きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「寝酒」__金曜俳句への投句一覧(11月28日号掲載=2014年10月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』11月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【寝酒】
テレビ消し寝酒の肴秋の月
寝酒飲む議論重ねし友逝けり
わが裡の難破船めく寝酒どき
隣室のねんねん小さき寝酒かな
寝酒していつしか返事無くなりし
大風は電線を打ち寝酒の夜
後悔は一先ず措いて寝酒かな
スーパーで寝酒の獲物を物色す
猫の鈴惑ふを聴きし寝酒かな
寝酒なぞついぞ無かりし寝つきよさ
寝酒長し梁の鳴る音風の音
寝酒飲む鬼籍に入りぬその前に
歯磨きは日に一度きり寝酒注ぐ
テレビ消し寝酒で今じゃ乙な俺
寝酒など月一で良いと言うなかれ
朝までを寝酒なければ泣き過ごす
寝酒酌む妻に険しき眼ある
寝酒して夢は絶対見ない事
インチキは絶対出来ぬと寝酒飲む
寝酒して石炭小屋を毀す夢
赤ワイン飲んで女房の寝酒かな
晩酌のやがて寝酒になりにけり
晩酌を少し寝酒に残し置き
別天地円生を聞く寝酒かな
寝酒してところどころの記憶抜け
寝酒酌む隣家のいさかひ聞こへきて
寝酒して暫く続く父の愚痴
少しづつ言ひ訳じみてきし寝酒
寝酒より疲れが癒す貧窮や
寝酒とてそんなに熱くするなよと
王様の絵の描いてある寝酒かな
来し方も末も野に在り寝酒酌む
音絶えて透き通る夜や寝酒醒む
寝酒かな名作映画中途まで
寝酒かな月の兎を探さうか
文の来る友も古くて寝酒かな
薄幸のヒロイン悼み寝酒かな
寝酒して乱るる鬢の白きもの
寝酒かなこむら返りはきのふの夜
掌をかざし老を見つめる寝酒かな
クリームを甲に擦り込む寝酒かな
じんわりとかく汗ぬぐひ昼寝酒
赤鬼の今宵も寝酒過ぎにけり
瓶の絵の黒豹迫る寝酒かな
独り居の月と語らう寝酒かな
飲むほどに侘しさつのる寝酒かな
もうこれが最後だからと言ふ寝酒
寝酒して雑魚寝やむ無し山の宿
物多く寂しきものよ寝酒する
妻の夢いつものように寝酒かな
暁闇の余りし寝酒薔薇色に
小夜更けて牧水想う寝酒かな
心臓を脈打つやうに寝酒つぐ
寝酒終ふ月は西へと急いてをり
寝煙草に寝酒してみる妻の留守
寝酒して今日に始末をつけにけり
秋惜しみ気持せかるる旅仕度
LED偉業肴に寝酒かな
マーラーの余韻の中の寝酒かな
寝酒かな電子レンジのチンの音
友人の足裏見えし寝酒かな
おつまみが寝酒にしては多すぎる
寝る本の裏に寝酒の盃を置き
還暦も古稀も無事過ぎ寝酒かな
佳きことのありし寝酒の丸氷
来し方を辿つてしまう寝酒かな
と言ふ間にうつうつとなる寝酒かな
百薬と寝酒勧める友のあり
寝酒してごつんと当る首のこり
寝酒の句詠まざるままに逝かれけり
本日の寝酒に頼る早仕舞ひ
お布団に入る人類寝酒かな
野や庭の果実で作る寝酒かな
苦の姿婆を寝酒で渡る虚空かな
眠るため寿限無唱へて寝酒して
文庫本寝酒のそばに置かれをり
寝酒して淡海のごとき深眠り
寝酒にと小瓶をくるむ老いた母
寝酒してやおら夫の高鼾
寝酒することも忘れて眠りおり
男てふ硬さに生きて寝酒せり
寝酒かな唸る冷蔵庫に凭れ
コンビニに寝酒購ひ終電車
指先にコルク遊ばす寝酒かな
寝酒よりお前が傍にいるだけで
盆の上に少しこぼれる寝酒かな
水薬の目盛りに似たる寝酒注ぐ
小原さん朝昼晩の寝酒かな
子らはみな帰りし夜の寝酒かな
水を湯で割つて病の寝酒かな
暗がりに寝酒の香りふくいくと
別腹といふ言い訳も寝酒かな
忘れたき事を呑み干す寝酒かな
酒好きの寝るを惜みて飲む寝酒
楽しき夢続編望み呑む寝酒
夢破れ寝酒酌まんと起き直す
約束の電話も鳴りて寝酒かな
今日も生き明日また生きる寝酒かな
これよりは溶けて寝るだけ寝酒して
寝酒酌む来しあれこれを自讃して
寝酒して月の砂漠で遊ぼうか
寝酒かな夜郎自大のたはごとを
明日狭きサラリーマンの寝酒かな
良き想い夢に続ける寝酒かな
想い出の苦きをつまみ寝酒せむ
ただかせぐ寝酒に縁なく傘寿かな
旅の夜に雨の音聴く寝酒かな
はおられし紅の肌着の寝酒かな
寝酒注ぎ千夜一夜をもう一夜
犯人の目星のついて寝酒かな
みづうみのやうな寝酒を眺めをり