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兼題「河童忌」__金曜俳句への投句一覧
(6月27日号掲載=5月31日締切)

「河童忌」は、芥川龍之介の忌日(7月24日)を指す季語です。
芥川の代表作である短編小説「河童」にちなんで「河童忌」と呼ばれています。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年6月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【河童忌】
河童忌や活字小さき文庫本
河童忌や金鶴泳はガス自殺
河童忌や髪かきあげる私生活
河童忌の雨や畳に雑魚寝して
河童忌や大本営の夢の跡
河童忌やテープに直す文庫本
錠剤にいちいち名前ある餓鬼忌
河童忌やふたり溺れた夢のなか
トーストの朝餉河童忌大江読み
河童忌の雨や胡瓜の色をして
高僧に喝の高音の餓鬼忌かな
犍陀多の犇く国や河童の忌
漠然とした不安抱く河童忌に
河童忌や倅の小言聞き流し
河童忌やパソコンで書く文学評
薄紙にて覆ふ一冊龍之介忌
河童忌や田端の家に糸車
河童忌や掛け軸に無き河童の絵
河童忌やラベルの読めぬ薬瓶
河童忌の道頓堀に浮かぶ塵
人は皆カンダタに似て餓鬼忌かな
河童忌の門をくぐれば蚯蚓の香
河童忌や書けぬ悲哀の白き雲
河童忌や手真似忘れぬ歯車の
蚊遣り火の書斎に匂ふ餓鬼忌かな
河童忌の眠らぬ街の溝鼠
河童忌の白墨掠れゆく歩道
花ござの曼荼羅紋様河童の忌
河童忌や田にくつきりと映る雲
河童忌や夢に棲んでは戻れない
河童忌や書庫の小闇の吊ランプ
河童忌や合羽着て居る子等を見る
掃除機に巻きつく糸や河童忌に
河童忌や服を剥ぎ取る羅生門
河童忌や夕闇のなか帰る道
めらめらの太陽嫌ひ餓鬼忌かな
河童忌や酒豪の父を憶いつ酌む
河童忌や橋のたもとに眇あり
melancholyに折り目ある辞書河童の忌
河童忌や深き井戸より闇の聲
河童忌やつむじとうとう薄くなり
河童忌を知る立ち読みの昼休み
薄切りのレモン浮かべて河童忌の
健三郎大江河童忌雨が降る
色褪せたポスターに名前我鬼忌かな
水割りのカランと鳴りて河童の忌
部屋の隅妙に気になる河童忌に
河童忌や寺の厠の下駄響く
河童忌や静かにヒロシマのオルフェ
河童忌の図書館を出るベビーカー
河童忌や薬噴霧す鼻づまり
河童忌やぽちゃんと水の音しじま
河童忌やいつもの薬いつも通り
河童忌や門に小石を置く男
河童忌や希望は蜘蛛の糸の如
河童忌や水の少なき用水路
河童忌に水打つて音たしかむる
河童忌や肩身の狭き喫煙者
河童忌や途方に暮れる研修医
万力をゆつくり締める我鬼忌かな
河童忌や川中島に孤影あり
河童忌の遠くへ投げる玉子浮き
河童忌や激しき雨の傘の下
薄暗き坂道続く餓鬼忌かな
河童忌にことさら黒し黒き靴
河童忌や馬齢を重ね本の山
鼻つまむ我鬼忌の二人羽織かな
河童忌やマリオネットの赤き靴
トロッコの好きな父あり河童忌や
駅前にからくり時計河童の忌
河童忌や流れ緩急四万十川
河童忌やベッドの母に粥掬う
河童忌や儚く切るる蜘蛛の糸
なんとなくぬる湯につかる我鬼忌かな
