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兼題「沙羅の花」__金曜俳句への投句一覧
(6月28日号掲載=5月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

沙羅は山地に自生するほか、庭園や並木にも植えられます。別名は夏椿です。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年6月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【沙羅の花】
姫沙羅の落花に雨の容赦なく
老いらくの恋は狂気か沙羅の花
学び舎の机の来たる沙羅の花
入相の沙羅の花かげ深々と
落花の中歩いて見たし沙羅の花
沙羅の花母在りし日の遠くなる
意味のなく置きたる遺品沙羅の花
をんなゐて漢のをりて沙羅の花
沙羅の花若住職は色男
木造の駅舎の横の沙羅の花
ご朱印の筆持つ僧や沙羅の花
頷けば風の囁く夏椿
沙羅の咲く貧しき村の寺ながら
清顕を知らぬ聡子や沙羅の花
沙羅の花静けさ充てる木の暗闇
沙羅の花慈愛を受けて咲きそむる
沙羅の花仏の顔に南無陀仏
坂上の老人ホーム沙羅の花
訪ふ人を待つや純白沙羅の花
平家物語思い出す沙羅の花
慟哭の生を演じし沙羅の花
沙羅落ちて足踏み止める辻の家
沙羅の花エンディングノートあがないぬ
我鬼のペンにて書きたるや沙羅の花
湖に還る毛と骨沙羅の花
一瞬(ひととき)と千年(ちとせ)と待てり沙羅の花
沙羅の花白い椿と似て淡し
ブラウスに透けぬ刺青沙羅の花
生きるとは妄執なりや沙羅の花
先生は沙羅の花めき散り逝きぬ
天葬の鈴の音微か沙羅の花
午後からは明るい雨を夏椿
数珠を手に現実を眼に沙羅の花
落ちてなほ純白に笑む沙羅の花
沙羅ひらく白さの果てのしづごころ
堕ち際を待つてゐるやう沙羅の花
レボリューション日の丸を裂く沙羅の花
沙羅の花羽の重たき雨の虻
沙羅白き肉体の叫び子に孫に
夏椿一輪挿しの余白かな
夕暮れてかすかに揺れる沙羅の花
雨垂れの夜通し止まず沙羅の花
公園の夜明けの青さ沙羅の花
夏椿もしくは彼のまなざしに
沙羅の花まはりの墓も見て歩く
しゃらのはな寺の守屋の窓あかり
教頭は代々達筆沙羅の花
良寛の軸の前なる沙羅の花
沙羅の花未練残して花落とす
夏椿もつとも清きあをぞらへ
沙羅一花沓脱石に落ちにけり
落花してなほ鮮やかに沙羅の花
仏心の浄土になつく沙羅の花
花沙羅や仏門になき懺悔室
沙羅の花生者必滅老少不定
そのままに沙羅の花ゆえ落ちにけり
沙羅の花近寄りやすき寺とせし
沙羅の花落ちしを眺む京都風
骨折の解く包帯沙羅の花
糞掃衣の僧の一列沙羅の花
無明なる吾に眩き沙羅の花
見てゐても見られてをりぬ沙羅の花
石垣の窪み窪みに沙羅の花
山の手の住宅街や沙羅の花
手付かずの崩落道路沙羅の花
落ちてのち雀親しき沙羅の花
吹いてきて過ぎてゆく風沙羅の花
つつましく家族葬にて沙羅の花
洗濯を済まして沙羅の花しづか
沙羅の花幼き僕の夢で会ふ
蹲の木洩れ日ゆれて夏椿
雨を待つスイギュウの乳沙羅の花
この世での願いは二ツ沙羅の花
沙羅の花ランチタイムのコンサート
落花して説法聞くよな沙羅の花
頬つけば目の前白き沙羅の花
花沙羅の落ちて緑の西芳寺
教室の机にポツリ沙羅の花
地に落ちて天を仰ぎぬ沙羅の花
透き通るほどの白さや沙羅の花
学び舎の机上にて沙羅の花
