きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「葱坊主」__金曜俳句への投句一覧
(3月27日号掲載=2月29日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

自宅のプランターの葱を放置していたら、大きな葱坊主ができました。春も盛りですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年3月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【葱坊主】
真夜中の「おどりゃあ」の声葱坊主
饒舌に隠れた疑惑葱坊主
すやすやと眠る子背負ひ葱坊主
葱坊主名さえ知らない子が怯え
寛解の土曜の庭に葱坊主
葱法主明るき雨の降り注ぐ
老境といへばさうかも葱坊主
葱坊主ジョン・ボンジョビに憧れて
葱坊主のどかな景をつくりけり
種落とし盛りを過ぎし葱の花
徒らに首を断たれて葱坊主
葱坊主鳥を招くも鳥は来ず
鉄塔の影濃き辺り葱坊主
葱坊主背筋伸ばして平行線
葱買うをすっかり忘れ葱坊主
凪の海籠いっぱいの葱坊主
峠への道は坂道葱坊主
兄さんとおなじ渾名か葱坊主
古里は影絵のなかや葱坊主
蜜の為葱坊主にも止まるのか
葱坊主古き教科書すぐ捨てて
葱坊主うかうか過ごし早や日暮れ
首もたげ破れ衣の葱坊主
愚痴聞くも記憶せぬ癖葱坊主
大福をならべたやうな葱坊主
揺りかごのなかは空つぽ葱坊主
せせらぎのかくも恐ろし葱坊主
気まぐれな風に転がる葱坊主
改革が不可避に一畝葱坊主
故郷の整列白く葱坊主
打順来ぬ八番ライト葱坊主
浄土への旅葱坊主葱坊主
野良仕事話し相手はネギ坊主
葱坊主包丁持つた刺客来る
役立たぬ葱の擬宝珠となりにけり
故障者がレッカーを待つ葱坊主
風吹かば後に続けや葱坊主
葱坊主筑波嶺遠くなりにけり
火星との交信アンテナ葱坊主
葱坊主袋の中の花の数
葱坊主淋しいときは呼びなさい
三角に畝立ち列ぶ葱坊主
二人きりの気怠きひと日葱坊主
雨来るぞ帽子をかぶれやネギ坊主
東京を離れて愉し葱坊主
円転の機会逃がすや葱坊主
集まりて何の話か葱坊主
葱坊主故郷はまだ眠りおり
歓談に匂ひ来るのが葱坊主
葱坊主彼方にはしゃぐ幼稚園
葱坊主折られて流す涙かな
諦めもひとつの希望葱坊主
高尾山やっと降りれば葱坊主
葱坊主武家の御紋の薄光り
行進の列の乱れや葱坊主
振り込みの日は忘れずに葱坊主
廃鉱の町に母居り葱坊主
ふるさとに知音あらざり葱坊主
葱坊主ビールを注ぐ曾孫かな
葱坊主涙を流し折られをり
返品をしてびくびくと葱坊主
葱坊主身より食えない悪い顔
可愛さと云ふも暮れゆく葱坊主
払暁の読経の響き葱坊主
くすぐらるる前から笑ふ葱坊主
初恋はライバル多し葱坊主
葱坊主見つめられたら鍋逡巡
許し方分からずじまい葱坊主
格差なき顔の並ぶや葱坊主
葱法主そろいて天をめざしたる
背伸びして海を見ている葱坊主
葱坊主背はでこぼこに並びたり
初めての道草葱の花揺るる
葱坊主子の子守唄通じをり
心配の尽きることなく葱坊主
住職の太き鼻緒や葱坊主
葱坊主吾のみ佇む無人駅
胸板の薄きをとこや葱坊主
山並みに白く映えるは葱の花
息切れて坂を登ると葱坊主
葱坊主の背丈違ふもよしとせり
ひとつづつ撫ぜ葱坊主の笑ふ
葱坊主利根川海へ入る辺り
葱坊主不入権には深き闇
めのこよりをのこ幼く葱坊主
葱法主夕闇流る頃の寂
葱坊主島の分校閉校す
一列に良き子並ぶや葱坊主
暁光は雀押し出し葱坊主
ことさらにはしゃいでみせる葱の擬宝
丁寧に未来を宿す葱坊主
葱法主いづれ誰もが丸くなる
宇治川の勢ひ思へり葱坊主
