兼題「ゼリー」__金曜俳句への投句一覧
(5月30日号掲載=4月30日締切)
2025年5月25日3:40PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
果汁をゼラチンで冷やし固めたゼリーは、夏らしいお菓子ですよね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年5月30日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【ゼリー】
プレートに四種のゼリー匙添えて
やさしくて雲のやうなるゼリーかな
スプーンの反るままゼリー切られをり
介護ノート一行終えてゼリー食ぶ
病む夜はのど愛撫せしゼリーかな
引っ越しをカップゼリーで乾杯す
卓のゼリー地球の裏を飛ぶ砲弾
原色のゼリーサイゴン在りし日の
揺るる心へ揺るるゼリーの一口目
ワインゼリーふるふるとして恋のやう
海獣は喉を渇かす水ゼリー
夕暮れに溶けさうな頬ゼリーかな
舌の先転がすゼリー今何処
点心はゼリー円卓よく回る
銀座から銀座へゼリー詰め合はせ
いさかひに乗るゼリー崩す匙音
医師の許可得て食べさせるゼリーかな
子と妻の内緒の話苺ゼリー
ぷるるんと動いていった泣き声とも
サックスの音に震えたるゼリーかな
プルリンとゼリーを掬いチュルチュルリ
辛党に虫唾が走るぜりーかな
脳みその硬さのゼリー掬ひけり
蝉とりのポッケにゼリー膝の傷
腰振って陽気なゼリー皿へジャンプ
病窓にかざして海色のゼリー
あのひとの唇思ふ桃ゼリー
掬われしゼリーの歯形くづれをり
ゼリー食べ歯の裏側のざらつきぬ
一匙のゼリーを受ける小さき口
缶入りの煌めくゼリー都会味
痛む歯につるりゼリーの喉を過ぎ
木の匙の上で震へるゼリーかな
料理下手もたやすく作るゼリーかな。
口中に珈琲ゼリーもてあそび
入院の楽しみひとつゼリー食
木洩れ日のふたりはゼリー涼しさう
灯(ひとも)せばゼリー妖しく輝けり
冷蔵庫奥のカップゼリー独り占め
カウンターの長い髪の娘ゼリー食ぶ
ゼリーとは抵抗なき愛のかたち
コーヒーゼリー青信号をガラス越し
ゼリー越し色目に歪む母の影
ゼリー買ふ祖母に百円札貰ひ
まだ少しゼリーは舌に揺れている
スプーンのゼリーに透けて見える嘘
ゼリーならつるんと喉へ痛くない
雨ふるよ揺るるゼリーに匙挿せば
出来立てのゼリーでろんと皿に立つ
安つぽいゼリーの色の安つぽさ
星の香の残りし明方のゼリー
ミニゼリー給食彩る青と赤
ぷるぷるの心も揺らすゼリーかな
高熱が運ぶ手作り蜜柑ゼリー
透き通るゼリーを崩す銀の匙
妻腰痛ゼリーは腰に響かない
この箱は開けていいよねゼリーでしょ
透明のゼリーの中に孫の声
ゼリーゆれ映るスプンもやはらかき
気付いたら独りで流すゼリーと涙
初恋の歌をハミングゼリー食ぶ
取り出したカップゼリーを頬に当て
ゼリー揺れ科学者ふっと沈黙す
ひとり居のおやつはゼリー私好みの
桃は先に食すゼリーの傾き
思ひ消えゼリーの街を漂ひぬ
角欠けて残されているゼリーかな
江戸切子鋭角の縁ゼリー容れ
空き瓶の器に透ける水ゼリー
スーパーにマレーシア製のゼリーか
偲ぶ席ゼリーは美し二色かな
ゼリー食ぶ風に吹かれて一人旅
美しい綺麗な汽車のゼリータイム
ゼリーには言わずも知れた夢がある
晩餐の終わりをゼリー高層階
真つ青なゼリー眺めてゐるばかり
苺ゼリー匂ひと色に騙されて
太陽の匂いもマンゴーゼリーの黄
チョコの箱ゼリーが食べたくなれりけり
あざとさのピンクのゼリー桃の味
ロボツトの運ぶゼリーと震度計
欲しいのは結論ゼリー透けてゐる
匙のゼリー誕生石と同じ碧
喪失がよぎり震えているゼリー
光さえ救えぬゼリー涙堕つ
散歩道ゼリー片手にスキップし
遠山の白さに映ゆるゼリーかな
長話固いゼリーは水になり
古い木の卓にあかるきゼリーかな
舌先のゼリーに甘き記憶かな
現代のゼリーのやうな道を往く
農高生詩作のゼリー召し上がれ
告げられし別れの味のレモンゼリー
ひとさじのゼリー世界は乱反射
老い惚るる母へ小匙のぜりーかな
ゼリーなど食ってる場合か戦争だ
肉汁のゼリーがつなぐ命かな
目を開けて拒んでみてよゼリー食
匙入るる場所に迷へるゼリーかな
ときをりは悔悟のゼリーかと思ふ
寛解の日やぷるぷるのゼリー食む
匙に乗る黒曜石や珈琲ゼリー
ゼリーかな眉を顰めて老いにけり
良薬をゼリーで包み飲みやすく
時差ぼけの機上のゼリー歯に滲みる
ゼリー食う遠い記憶も混ぜながら
