る
超高層住み不自然に霾れる
霾天や天守閣なき天守台
醬匂ふ唐人町や霾ぐもり
霾晦ダンダンウィリクの金の錆
翼竜のばさり霾霾よ
黄砂降る漢の倭の奴の国の跡
霾や家屋解体もうもうと
霾や獣の臭ひ漂はむ
霾ぐもり解体の音くぐもれり
つちふるや雀も日々の暮らしあり
霾や後ろに行けの掲示板
霾に八つ当たりして返されて
約束の鐘にきらりと黄砂来る
モンゴルの黄砂海超え御所の屋根
西方の空にミサイル霾れる
黄砂のとばりはるかかなたを朱鷺の夢
霾や敵味方無き供養塔
白バイに停められてゐる霾ぐもり
霾るや優等生の帽子にも
霾れる砂丘に掬ふ星の砂
一湾へ捧ぐ黙祷つちふるなか
メルセデスベンツ揚陸港黄砂
霾るや不機嫌のまま赴任地へ
霾ぐもり後ろの正面だーれだ
大阿弥陀螺髪肩膝霾れり
大陸の匂ひもせずに霾れる
霾や花粉とダブル襲われる
つちふるや地球はでんぐり返しかな
煩悩の昇れぬ空や霾れり
霾や人事怪しき空の色
黄塵やレトロ加工の秋葉原
霾や生家は遠くなりにけり
モンゴルの馬の蹴立てし黄砂来る
霾や夜中爆音遠くなり
淡雪や扇模様の石畳
カタコトのお釣を貰ふ霾晦
霾や空(くう)に開きし父の瞳(まな)
霾や犇くコインランドリー
霾や破つて捨てる領収書
韃靼の風の先触れ霾れり
なんかいいことありさうな黄沙ふる
霾や書斎に空気清浄器
霾や卒業写真の色古び
蓮根に辛子たつぷり霾晦
霾の花粉と紛ひ宿籠り
霾や紅国(hong guo)黄歌(huang gē)に抗へず
霾や西方浄土ありしかば
霾群大海原を一跨ぎ
良い人の振りを続けてつちふれる
霾ぐもり地蔵をぬぐふ翁かな
霾の源へ逝き還らざる
霾れど赴任先へと君が発つ
黄砂のとばり朱鷺の夢あふれけり
霾や俯瞰の景を見下ろして
霾や二億年かけ渡る海
霾降るシルクロードの辺境に
霾やこんな時でも深夜勤
霾やあすの歴史を創作す
きなこ餅食べこぼすかな霾空
霾やトレッドミルをひた走る
近未来小説のごと霾れり
列島を花粉でまぶし霾れる
紙コップに握り癖ありつちぐもり
霾や民寄りの王選ばれる
つちふるや車に指文字「故障中」
つちふれよ潔癖主義のこの国に
霾や点滴の管弾く指
霾や奥に阿吽の朝日影
霾るや雲より仙人落ちし日の
霾や史記に記されてゐる些事
霾や天さへ隠す大都会
日本の空を汚して黄砂降る
霾を天涯にして花吹雪
霾や昼間も暗き孔子廟
東京を黄色く染めるよなぼこり
霾や化粧ののりのさえぬ妻
つちかぜや見通し悪き近未来
霾や右往右往の暗き空
つちふるやラマ寺の黄の旅万里
つちふるや指で文字書くボンネット
霾の庭で砂浴ぶ雀かな
霾や新車汚るる根比べ
鴉来て羽を気にする霾ぐもり
霾る空猫が出窓で大あくび
古里を離れ霾妖となる
霾や砂より玩具掘り出す子
公園の無人の昼に霾れる
つちふるや空と話をしたい朝
霾の忽ちに着く灯しかな
霾や憲法前文読み返す
霾にマスク上から手で押さえ
つちふるやへだたりの無い人になれ
ドアを閉め切つて一人の霾晦
霾るや午後にはクアラルンプール
黄砂振る洗濯物の戸惑い様
霾ぐもり武蔵の国の電波塔
霾や手押し車を寄せる窓
つちふるや狼が来て鎮まれり
霾るや野球小僧の野次ひとつ
霾や宇宙に二万ごみの浮く
寺の中つちふる予感に満ちて居り
黄砂ふるプロテストソングのCD
蘇る「パンダのもり」や胡沙荒るる
霾や手押し車の舵を取り
霾れる国の護りの郷土富士
霾を新幹線は発車せり
霾や目鼻くすぐるエトランゼ
定宿の閉館知るや霾れる
つちふるる日本ははははははっくしょん
配達のひと小走りに霾れる
輪を遠きものとし黄砂降る
