きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

「櫂未知子の金曜俳句」11月末締切の投句募集について

『週刊金曜日』12月24日号掲載の俳句を募集しています。
【兼題】 「時雨」もしくは「神の留守」(雑詠は募集しません)
【締切】 11月30日(火)必着
【投句数】1人計10句まで何句でも可
※特選に選ばれた句の作者には、櫂未知子さんの著書をお贈りします
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朝鮮半島危機に対処できない国会議員の罪は、柳田法相の失言より重い

<「北村肇の多角多面」8>

 朝鮮半島の危機をみるにつけ、あえて暴論を。「柳田稔さん、あなたは法相をやめるべきではなかったし、その必要もなかった」。

 確かにほめられたものではない。身内の集まりで気がゆるんだからといって、あれほどお粗末なあいさつをするようでは、「この人に死刑の承認をされてはたまらない」という怒りがわいてくる。それでも、だ。はたして、法相辞任につながるような失言だろうか。

 小泉純一郎元首相が発した数々の暴言を思い出す。自衛隊の行くところが非戦闘地域だとか、人生いろいろ会社もいろいろとか。それでも彼は総理大臣であり続け、新聞・テレビの追及も鈍かった。失言どころか確信犯的な暴言が、結果としてはお咎めなしになってしまったのである。

 ただ、私が「辞めるべきではなかった」と考える一番の理由は別のところにある。失言―与党批判(野党もマスコミも)―閣僚辞任―永田町混乱といったお決まりのコースが展開することにより、国会議員が肝心な問題に目を向けずにすんでしまう、そのことが納得できないのだ。つまり、与党も野党も難問から“合法的”に逃げることを許されてしまうことへの憤懣である。

 自民党は、小泉元首相の暴言などなかったかのごとくに、柳田法相を辞任に追い込んだことで勝利に酔いしれ、一方の民主党はますます沈鬱ムードに包まれた。子どものケンカで勝った負けたとはしゃいでいる暇などないだろう、とあきれていたら、案の定、日々のニュースから外交問題は吹っ飛んでしまった。中国やロシアとの関係、TPP加盟など、日本の将来を考える上で避けられない問題はすっかり影が薄くなった。そこへ起きた「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)砲撃」事件。

 いまさら驚きもしないが、民主党の動きはもたもたしていて安心感のかけらもない。直ちに、閣僚だけではなく各党代表者を集めて緊急会合を開くくらいの知恵が、なぜ浮かばないのか。日常、朝鮮半島問題についてきちんとした議論がされていない証左だろう。一方、一連の失言問題では大音声でがなりたてていた野党も、何か歯切れが悪い。こちらも、普段、どこまで外交問題に心を砕いているのか疑わしい。

 取り組むべき問題の優先順位を国会議員の皆さんはどう考えているのか。無為無策の罪に比べれば、柳田法相の罪はむしろ軽い。(2010/11/24)

東京都青少年健全育成条例の改正案について

改正案、旧改正案との比較表 (提供/渋井哲也さん)

ライターの渋井哲也さんから、都条例改正案の比較表を送っていただいたので掲載します。

内容については今後精査しますが、渋井さんとも「前回の改正案よりもひどくなっている」ことで一致しました。とりいそぎ、資料としてブログに掲載することを最優先します。かすれて読みづらいところもありますが、ご容赦を。今後とも問題点の分析、批判に尽力したいと思います。

ITライター・佐々木俊尚さんの事務所は「クール」でした

<北村肇の多角多面7>

 やはり、椅子、テーブルのほかは家具らしきものがなかった。インタビューで訪れたITライター・佐々木俊尚さんの事務所兼自宅の話だ。「やはり」と言ったのは、IT業界の関係者を訪ねると、昔ながらの応接室――洋酒やゴルフコンペのトロフィーが並んだサイドボード、分厚い本で満杯の本棚――にはおよそ出会ったことがない。広い空間に必要なものだけが置かれ、生活臭を感じさせないのである。

 一つの理由は、電子空間の整理術が反映しているからではないか。パソコンはいわば無尽蔵の収容ボックスが存在する空間。ファイルにきちんと収めれば、いくらでも情報は貯められるし整理もできる。知恵と工夫をこらすことにより、机の周辺から書類の山を一掃することも不可能ではない。電子書籍時代になれば、書棚も無用の長物になるかもしれない。家具などが雑然とする部屋は、IT業界の関係者には似つかわしくないのだ。

