きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「青蔦」__金曜俳句への投句一覧
(6月28日号掲載=5月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

蔦は、日本・中国・朝鮮半島と広い範囲に自生しています。秋の紅葉が美しいため、「蔦」だけだと秋の季語ですね。青蔦はもちろん夏になります。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年6月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【青蔦】
青蔦の店のスウプのそよめける
青蔦や墓碑銘を覆ふが如く
廃屋の蔦青葉にも隠れたる
青蔦やチャペルの声に祈りあれ
靑蔦の絡み解きますAIで
青蔦の五臓六腑に沁むバッハ
青蔦の廃屋消し去る解体屋
青蔦や窓から入るわが家かな
青蔦の影の濃さ増す午後の四時
取壊し待つ工房の青蔦よ
蔦青葉力いつぱい三振す
青蔦の銅像の眼の暮れそむる
青蔦や金の釦のドアボーイ
青蔦や暮色に滲む美術館
散歩道青蔦おおう空き家あり
わが家を青蔦剪りて家出さす
青蔦の鎧の家に誰ぞ住む
表札に無き人の名や蔦青む
青蔦や港に近く白き家
青蔦や旧家の廚昼灯す
青蔦に覆はれし嘘墓場まで
青蔦にからむ想ひの御しきれず
青蔦や手を裏側に伸ばすかに
青蔦と煉瓦の風味珈琲店
夜に沈む青蔦の蒼と無言
蔦茂るピアノが空を渡りゆく
つややかや青蔦雲を追ひ行けり
蔦青葉よせれば蔦の焼かれたり
蔦茂るときどき呼吸忘れけり
青蔦や朽ちしクルスに翻る
青蔦やバンドネオンの尖る音
蔦青し三人降りる観覧車
磨り減りし踏絵や青き蔦の陰
青蔦や過去と未来の分岐点
青蔦の足元滑る下界かな
青蔦や声の届かぬ高き窓
青蔦やニューロン惑ふ脳の闇
青蔦の有刺鉄線空凹む
青蔦のくすぐる小屋を潰すとふ
青蔦の抵抗忘れあるがまま
青蔦の息吹の濃さや無縁墓地
自然の髪や伸びてる青蔦なり
青蔦や葉が葉を生みてまた生み
青蔦や手摺と気付く二三秒
青蔦の波打つ町の精神科
青蔦を植ゑぬ国立競技場
青蔦の重きを纏う松若し
ビール工場の青蔦容赦なし
青蔦や鳥の聞こゆる影の中
青蔦や白雪姫が住んでさう
青蔦の耀ひまぶし若人ら
屋敷町の長き土塀や蔦若葉
青蔦のホテルの設備古びたる
青蔦に命脈尽きし老樹かな
青蔦やいつもの場所にいつもの子
青蔦の満ち満ちる壁満たぬ壁
青蔦の先は光を貫けり
側溝の青蔦登る天目指し
青蔦のチャペルや牧師の立話
青蔦の知られたくなき秘密かな
蔦繁る窓の中にも目のありて
大使館蔦茂る門片開き
青蔦を打ちたる雨のロンドかな
青蔦や鳥の絵柄のティーカップ
青蔦や夕日に樹冠照る欅
青蔦をくぐり白球甲子園
薔薇窓の聖人守る蔦青葉
青蔦に柴犬の顔にらめっこ
性癖のひとつやふたつ蔦青し
青蔦や赤き煉瓦の変電所
青蔦の陰で泣きたる投手かな
石造かコンクリートか青蔦這ふ
青蔦の伸び放題や家を喰う
青蔦の賢く包む煉瓦塀
青蔦の壁よむかしの人の香よ
教会の壁を青蔦覆いけり
もう鳴らぬ携帯電話蔦茂る
青蔦の覆う家より宇宙人
青蔦の葉のまちまちに育ちけり
青蔦のさき青空にからみゆく
青蔦や老ひゆく身にはただまぶし
蔦繁るカフェの窓辺君を待つ
伸びてゐる青蔦の蔓脳の中
