兼題「花氷」__金曜俳句への投句一覧
(8月28日号掲載=7月31日締切)
2026年8月7日2:29PM|カテゴリー:堀田季何の金曜俳句|admin
花氷とは、大きな氷柱のなかに草花などを閉じ込めたもの。見た目にも涼しげですね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2026年8月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、堀田季何さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【花氷】
微笑みは着慣れし鎧花氷
年金の今日は支給日花氷
裏表なぞる指先花氷
花氷風に吹かれて笑い声
花氷ラーゲリの誰を展示する
花氷人肌恋しデジタル世
シスターの髪は亜麻色花氷
花氷ひかりは檻を知らざりき
花氷肌の火照りは嘘つきや
花氷溶けて苦悶のキリスト像
花氷からだといふを忘れ去る
花氷籠る止るも生くるすべ
花氷生きてたことも無しにする
編集長もう酔うてをり花氷
氷彫師のかたちととのへ花氷
着飾りし人の冷淡花氷
温暖化負けじと特大花氷
核家族ただそこに立つ花氷
恋心手帳に秘して花氷
花氷ロビーに気品漂わせ
花氷過れば紅のはみ出しぬ
花氷生花の色のいきいきと
待つひとの所作うつくしき花氷
花氷あれが政策秘書らしい
唇に離型剤の刷毛花氷
千秋楽告げる太鼓や花氷
花氷シャッター街の一斉に
ゲルニカに死児を抱く母花氷
花氷磨きて第二藝術家
花氷ぎんざぎんざとかがよへり
米軍やナフサ不足の花氷
密約は時間にとけて花氷
目手術のレンズに青み花氷
手品師の種も仕掛けも花氷
花氷嫁ぐ娘に水の影
後世に評価を委ね花氷
催しは目論見どおり花氷
花氷車椅子行く野辺送り
囁きを包む銀色花氷
カードキー財布に入れて花氷
花氷母を知らずに母となり
園の白熊にやりたや花氷
花氷音なき音の満ちてをり
花氷やせていくのは御前だけ
花氷呪術師なんだ君はもう
ルーヴルの像の虚ろや花氷
距離を置くこととなりたる花氷
永遠に生きるがための花氷
人よりもハグをしたいと花氷
いっそ花氷にメロンシロップを
能面のやうな女や花氷
花氷部屋ににおひを感じをる
デバートといふ祖母休らふ花氷
あざやかに生命閉ぢ込め花氷
面白ふ狂ひ候へ班女が閨の花氷
花氷夢をすつぽり包み込む
クリスタル・ナハト花氷の破片
洋菓子は煉獄のいろ花氷
誰もゐぬ闇夜のなかに花氷
花氷万有引力閉ぢ込めて
花氷昨日へ戻る術もなく
花氷解くや謝辞こそみじかけれ
背負ふ子の熱き寝息や花氷
宙ぶらりの恋のかたちや花氷
緋の色のよりあざやかに花氷
花氷一面だけが大人びて
味わつて溶けてみるもの花氷
季語として絶滅近き花氷
烏克蘭色のお店の花氷
花街の暖簾に深み花氷
ご自由にお触りどうぞ花氷
花氷産まれし街に嫁ぎけり
鳥辺野や饐えても還る花氷
花氷眠り続ける赤と青
遺体また笑みうかべをり花氷
花氷カメラの外に飢ゑる子ら
血は液体こゝろは気体花氷
剥製の孔雀の如き花氷
花氷よりも果実が良き娘
花氷薔薇の涙の流る夜
瑠璃の酒器溢れんばかり花氷
花氷汗じわじわとたらたらと
マルチエンディングの一つ花氷
ちりぢりに破く手紙や花氷
花氷商店街のどまんなか
美しく花と氷らされて見らる
花氷歪める赤を放ちけり
虚偽答弁花氷なるもの深き
花氷ホテルの午後を遅くする