あの頃はリレーの選手葱坊主
吾老ひて白髪触はり葱坊主
葱坊主餓鬼大将のゐなくなり
葱坊主静かに待てる紙芝居
深更の機翼またたき葱坊主
葱坊主裏の畑の一面に
抜き取りて思はず撫でる葱坊主
旅先の出会いがしらの葱坊主
呼びに来て母ゐぬ畑の葱坊主
葱坊主頭のおもき哲学者
約束を踏みにじるとは葱の花
愛さねば愛されずして葱坊主
葱坊主畑駆け抜く子犬かな
葱坊主経読む猫の水かぶり
浮きてくる目玉が一つ葱坊主
細かったうなじの記憶葱坊主
絵手紙でも匂ひ立ちくる葱坊主
さみしさや葱坊主空の彼方見る
雨音の変はりしばらく葱坊主
みなちがふ音符のごとき葱坊主
おばさんの小言多くて葱坊主
夕焼けに想い出描き葱坊主
葱坊主一本道といふ家路
葱坊主そろひて揺れる無人駅
葱坊主つぶすお転婆うちの孫
刈られては八方指すや葱坊主
葱坊主風と遊びて詩人なり
葱坊主花摘む子供背を向けけり
葱坊主待てど暮らせど鳥は来ず
畑過ぎる(はたよぎる)赤き自転車葱坊主
ベランダに首のみ出せる葱坊主
母が死ぬまで心配かける葱坊主
あくまでもとなりはとなり葱坊主
葱坊主課外授業の二年生
来し方のまこと不器用葱坊主
鉄塔は固く立ちたり葱坊主
振り回し怒鳴られ捨てた葱坊主
おかしくて笑う特大の葱坊主
いじめっ子にいじめられた日ネギ坊主
葱坊主出世頭の少年A
山籟を抜けつつ里の葱坊主
一駅の電車通学葱坊主
葱坊主忖度要らぬ村に住む
雨上がり湯気立つ畑葱坊主
葱坊主山裾まもる兵のごと
葱坊主しづかな雨を降らしけり
食べられず残った命葱坊主
新たなる母待つ家路葱坊主
振りかへり海へと行かむ葱坊主
糸車まわす先には葱の花
浜風を受けて凛凛しき葱坊主
葱坊主笑顔で深呼吸する夕べ
葱坊主寄る辺なき身にも背骨あり
ひたち野の入日たちまち葱坊主
葱坊主「俺が」「俺が」の多すぎて
押してゆく無灯火だから葱坊主
葱坊主縦列駐車の隙間なく
反抗期を忘れてをりぬ葱坊主
葱坊主ラインダンスのヅカガール
宇宙との交信始む葱坊主
葱坊主三人組の下校の子
大人ぶり麦酒を注いで葱坊主
断捨離に帰る実家の葱坊主
葱坊主天婦羅うましソテーもや
葱坊主いつも誰かに物申す
帰り道我が家は遠くネギ坊主
葱坊主どちらが先にむけるかな
首もげし地蔵の背すじ葱坊主
ポケットに芋虫五匹葱坊主
葱坊主意志あるごとく空へ列
葱坊主一本づつに夕茜
冬終わりさばさばと見る葱坊主
葱坊主故郷出でて五十年
葱坊主あなたらしさはそのままで
葱坊主暗くなるまで外遊び
泣きながら家路あぐねる葱坊主
小さき児手つなぎ鬼の葱坊主
読み解けぬ生と死の謎葱法主
必然と信じた出会い葱坊主
葱坊主折れた仲間を知らぬげに
葱坊主一汁一菜老いの膳
夕映えを雨滴に宿し葱坊主
葱坊主ひとつそよげばみな倣う
生涯を一平教師葱の花
立ったまま雨止みを待つ葱坊主
葱坊主聞くのみなるや選挙カー
園長は村長を兼ね葱坊主
葱坊主ゆび鉄砲に撃たれけり
葱坊主意外な身の丈背の高さ
島のバス六時最終葱坊主
葱坊主どこもかしこも改革が
「やっほー」の風に応へし葱坊主
学校を拒否の子並び葱坊主
時間から離れていたり葱坊主
葱坊主牛乳瓶に挿してあり
いつからか頭でつかち葱坊主

【不明】
人肌の春の二番が抜き去りぬ
山ざくらはや頂の白髪哉
春さがし田舎の訛りバスの中
照り付けて丁度良き哉春の風
春は往く霞な晴れそ顧客の目
弁当のおかずこしらえ春さがし
花ならば又咲く折を待つものを
柔道着色づく春を受け止める
挑戦も決意も泥に沈む春
香水を控えめにつけ春さがし
春さがし新聞広告バスツアー
蕗の薹春はまだだと霜が立つ
恋文の返事届かず春さがし
一列に尻尾の残るかはづ往く
靴磨き髪を束ねて春さがし
突き当り右に曲がりて春さがし