 もっと本質的な理由は、「クール」の希求にあるような気がする。狭い空間で家具と人が混在し、ぶつかりあって暮らす空間を「ホット」とすれば、機能的で生活臭の薄い空間は「クール」だ。もちろん、佐々木さん宅でも、例えば茶の間は存在し、そこでは家族だけの「ホット」な世界があるのかもしれない。だが少なくとも、他者を迎え入れる応接室や事務所は「クール」そのものだ。

 以前にも触れたが、テレビ視聴率のランキングをみると、相変わらず「笑点」や「サザエさん」といった長寿番組が上位にある。どちらも、冬はコタツで、夏は一台の扇風機を回しながら、家族そろって観ていた番組だ。まさしく「ホット」な空間が家全体を占めていた時代の人気番組が、未だに高い視聴率を誇っている。

 具体的なデータは持ち合わせていないが、テレビ視聴者の主流は中高年に移りつつあるのだろう。年齢が高くなると「不変」を求める傾向が強まる。昔のままに続く「笑点」や「サザエさん」を観てほっとするのだ。58歳の私も、テレビはほとんど観ないが「不変」に癒される経験はたびたびある。

 若い世代がどこに向かうのか。いまのところ解答は見いだせない。核家族化とインターネット、携帯電話の普及により、家庭が「クール」化しているのは間違いない。だが一方で、そんな環境に耐えきれず「ホット」な空間を求めることだって考えられる。いずれにしても、一旦、「日本的岩盤」が崩れなければ、その先の展望は見えないのかもしれない。
 佐々木さんインタビューは近々、本誌掲載の予定です。(2010/11/19)

「尖閣ビデオ流失」事件で解明すべきことは、「政府が外交をわからない理由」だ

<北村肇の多角多面6>

「尖閣ビデオ流失」事件は、とりあえず「容疑者」が名乗り出たことで、後は動機の解明に焦点が移りつつある。だが、本当に解明すべきことは、一個人の「犯行」ではなく、別にある。

 ネット上の映像を見たとき最も衝撃を受けたのは、中国漁船の予想外の動きだ。明らかに、タイミングを見計らいながら海上保安庁の巡視船に衝突している。たまたまとか、衝動的にとかではない。何らかの「意図」をもって行動しているように見える。

 その瞬間の海保の対応も、中国漁船の行動がいかに「予想外」だったかをうかがわせている。職員の言葉には、「えっ」「まさか」といった驚きの色が含まれていた。尖閣諸島(鈞魚島)周辺では、中国漁船と海保の巡視船が遭遇することは珍しくなく、大抵は、海保が警告し漁船が帰って行くことで事なきをえていたと言われる。

 なぜ、今回に限って中国漁船は過激な行動に出たのか。真相はわからない。ただ、背景に、中国の国家としての思惑が潜んでいた可能性はある。日本政府がビデオを「封印」したのは、政治的な匂いが濃厚だったからではないのか。

 多くの識者が指摘するように、中国共産党内では、軍部を中心にした外交強硬派が発言力を増しつつある。最近では、台湾・チベット・新彊ウイグル自治区の主権問題同様、南シナ海の海洋権益を「核心的利益」とするほどだ。その流れに乗って、尖閣諸島についても「自国の領土」というキャンペーンを展開したとみられる。

 日本側はこうした事態を背景にした事件に対し、次のように考えたのではないか。
(1)これ以上、外交強硬派に力をつけさせるのは得策ではない。ビデオ公開は、かえって同派の「反日」運動をあおることになる危険性がある。
(2)胡錦涛主席が外交強硬派への対応に悩んでいる現状では、ビデオは外交カードに使える。

 もしそうならば、船長を直ちに強制送還すべきだった。拘束が長引けば、強硬派の思う壺だからだ。送還しておいてビデオを「人質」にしたほうが効果的である。そうした外交が正しいかどうかは別にして、なぜ日本政府がこれほど「単純なドジ」を踏んだのかがわからない。海保が暴走したのか、司令塔がいないのか、前原誠司外相のパフォーマンスか。いずれにしても、情報漏洩の罰則強化などを持ち出すヒマがあるなら、内閣で「外交とは何か」の勉強会でも開いたほうがいいのでは。(2010/11/12)

11月12日号特集〈佐藤優責任編集 沖縄と差別〉

11月12日号の表紙

11月12日号の表紙

日本にとって幕藩体制の異国であった琉球王国の伝統を継承する沖縄の内在的論理を解明する。普天間問題、尖閣問題を解く鍵は、日本の国家体制に組み込まれた、目に見えにくい構造的沖縄差別を解明することにある。(佐藤優)