県外に出たしゼリーの志
もう甥は蒟蒻ゼリー食える歳
ゼリー喰う少女の舌は赤すぎて
唇に桃のゼリーのくづれたる
大叔母のトパーズ色のゼリーかな
根津小路愛玉子(オーギョーチィ)で姦しく
宝石の果実嵌めたるゼリー食む
震えたるゼリー器の玻璃に罅
涙目でゼリーを作る午前2時
晩年にゼリー啜らぬ親父いて
七色のゼリーは君の嘘の如
一匙で形壊れる子のゼリー
無遠慮な匙を逃るるゼリーかな
イッタラのグラス固まりゆくゼリー
ごほうびは老舗のゼリーと約束す
ゼリー盛る切り子硝子器透く光
透き通るゼリー掬ふや銀の匙
宝石の色やゼリーの座すガラス
気取つてもお里の知れるワインゼリー
フルフルと運ばれ来たる桃ゼリー
サカサマに落つるゼリーの鮮やかさ
夜雨すぎて木匙に残るゼリーの香
新しく島生まれけりゼリー食ふ
皺の手にゼリーの張りの押し返す
懐紙に透ける流水型のゼリー菓子
紙に書きゼリーの事は触れず置く
家に着きゼリーのプルン指で押し
母訪ふて好きなゼリーを選ばせる
街角や二人のゼリー香り立つ
紅ゼリーサロメのごとくガブリ飲む
談論の後のコーヒーゼリーかな
ガラス器のゼリーの揺れてゐる微震
店員としていくたびもゼリー運ぶ
出会い系検索食べかけのゼリー
亡き父母の遺影が見ているみかんゼリー
三色のゼリー混ぜれば国旗めく
老が戀アーンと放下ゼリーかな
ガラス器にゼリー微笑み光りけり
冷蔵庫指定の位置にゼリーあり
紙匙のふやける真夜のゼリーかな
銀匙のひかりを崩すゼリーかな
一事終へ一人深夜の桃ゼリー
丸盆に揺るるゼリーと薬瓶
絶世の美女とゼリーと労働者
ゼリー飲む父に鯨を重ねてる
旨そうなプリンと夫ゼリー指し
旅宿のコーヒーゼリー残り二個
白日のぶだうゼリーのなかに闇
雨あがるまだ固まらぬゼリーかな
しののめのももいろゼリーのきよらかな
病床のゼリーは風を湛えけり
文旦のゼリー冷やして匙で押し
昼なかにワインゼリーや独りの居
会ふ人を待つ間に掬ふゼリーかな
皿の上ゼリーが震えるほどの蝉
冷蔵庫開けるたびたびゼリー見る
空色のゼリー掻き分け平泳ぎ
あの頃の歌をハミングゼリーかな
ゼリー飲み君の寝顔と厚底シューズ
指ふるえゼリーふるえる匙の先
愚図る子に星のかけらのゼリーかな
夢見るはフルーツゼリーワンホール
ゼリー食む波に崩れし砂の城
みどり子のチョンチョン頬にゼリー入る
口喧嘩終えたる子らやゼリー食む
ゼリー食べ夜空に雲が熟睡し
ゼリーすら喉につかえて一人咳き
原色の蒟蒻ゼリーつまむ昼
唇に触れるゼリーの果敢無さよ
この色が好き迷はずにゼリー食ぶ
二次会の珈琲ゼリー恋話
題詠で初めて作るコーヒーゼリー
サービスの珈琲ゼリー濃く香り
純潔をゼリーの中に閉じこめる
清冽な瀬音のゼリー上高地
パーフェクト思考に押されゼリーかな
ゼリー食べつつ就職の話など
理系女子作るゼリーの黄金比
高級なゼリーそれなりのスプーン
ゼリー越しに「おとな」だけが笑ってる
震へつつ喉を落ちゆくゼリーかな
透明なゼリーの中の果肉かな
現実をぼかしたい時ゼリー食む
ゼリー食べ文庫忍ばせ遍路かな
介護とは三食ゼリー口運ぶ
コーダ終わる重低音にゼリー揺れ
汗ばみてゼリーひと匙風となる
果物のゼリー提げる手瑞々し
ゼリー揺れ止めるように出すスプン
夕凪やけしきゼリーのあふさかな
型を出て背の低くなるゼリーかな
見合なれした妻ゼリーぜんぶ食ぶ
高原の風の揺らせしゼリー皿
木漏れ日のやうなゼリーを掬ひけり
シリコンの型に溢れる黄のゼリー
生温きゼリーもゼリー八十路越ゆ
葡萄のゼリーは当然葡萄色
コーヒーゼリー無口な夫のリクエスト
ゆつくりと食ぶるゼリーや外は雨
蓋の絵の美味しそうなるゼリーかな
透明なゼリーを泳ぐ悪い夢
憂き世にはゼリーを食めり親しき夜
ゼリーとは柔らかさだけではないらしい
いつもの席いつものやうにゼリー食ぶ
潮騒やゼリーが滑る皿のうへ
葬儀後の弁当ゼリー目立ちたる
ゼリーから果実掘り出す子の手かな
こたつ上ゼリー飲み干し墓前迎い
店先のゼリー選ぶ女子会用
蠢ける舌にゼリーのひと匙を
光る物集めの中のゼリーかな
赤き舌出してゼリーを苛めり
盗賊Bの役の子の食ふゼリー
忙中やゼリーつくりて一服す
唇へゼリーぷるりと笑ひけり
ゼリーの固まる時間ゆるりと過ぐ
ゼリーなど喉に詰まれば愛になる
減る順の今日は違って缶ゼリー
スプーン射し剽軽顔のゼリーかな
ゆらゆらとゼリー気分や気まま旅
前菜の魚介を透かせゼリー寄せ
ゼリー食べ星が満開癒される
骨を待つ小一時間のゼリーかな
嘘をつくゼリーつつきつ崩しつつ