青蔦の出窓にのぞく長き髪
青蔦や運河に映る喫茶店
廃屋に青蔦絡む矜持かな
青蔦は年齢逆行装置かな
廃屋や蔦青葉にも隠れたる
煉瓦壁青蔦登り屋根までも
蔦茂る質屋の蔵を隙間なく
青蔦や休診の心療内科
青蔦やおそらく明日は別の壁
窓枠のかたちの余白蔦茂る
青蔦や葬送の鐘小さく鳴り
青蔦の消防団の暇さうな
青蔦や空き家十年呑込みつ
青蔦やベンツに揺るる星条旗
青蔦やひたすら登る峠道
分け入れば青蔦覆う摩崖仏
青蔦やぎりぎりまでの思いやり
過ぎし日の宣教師館草茂る
謝れど遅し靑蔦もと伐りて
青蔦や館に響くトウシユーズ
駅の塀の青蔦何処へ行きたいの
青蔦をしょっぱい風や舐め上がる
青蔦の二階の窓や美女覗く
青蔦のけもののごとく空捌く
絞首刑知る青蔦の煉瓦塀
青蔦を剪る主亡き窓の上
青蔦やビーフシチューの美味ひ店
犬小屋の屋根までおほふ蔦青し
青蔦に肩胛骨を埋めにけり
青蔦の這う道暗き切り通し
青蔦や舐めれば甘き午後の雨
青蔦の名づけし青い博物館
青蔦や伸び放題に家喰らう
青蔦の描く壁画の日々伸びん
青蔦のつひにわれらを這ひはじむ
青蔦や灯りぽつんと古本屋
頼らない頼られないで蔦若葉
青蔦やホテルとなりし女工寮
青蔦の勝手口より親父ギャル
蔦茂る新幹線の高架橋
青蔦や時の止まりし時計店
青蔦や癌サバイバー会食す
青蔦の人家息吹く葬の列
青蔦の中の仏文学科かな
物置の雨音に蔦青葉かな
目玉あり青蔦おほう窓の中
青蔦や時かけ放題で伸び放題
青蔦の影を慕ひて弾くギター
家つつむやうに伸びをり蔦茂る
青蔦を探せと言はる恩師宅
赤煉瓦の壁を登攀蔦若葉
青蔦は伸ぶ日の光こぼさじと
小山のごと空家隠して蔦若葉
青蔦の伸びたる先に隠し塚
物置の雨音に蔦青葉かな
青蔦を見上げて止める涙かな
青蔦や崩れた垣を固めけり
青蔦の教会の旗スウェーデン
青蔦や箱物達を喰らいけり
蔦の青乗鞍の白惹かれ合ふ
雨優し青蔦茂る背比べ
青蔦の花屋にけふの花の苗
青蔦に鳴きいる窓の蝉の声
切てしまふか否か思案の蔦青葉
青蔦の風の呼び寄す将棋盤
青蔦や時を忘れたジャズ喫茶
洋館の青蔦絡むまま売らる
廃屋の主となりて蔦茂る
青蔦の洋館の庭青き闇
青蔦の石垣を這う原城址
青蔦の盛りあげゐる去年蔦
青蔦の這い上る家リノベーション
青蔦を睥睨したる風見鶏
ひっそりと籠れる窓辺蔦青し
鍵穴を隠せば青蔦も共犯
青蔦や三代続く理髪店
青蔦に覆はれし嘘その儘に
「まいまいず」辿りたどりて青蔦の海
日の中に石の涼やか青蔦や
青蔦の文様のよう月仄か
青蔦や木の電柱のありし頃
青蔦や釣銭用意する売り子
泣き虫は青蔦の窓見上げけり
はなれゆくもの受け止めん青き蔦
青蔦の覆い洋館荒れにけり
ボルダリングに青蔦のエントリー
青蔦の伸びれば壁の消えてゆく
讃美歌の洩れくる窓や蔦若葉
青蔦の伸びゆく先の日の名残り
青蔦の繁る白壁探す窓
青蔦の絡め手に攻む処世術
試合終了のサイレン蔦青葉
青蔦で見えぬ離れがアトリエと
青蔦の校舎にすこし露西亜語科
青蔦や銀座に残る小学校
青蔦の蔦騒がせて消防車
青蔦に隠れし虫の声かすか
青蔦や上り詰めたり手を広げ
青蔦やいのち賛歌の夢大樹

【著莪の花】
掲示板今もある駅著莪の花
足首の細き駒下駄著莪の花
紅白の改元まんぢゅう著莪の花

【青鷺】
青鷺のすでに来てゐる高き二樹
青鷺の影ひきつれて飛翔する

【不明】
洗い髪汗かく事を嫌う我