兼題「初冬」__金曜俳句への投句一覧
(11月28日号掲載=10月31日締切)
2025年11月17日10:15PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
初冬は、冬の初めです。まだ晩秋の感じも残っていますが、引き締まった感じもしますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年11月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【初冬】
初冬や鸚鵡は海を読み上げる
初冬の松深みどり離宮道
冬初め古都の回廊黒光り
初冬の行きどころなき紫煙かな
足の裏特に左に初冬かな
薄目して目覚まし止める初冬かな
初冬や第一ボタン留めにける
父親のフロックコート初冬かな
初冬や尾瀬茫々(ぼうぼう)と墨絵めく
初冬やカップの縁のどれも欠け
初冬なりより本物の恋とせし
駅二から巡る朝市冬始め
白杖の音にリズムや冬はじめ
初冬のパンタグラフの物憂げな
初冬や山々衣替え支度(はつふゆややまやまころもがえしたく)
初冬の団地に子供見当たらず
初冬に都心のビルのばか高き
はつふゆの妻には妻の自己主張
初冬の日差しソファーに伸びて来し
初冬のはじめての駅人を訪う
初冬や足早に過ぎる商店街
初冬の五箇山が好き和紙を漉く
ピザ窯の熾かぐわしき初冬かな
初冬をネルドリップの落ちる音
初冬なる上半身のみもこもこで
小児科に老人の待つ初冬かな
初冬や喪中葉書の五六枚
そこそこの覚悟の決まる冬はじめ
せかせかと初冬の街を過ぎゆけり
じやんけんはいつも負け組冬はじめ
初冬や白襷待つ中継地
初冬の海の広さもちぢこまる
地震の痕消えず初冬の能登半島
あの声をさがす初冬の駅ホーム
初冬のひかりに薬こぼしけり
初冬の音かもしれぬ傘に雨
はつふゆの外苑前を真つ直ぐ来
初冬の湯気立ちのぼる湖面かな
福耳の耳朶の冷たし冬はじめ
熊避けの鈴をベルトへ冬初め
鬣(たてがみ)を擦り合う馬の初冬かな
腹回り初冬に入り後悔す
冬初め郵便局まで五〇〇歩で行く
初冬めく昏れてゆく空鉛色
初冬の転石を割る音ひびく
初冬の移ろひ易き日差しかな
口笛の尖りて高くなる初冬
表札をしづかに外す冬はじめ
初冬の日哲学よりも絵を愛す
朝夕が半歩先んず冬初め
半袖のジョガーの混じる初冬かな
建物へすぐ入ろうとする初冬
初冬や刺身包丁研ぎに出す
初冬や流行遅れのセーター着て
冬初め齲歯見つかってガァーゴォーゴ
石垣を伝ふ水音冬はじめ
ビストロの余韻嫋嫋初冬の灯
初冬や少し青みの月の蕊
ほろ酔いのごろんと夜具へ冬初め
初冬の紅茶のカップ掌に包む
湯畑を耕す人の冬はじめ
宿場町江戸よみがへる初冬の陽
初冬や行く人々の忙しなさ
ユニクロにふらんねる買ふ冬初め
初冬やうすみどりなる食前酒
初冬の大樽干され京の朝
初冬ですと告げることなしに来たる
先づ以て手水が初冬連れて来る
胡麻油香るタンメン冬始め
初冬のみづの流れを疑はず
日光の山みな凛と冬はじめ
初冬のピアノ稽古のカンパネラ
初冬や日光彫の鏡買ふ
初冬なり山野はいよよ彫り深く
初冬を漕ぎぬ吾は海賊のすゑ
初冬の朝の麺麭屋の香り立つ
雑木林明るんでゆく初冬かな
初冬や旅の終りにパリのパブ
初冬は水のボディーにやさしかり
初冬の息かけて拭く眼鏡かな
調剤薬局混み合ってくる冬はじめ
初冬や手入れ入念釣道具
初冬の指健やかに紙切り師
鳩の羽根降る初冬の舟溜り
初冬や富士峰の白変わりゆく
初冬や雨に涙をひた隠す
襟立てて急ぎ足なる冬初め
初冬や貨物列車の軋む音
冬初めカフェオレボウル買ひに行こ
初冬や鉛の色の日本海
今朝ひとえ初冬に装う富士の峰 1031
初冬の目が自画像の目と交じる
化石ハンマーの細き柄冬はじめ
初冬や竹林の葉擦れ尖りゆく
初冬や大漁の網かろきこと
初冬や妻と行動しばし別
爪先のわづかな痛み冬初め
初冬や船尾に?つらなれり
初冬やカフカ返さず消えし人
初冬のバッハの無伴奏ソナタ
塩茹での葉物の青き冬はじめ
初冬のとほきより観る移情閣
平積みの新刊匂ふ冬はじめ
初冬の指を温めて弾くバッハ
初冬や容易に痣を包みこみ
蹴りパンチ体温め冬はじめ
要らぬかもしれぬ初冬のさがしもの
初冬を弱アルカリ性の恋人来
初冬の市場に集ふ伊予ことば
踵より初冬始まる風呂上がり
初冬の石鎚山の峻厳よ
初冬や水師擁する鞆幕府
初冬を売るふるさとの銀座かな
初冬や南部鉄器の黒光り
はつふゆは全て絵画的で有れ
初冬に署名せし文字震へたる
初冬や遠野訛の路線バス
初冬を探す遠眼鏡が重い
初冬の便座カバーに穴ひとつ
初冬の一息鼻孔を直進す
初冬の指揮に吐息をゆだねけり
回転ドアゆつくり動く冬はじめ
初冬の市あたたかき飛騨ことば
初冬の堂に足音澄み渡る
木の匙のもう出来上がる冬初め
初冬や珈琲二杯で目を覚ます
初冬の湖畔バイクの爆走音
初冬のひかり集めて浦戸湾
初冬や触るる小物のやわらかき
はつふゆの朝の鏡の硬さかな
初冬の徳利に乗る薄埃
初冬や紙風船は置いたまま
初冬の湯畑白息吐くごとく
街初冬ため息並ぶスマホ首
初冬の日差し集むる朱の鳥居
初冬や手帳選びの伊東屋へ
手水舎やうつすら肌を切る初冬
はつ冬のまなこ湿りて旅に出る
初冬や衣擦れ残し巫女過ぎぬ
初冬の鋭き音立つる鼓かな
コーヒーの粉膨らませ冬はじめ
遙かみる木と木のあひだ冬はじめ
