きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「葱」__金曜俳句への投句一覧
(12月20日号掲載=11月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

葱はユリ科の多年草です。日本料理には欠かせないですよね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年12月20日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【葱】
格闘技はきらい葱煮て寝てしまう
一本の葱落ちてをり凛として
四五本の葱突つ込まれあるシンク
大人への憧れ葱の鬚根まで
葱抜けば土の匂いの白き身や
バリトンの店主に葱を買はさるる
葱の泥冷たき水に流れおり
レジ袋はみ出す葱や立ち読みす
葱二本献立あとで考えむ
見送りに行くと言えずに葱きざむ
ヴィリジアンのつんつん寒し葱畑
葱畑に囲まれてゐる菓子工場
高原の風ふとぶとと葱を抜く
葱匂ふ遅れてひとを思ひ出す
葱の香を口いつぱいに含みけり
焦げ跡の荒めに葱の筏焼
葱提げてゐたる独身貴族かな
早朝の平常心や葱刻む
すまし顔葱かき分けて汁啜る
葱ばたけ抜き跡の土ほっこりと
温かき土黒々と葱覆う
葱の香に目覚めし君の朝餉かな
白葱の少し曲りて庶民的
葱を剥く物置小屋の軒明り
白肌を泥に隠して眠るネギ
葱提げて女性専用車輌かな
薄闇に葱一束のほのびかり
妻の手もかうだつた葱刻む
一文字や思い出たどる旅支度
今が旬下仁田千住根深葱
葱のぞくエコバッグてふ潜水艦
飛行機が点となるまで葱畑
籠の中懇ろとなる葱と酒
下仁田の葱たつぷりの鍋囲む
香の強き薬味の葱の蕎麦屋かな
背を丸め男の鞄葱覗き
白葱の長くさりとて切るでなく
葱の皮剥いて光の一筋に
すき焼きのネギばかり食う出来ない子
葱畑戦げりとほく電波塔
葱作る従足の指の太かりき
これほどの大葱なると子の掘りし
捨てられてなお立ち上がる夜の葱
白髪葱を作り優雅に遊学す
飛ぶ鳥やわれらは葱に見えてゐる
かの国のデモのニュースや葱刻む
はよ帰れ根深の鍋の煮立ち初む
山麓に恭順したる葱の列
葱買って担任の名を思ひ出し
葱洗ふ会津をんなの夕まぐれ
天地や一肌脱いで葱を薙ぐ
葱深く伏せて真白(ましろ)な千曲川
一皮を音立てて剝く葱の白
葱刻む腕は女房殿の上
起伏なき土地よひと日よ葱を抜く
一文字を立てて置かねばゆるむなり
笹切りの葱浮かべたり清汁
肉買って買い忘れたる葱一本
その場しのぎの熱冷まし葱刻む
一週に一本葱を使い切る
白葱を大いなる母刻みけり
いつか野球選手にならむ一文字
葱抜きの匂ひ浚つて風がまた
ベランダに夕餉の葱の根を植ゑる
一輪車いっぱいの葱伯母の家
さざなみのやうに玉葱切りにけり
皮剥いて生まれたてなる葱の白
葱坊主頭並べて遍路道
横たわるフジタの女葱白し
葱甘しおまけに母の甘くなる
葱畑はベランダ鉢になることも
葱畑遠くに腰を曲げる人
立話していたら葱もらひけり
白白と長さを揃へ葱売場
ひたち野の葱折れ畝の黒黒と
雑炊の葱青青と鄙の宿
葱刻む青きところも今捨てず
一文字や日々の生業粛々と
葱抜いてくるねと猫に伝へたる
四五本の葱を鳴らして詰める籠
泥葱の泥をそのまま家路へと
葱の束抱へ来る人笑み連れて
少年の泪の乾き葱畑
玉葱では駄目なんです葱を買ふ
玉葱のぬるりと水を流しをり
キッチンに朝の光や白き葱
泥葱の満員電車の人のごと
葱提げて修羅場覗きし後の路地
タッタッと連打の厨根深かな
地の底へ白天へ青葱太し
風止まず半逆光の葱の群
ベランダの鉢に植えられ葱五本
風立ちて葱青々と波立てり
そこまでが幸せ葱の土洗ふ
葱きざむ昨日の憂さを晴らすごと
根深汁頼まれごとの念押され
葱の香のあふるる道のまだ続く
昼の月赤城の風にネギを抜く
風鳴くやいよいよ深く曲がる葱
二本づつ下仁田葱を福分けす
新聞に包まれた葱はみ出して
太葱に四十五度の刃入る
セルフうどん自らが葱きざみけり
色白の茶髪が並ぶ葱畑
意味もなく葱一本を刻みけり
下仁田の太葱あふる一人鍋
葱二本刻みて仕上ぐ親子丼
買ひし葱憚り持てる男かな
口紅を塗る少年や葱刻む
葱匂ふ軽やかな気分寒稽古
葱抜くや膝を使ひし父真似て
葱買うて常の歩幅で帰りけり
春来れば葱坊主にも花が咲く
泥葱を生きて埋めし土布団
雲流れ夫あればこそ葱刻む
葱嫌い何時から食べた何時食べた
老紳士葱の首出すレジ袋
「お釣無」あまたの葱(き)売る無人店
鄙の地に植うる京の九条葱
白(しろ)みどり色差際立つ旬のネギ
葱剝かば逝きにし人を思ひ出づ
根深重く深谷の泥と届きけり
葱のごと伸びて甥っ子成人す
葱刻む手のふと止まる淋しさよ
白いネギしみるは目にも歯茎にも
真つ直ぐな葱の切り口海青し
俺の葱食つてゆくかい父の声
一文字がカートはみ出すレジの前
老人の刻んだ葱のパック買ふ
葱ばかり食べ歩く旅さあ京都
温室の外畝深く葱列ぶ
一文字や一人鍋てふ自由あり
葱一束かまどの傍に置かれをり
日のひかり浴びて青葱育ちたる
これやこのゆくもかへるも葱畑
葱だけが遅い到着鍋の会
姿勢良きマダムの籠の葱二本
おふくろの玉葱の音迷ひなし
焼きそばに白髪葱盛りシンプルに
葱刻むうしろ姿の母老いて
駅ホーム葱と鰹の匂ふ朝