 

 11月12日号の特集は「佐藤優責任編集 沖縄と差別」です。上の文章は、この特集を組むにあたっての、佐藤優さんの問題意識です。編集委員以外の方にお願いする「責任編集」は、森達也さん以来2人目となりました。
 
 11月28日投開票の沖縄県知事選挙は、極めて重要な意味を持っています。それは沖縄にとってだけでなく、日本の将来にとっても及ぼす影響は大きい。しかし、残念ながら多くの人々にそのことは理解されていません。

 この特集では、現在の激しい選挙戦からは距離を置き、沖縄が置かれている本質を取り上げています。

 主な内容は下記の通りです。ぜひお手にとって下さい。

(1)沖縄と差別    佐藤優

(2)沖縄の声に耳を澄ます
・いまさらの琉球処分     大城立裕(作家)
・沖縄保守の県外移設論  國場幸之助(自民党沖縄県1区選挙区支部長)
・差別する側とされる側の「真剣度の差」 渡瀬夏彦(ノンフィクションライター)
・民主党本部は学んでほしい 瑞慶覧長敏(民主党衆議院議員=沖縄4区)

(3)「沖縄人宣言」のすすめ(座談会)
              糸数慶子×佐高信×佐藤優

(4)佐藤優が薦める16冊――「沖縄の心」にふれ民族を考える

(5)佐藤優書評  『久米島の戦争』(なんよう文庫)

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金曜俳句への投句一覧(10月末締切、兼題「夜寒」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』11月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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金曜俳句への投句一覧(10月末締切、兼題「赤い羽根」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

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秋の夜長に考えた、冬虫夏草、ドクダミ、そしてCOP10、TTP

<北村肇の多角多面5>

 中国の知人から冬虫夏草をもらったので、梅酒よろしく、安いブランデーにつけて、毎日、チビチビと飲んでいる。夏の終わりに、ひどい湿疹が耳の周りにできたときは、ドクダミの汁を塗ってみた。ノドが弱く、以前は市販のうがい薬に頼っていたが、いまはマヌカハニーをなめている。ニュージーランドでしかとれない薬効性のある蜂蜜だ。こう書いてくると、西洋医学を全否定しているようだが、そんなことはない。実際、湿疹については結局、皮膚科の医師に薬剤を処方してもらった。小学生のころ結核にかかり、かなり強い抗生物質を服用することにより、命拾いした経験もある。ただ、出来る限り、自然の中で自然とともに健やかな体を維持したいと願っているのだ。

 その根底にあるのは、「宇宙は完結している」という私なりの発想である。同様に地球も一つの完結した世界。ならば、そこで生まれた「負」は、もともとそこに存在している「正」により解消できるはず。病を治癒する「何か」も自然の中にあり、化学的な生成物に頼らざるをえないのは、残念ながら、まだそのすべてを発見できていないからではないのか、と思ったりする。

「科学の進歩」というと、何か新しい化学的物質の発見やら、その機序の解明といったことが頭に浮かぶ。それはそれで重要である。だが、どこかに微妙な違和感が残る。生命と宇宙、生命と地球の一体感が後景に追いやられている気がするからだ。最も重要なことが、「迷信」「非科学的」の一言で排除されてしまうのはよろしくない。もっとも、百害あって一利なしのインチキオカルトがブームだったりするので、その悪影響もあるのだろう。

 話題は少し飛ぶが、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が名古屋市で開かれた。国連会議ではお決まりの「先進国対途上国バトル」が繰り広げられたあげく、玉虫色の決着でシャンシャンとなった。政府内では「環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TTP)」を巡って喧しい議論が戦わされている。農水省を中心に「日本の農業が崩壊し、自給率はさらに下がる」という反対論が出ている。いずれも根底には「自然を守る」という前提があるはずだが、実際には、政治家、官僚、経済界が自分たちの利益追求を目指して拳を振り上げているようにしか見えない。

 冬虫夏草はもちろんのこと、ドクダミだって、都心ではなかなか見つけられない。環境が破壊されていく現状で、「自然の中で自然とともに健やかな体を維持する」のは夢見事になりつつあるのかと慨嘆してしまう。秋の夜長、人間にとって本当に大切なものとは何か。単純だが、いまいちど、そのことに思いをめぐらせてみたい。(2010/11/5)