花氷の羨望風に舞ふブーケ
総会の議事すみやかに花氷
花氷空白の過去玉砕す
悪戯に触るる指先花氷
花氷いつか栄華は果つるもの
仏らの集ひし生家花氷
髪を切る鏡のなかの花氷
花氷緋色の薔薇を閉ぢ込めて
さびしさも封じたりけり花氷
花氷やさしき嘘を貰ひけり
花氷客寄せなりし日の遠く
花氷傾ぎて広場恐怖症
花氷遺品のリボン解けゆく
花氷見向きもせずに傾(かぶ)奇者(きもの)
死んだなら花氷にしてください
昭和時代の培養ポッド花氷
詩歌とは言葉との恋花氷
黄の染みの聖母と目が合ふ花氷
花氷ヒトにあらざるウグイス嬢
花氷気候崩壊封じ込む
花氷閉ぢて静かなまつぼくり
花氷嫌いな母と帝国ホテル
花氷諦めのごと溶けゆけり
勲賜ふ香港不老華(ホンコンフラワー)花氷
花氷ブルーライトが演出し
「触っちゃダメ」花氷に子の手形
たかが水されど水なり花氷
主なき鏡痩せゆく花氷
花氷花と氷の共和国
商店街売れずに溶ける花氷
War on terror花氷より壊れけり
顰蹙を買ふ花氷への愛撫
林立すプラスチックの花氷
花氷古い思い出は融けるもの
花氷ゾーリンゲンの二丁持ち
マリックを真似て手のひら花氷
花氷閉店前の百貨店
白牡丹しばし留めよ花氷
花氷溶くる刹那の匂ひかな
もつとも大事なところを花氷
解くるまでは推定無罪花氷
サザエさん観てより気付く花氷
表現の自由まさしく花氷
もてなしの姿勢疲れし花氷
花氷生殖欄の花くづる
溶けてゆく速度の遅し花氷
花氷記憶を宿す深海魚
乾杯のグラスくれなゐ花氷
ピンヒール脱がぬ矜持や花氷
花氷ひと撫ですとや魚市場
花氷けふ二回目の外見合ひ
造花には造花の美あり花氷
真夜中の垢寄せ付けぬ水中花
花氷黄色の薔薇を閉ぢ込めて
マンモスの哀し咆哮花氷
花嫁の鎖骨を透かせ花氷
花氷とけて地上に美の覚へ
人類は破滅の崖へ花氷
ポスターの目だけ濡れゆく花氷
花氷幾つホテルの重労働
花氷極楽いろの魚のぼる
閉店セール花氷まだ半ば
花氷砕く覚悟のハイヒール
花氷寡黙な人よ栄華なり
花氷北海道の魚氷
どこからも真正面なり花氷
君作る夏の宝石花氷
花氷悩み打ち明けられぬまま
花氷縁なき我にヒエラルキー
花氷国家はいつも主語なるか
今は未だ逢ひたくなくて花氷
花氷溶くるまで都市やさしげに
未生流総本家めく花氷
花氷透かして歪むこの世かな
花氷を前に口紅塗り直す
我が家にもおいて癒される花氷
ハンケチで額を叩く花氷
花氷なかの時間を誰も買ふ
花氷世渡り上手に過ごしけり
花氷資本の夢の芯濡るる
花氷西武デパート懐かしく
美しき罪の拘禁花氷
花氷昔のデパートは混んでいた
デパ地下でたたかってます花氷
花氷昨日は昨日今日は今日
花氷集落ひとつ人知れず
富める者が好きな庶民花氷
花氷赤いマニキュアひと撫です
花氷溶かす熱波のあどけなさ
入口にでんとおかれし花氷
花氷鬼顔人が警備して
花氷割る音で起き上がる猫
AIの手口鮮やか花氷
初恋や鏡のなかの花氷
花氷割れて地震にふれる花
クーリングシェルターきらり花氷
花氷パゴダめきつつ傾きぬ
花氷眺めて涼し喫茶店
エレベーターガールの運ぶ花氷
花氷ドローンがのぞく貴賓室
普段着でいいと言うから花氷
大理石透けて開けり花氷
花氷銀座の夜の蝶舞ひぬ
踊り場の子の花氷嗅いでをり
普段着のお別れ会や花氷
花氷いまやシャネルの売場かな
オーダーを待つ花氷のオゾン臭
花氷死者の名前を冷やしをり
待ち合せせし花氷泣きくづる