河童忌の手作りジャムが水っぽい
河童忌の十七音の虚構かな
河童忌や軽く労る日となりて
河童忌や薄目を開けて朗読会
河童忌や中年よりの長きこと
古書市に「改造」捜る河童の忌
書を並べ河童忌気づく本屋なり
体調不良を煙草で癒す河童の忌
河童忌や青天どこか湿りをり
河童忌や足裏の皮に気を遣い
河童忌や東京にまだ知らぬ町
河童忌や錠剤にある小さき文字
河童忌の蜘蛛を逃してリノリウム
河童忌に甘党入りを決意して
河童忌や栞代わりのパスカード
河童の野面に伏せる句帳かな
文庫派の龍之介読む河童の忌
河童忌の眉厳かに引きにけり
河童忌や水面涼しき吾妻橋
河童忌のお気の済むまま手を洗ふ
河童忌の空へと沈む水の音
河童忌の影ふかくして上高地
河童忌の夫だけ逃げる地震かな
河童忌の閃輝暗点くもり空
河童忌や地球に戦禍ふえつづき
河童忌の深さで測る愛の嘘
河童忌の寝ぐせを嗤ふ鴉かな
河童忌や飛び込む音の後しじま
文壇を泳ぐ河童忌力無く
河童忌や仰げば喜雨の河童橋
河童忌や歪んで映る立鏡
河童忌や遺稿遺して李恢成(イフェソン)死す
河童忌や今年は雨が少ないぞ
河童忌にペンキぬりたて甲羅かな
河童忌や穂高にきざすものの影
河童忌や国滅ぶ音の幽かなる
河童忌や笊を洗ひて縁に干す
河童忌やうつそり歩く田端かな
雨の中自転車を漕ぐ母我鬼忌
河童忌の関守石の右の露地
河童忌や鬼棲む里に押し車
羅生門いまも問われる河童忌や
履歴書に珈琲こぼす餓鬼忌かな
河童忌の漠然とした不安かな
河童忌の闇病んでゆく歩道橋
河童忌の職員室に投句箱
部屋の隅薬一粒河童忌に
河童忌や灯る湯の町夕小風
砂の上に自由と書きし我鬼忌かな
河童忌の冷凍ごはん一人分
河童忌や鼻大き人行き過ぎね
河童忌や遠くになりぬ下駄の音
河童忌のペンのくるりと落ちにけり
河童忌の空蝉風に転びたり
河童忌ヤ俺ナンカ生キテテ御免
餓鬼忌いま愁いあまたや妻となり
ウォーキングして河童忌の町中華
河童忌の稀覯本はや陽の奥へ
標本に虫ピンを刺す我鬼忌かな
河童忌や三途の川の斜向かい
河童忌の開廷を待つ長き列
幻影に囚われし父河童忌よ
河童忌のノート洋墨青が好き
いつまでも金星白し餓鬼忌かな
河童忌やどこで酔ふかを決めかねて
河童忌やスマホの時代を思いしか
河童忌に心ゆきけり文士村
河童忌や有象無象の立ち騒ぎ
河童忌のテレビの鳴らすほのぼのさ
河童忌の異人の多き明石町
河童忌や文は書けずに胡瓜揉み
河童忌の申し訳なき健やかさ
河童忌に切なさ携える鴉
金盥雨漏れ激し餓鬼忌かな
河童忌や道の真ん中歩きをり
河童忌を居眠りしたる洋紙店
河童忌やかうもり傘を振り回す
河童忌のすこし余分にわれ思ふ
河童忌の傍に大きな野菜置かれ
鍔広の夏帽かぶる我鬼忌かな
河童忌のお悔やみ欄に目を落とす
河童忌やおもむろに開く空の窓
河童忌や水の中だけ愛された
河童忌やペン胝小さくなる月日
河童忌や風立ち返る雨あがる
河童忌や目を寄せて見る我の鼻
河童忌の河童サンドに胡瓜かな
病弱に博識勝る我鬼忌かな
河童忌や睡眠薬の効かぬ夜も
河童忌やただ敷島を燻らする
タロットは水に難あり餓鬼忌かな
河童忌や清冽なるは梓川
河童忌や同窓会誌も知らぬよう