落ち際に白炎となる沙羅の花
沙羅の花見しとふ友の長電話
沙羅の花吾もありたし無依無想
後つづく花敷き詰めて夏椿
沙羅の花オラショの祈り伝へ継ぐ
一筋に書と生きし師や沙羅の花
まぼろしとうつつの境沙羅の花
警官の黄色いテープ沙羅の花
札所への一本道や沙羅の花
沙羅の花阿修羅が頬のことばかり
沙羅の花祖父母互ひに散髪す
母の膝ぐにやりと曲がり沙羅の花
辺り掃き沙羅の落花を苔の上
そのままに沙羅の花ゆえ落ちにけり
沙羅の花散りぬ無常はこのことか
沙羅の花つくばい過ぎてにじり口
もう迷ふことなく沙羅の花いくつ
路地に落つ沙羅の花かな暮れなずむ
介護ホーム沙羅の花散る門の奥
寺町の名残の地なり沙羅の花
沙羅花に憤怒と共愛の生を観る
沙羅の花光となりて鳥たちぬ
子のやうに育てし沙羅の今日咲きぬ
池の端の水の輪沙羅の花はかな
お茶立てて一会を含み沙羅の花
あえかなる胸のシリコン沙羅の花
沙羅の花静かに雨の糸の中
昼の日に瞑れば沙羅の花近し
沙羅の花落ちていよいよ初々し
踏み来れば細き流れに沙羅の花
賽の河原の沙羅の花悔いはなし
かの斜面登る叶わず沙羅の花
いよいよだ準備万端沙羅の花
幾花か落ちてこうぼく夏椿
沙羅散るや寄り道多き涯の果て
中庭に日当たるところ夏椿
高木の沙羅の落ちては幾花か
服着る君のうなじの痣(ほくろ)沙羅の花
沙羅落ちて寂寥滲む路地の宵
旅人のごと沙羅の花撮りにけり
再会や宿の姫沙羅褒め合ひて
沙羅咲くや三途の川をさ迷へり
風ならぬ夕にこそ散れ沙羅の花
沙羅の花低き声なるヨーガの師
ランナーの行方見守る沙羅の花
夏椿咲いてその日の落花かな
花沙羅や恩恩師に告げぬ話あり
しゃらのはな寺の守屋の窓あかり
歩の遅き祖母と母来る夏椿
猫の威嚇のごとに沙羅の花吠ゆ
いつのまに咲きて散りぬや夏椿
火山灰に埋もれた鳥居沙羅の花
今生は輪廻の途次か沙羅の花
善光寺の仏と遊ぶ沙羅の花
清盛のごとくすぐ落ち沙羅の花
沙羅の花訪ねてみたし妙心寺
好きと言う勇気が欲しい夏椿
神はゐて仏はをらじ沙羅の花
詩人やはり追放すべし沙羅の花
簪の脇に挿したる沙羅の花
その色に覚悟を観たり沙羅の花
人去りし村の廃寺の沙羅の花
昼下がり羽音が眠し沙羅の花
乳房無き右肩あがる沙羅の花
沙羅の花庭の白砂の冷えびえと
旧道の途切れ薄日に沙羅の花
大黒に乞ふ沙羅の花剪る朝
ためらひをかたちにすれば沙羅の花
沙羅の花ひとはみなやさしくなりぬ
街灯の切り抜くめぐり沙羅の花
地の息の一つひとつに沙羅の花
投げ銭を集める小猿沙羅の花
後つづく花敷き詰めて夏椿
沙羅の花路地より入る坪の庭
清廉な師匠の遺墨沙羅の花
イカロスの溶けし翼は姫沙羅に
雨あがる落花早める沙羅の花
沙羅の花タイムカプセル埋めし場所
雨音に消え入る落花沙羅の花
沙羅の花たとへば白き絹の布
煙草屋のラヂオの時報沙羅の花
たとふなら夏目雅子か沙羅の花
思い出を消し去るための沙羅の花
山門の憤怒の仁王夏椿
蹲踞に沙羅の花ありにじり口
沙羅の花はらりはらりと仮名散らす
沙羅の花光がなくて白く見ゆ
しかばねのポーズに眠る沙羅の花
夕風に落ちて汚れぬ沙羅の花
夏椿咲いてその日の落花かな
戒名に「山」の字の濃く沙羅の花
無住持の庭清められ沙羅の花
蹲踞に沙羅の花おるにじり口
沙羅の花遠くに見ゆる虚空蔵
登校日童駆け来る夏椿
「沈黙」のページ止める沙羅の匂ひ
背もたれのなきベンチには沙羅の花
沙羅の花つくばい過ぎてにじり口
ガンジスは神の吐瀉とて沙羅の花