出入口付近コスメと花氷
花氷最後に映える我もまた
美と涼と贅沢尽くす花氷
一日の疲れ出ている花氷
知らぬ子と肩を並べて花氷
四歳の目を見開かす花氷
受付の名刺パー券花氷
花氷見知らぬ街にひとりかな
花氷缶コーヒーは黄金色
花氷凹まむとして妻の病む
花氷付近に父の溶けにけり
花氷銀座四丁目の逢ひ引きに
花氷が去つたのちの土の匂ひ
失ひし乳房を探す花氷
花氷新真打の女性かな
チーママのチャイナドレスや花氷
花氷微睡む内にやせ細り
花氷置いて光りぬ供物台
精一杯開くはなびら花氷
花氷間等しきアーケード
社員に舌打たれるバイト花氷
不確かなダリの時計や花氷
花氷いくさの嘘も溶かしけり
料亭の花氷溶け午前二時
暑すぎて歌壇から逃げて花氷
待つ人を写せしやうな花氷
花氷別れ話の切り口を
昨日今日明日転生花氷
婦人会見学終へて花氷
触れられぬままとけてゆく花氷
花氷触れてくつつく指の腹
花氷夜のしじまを思ひやる
働いて働いて睡眠ゼロの花氷
綿埃降る長細い花氷
花氷一夜の名前つけられて
花氷ワルツを歌う懐かしさ
花氷閉じ込められし悲の器
クーラーにすまし顔する花氷
花氷馬頭星雲ガスと塵
ことさらに色の際立つ花氷
花氷手つなぎデート風任せ
魍魎の依代たるや花氷
花氷青し叙勲のお披露目会
また一人巨星の帰天花氷
恋もまた古りゆくものか花氷
レクイエムひたひた進む花氷
酔客の息にて曇る花氷
花氷偉人の伝記が読み易し
献身華深き眠りや花氷
花氷空虚に笑みし国家あり
名刺探すそぶりしておく花氷
花氷とけてながれて「のー」へ「のー」へ
デパートの綺麗な魔法花氷
告白は届きましたか花氷
花氷溶けゆく仲人の頬へ
一瞬の美を静止さす花氷
てろてろと時間流るる花氷
よりによつて待合せ場所花氷
花氷そろそろ始まる夜会かな
雫一雫耐ふる花氷
花氷溶けて店主の声低し
待ち人は来ぬ花氷溶けてなほ
花氷わが生殖を問ふ議場
花氷さはれないなら溶けちまえ
花氷透ける棺の解け行けり
花氷とけし氷としおれ花
幾人の男騙せし花氷
よろこびを閉ぢこめキラリ花氷
花氷八頭身の美女のごと
戦前はみな貧しかった花氷
会長も社長も帰り花氷
不景気や花氷消ゆアーケード
花氷角失へばだらしなく
おしろいの匂う楽屋や花氷
花氷ゴッホの空の青を恋う
包丁を置いて青青花氷
残酷かあはれとみしか花氷
花氷美しさとは止まるもの
赤い花白い花共花氷
星雲の犇めいてゐる花氷
花氷裡へ浮きて蟻の行
花氷ラストダンスのワルツかな
再会の刻近づきぬ花氷
花氷肉食べる時歯は牙に
花氷ひときわ目立つ透明度
花氷老舗デパート大階段
受粉することもかなはず花氷
団体の渦に痩せをり花氷
花氷白状の人道叩く
花氷母と特養二周して
花氷一気に暑くなる地球
花氷溶けて閉店ガラガラと
歌舞伎座のにぎはひ花氷しとど
花と水束ねたりけり花氷
満員のストリップ小屋花氷
目で涼み目を楽します花氷
開きては眠ることなき花氷
花氷夕日の色をこぼしけり
背景に花氷モガだった祖母
花氷や氷山とける温暖化
自由研究ハーブの香る花氷
しあはせの顔のくづれし花氷
花氷見聞言を閉じ込める
十字架が歪む花氷の奥に
なほ続く老舗デパート花氷
泊り客ふと立ち止まる花氷
花氷首の長きも短きも
花氷闘牛の眼(まなこ)散る火花
【不明】
縋るものなくて地を這う牽牛花
背泳ぎや空に浮かぶは魂か
捨てられた民のように背浮きする
目洗いの蛇口捻れば夏が出る