霾の街ほろびゆく街に似て
霾や書斎に開く黙示録
黄塵に沈める街の影絵かな
霾天のそこにしづみし摩天楼
霾やドナルドだけという響
霾や玻璃の輝く摩天楼
霾や右目の涙とめどなく
中東に戦火いや増す霾晦
霾や今日のんびりとさくら猫
草原に佇む馬やつちぐもり
霾や路地に行きかう人の群れ
つちふるや庁舎の突先まろく見ゆ
霾汚れして坂登る老ばん馬
黄砂降る証明写真撮り直し
霾や書棚のほこり吹いてみる
霾やライト兄弟地に死せり
霾や鼻垂れ犬のくしゃみ
火の国の女馬車ひく霾れる
だいじょうぶ今日は霾る朝だから涙が出ても言い訳できる
ゾルゲの真実を暴く霾ぐもり
つちふれば独自の布巾作るべし
霾や錆びた画鋲に火の用心
霾やライフポイント削り取る
霾晦天使許さぬ肌のいろ
戦車来る辺境の村霾れり
霾やまだ明けやらぬ吉野ケ里
つちふるや見通し立たぬ人の世に
霾や見開く目に母かすむ
庭先の恐竜吼ゆるよなぐもり
霾やみづうみほどの海だもの
霾や母の手首の脈を取る
霾るやマラケシユ色に染む夕べ
天竺は西の彼方や霾ぐもり
乾坤のあはひぼかして霾れり
霾やからくり人形首傾げ
蒙古風旅する本に『方丈記』
霾の窓をタオルまた黄ばみ
ドームにも資料館にも霾れり
図書館の窓の向かうの霾れり
霾るや離婚届けを出しそびれ
塔すべて剥がれて黄砂降る逢魔
霾るやわが身とおなじ古び色
つちふるや坩堝の縁を深深と
翔びたちし学び舎古りて春の塵
霾や付け爪二寸子は出かけ
霾るやディストピアてふ近未来
霾に証明写真しかめ顔
色変わるかに霾れる自家用車
列島の都合構わず霾れる
捨てられぬレコード多し霾ぐもり
霾やこの文字のなか誰の棲む
霾や乱反射の猫目細む
霾や中島みゆきの手の小さし
霾れりデッキを流す水の色
特異点前夜の街につちふれり
霾やトラックに乗る蒙古馬
霾や遠い砂漠の偏西風
霾や粘膜いつも濡れゐたる
がたぴしと愚図る雨戸やよなぼこり
霾やどこかで漏れるガソリンが
霾や滅びし国のあまたあり
つちふるや座面の剥げし一輪車
霾る日蟻の行列相も変わらず
霾やトロイメライの鍵盤に
霾るを見下ろし鳥は北へ北へ
霾や死の灰よけて来ればいい
つちふるや大陸の風音もなし
霾れり中韓日をひと跨ぎ
つちふるや天気予報に泣く日より
霾や地球表示をひりつかせ
霾やロケット消ゆる月の裏
ATM画面の黄砂指を染む
霾るや地下足袋鳴らす高足場
楼蘭の土も混へて黄砂降る
霾れる後の静けさ空群青
霾や心の揺らぐ頃も頃
霾や犬先導の散歩道
つちふるやマハーバーラタなのか世は
霾やまぼろし色に染まりをり
つちふるや太古の歴史感じつつ
霾や微動だにせぬ観音像
霾や縄文土器の出でし丘
霾らむ空に漢方薬撒けば
霾の国に戻りしパンダかな
霾や義眼を口に含みをり
霾や小鳥は既に翼閉ず
ペルシャから戦の便り黄砂降る
霾でアンモナイト壁溶けていく
霾る日蛙の背中が黄ばんでる
霾の屋根に出来立て肉球痕
霾晦埋もれた都市の鎮魂歌
霾や八百万の神さへ微か
つちふるや発見途上の古墳群
霾日静寂に唸る加湿器や
霾りて薄く焦げゆく銀座かな
霾やあらぶる騎馬の民のすゑ
黄沙ふる三本立ての名画座へ
つちふるや空に国境ない証拠
霾やフェイク動画の裏のうら
霾ぐもり貪るやうに天日喰ぶ
霾を知るまで生きた早生まれ
霾の溢れる窓に子猫たち
幾万の消えし写経よつちぐもり
秘めてゐる恋の重さやよなぐもり
霾や呟くやうなマシュケナダ

【葉桜】
葉桜の濃淡マルハラの恐怖
葉桜や五年日記の一年目
葉桜や想ひ出したくない記憶
葉桜や三千五百グラムの嬰児