開通記念 横浜・みなとみらい線の謎
2004年1月23日9:00AM|カテゴリー:マカロニほうれん総研|Hirai
鉄道をとってもとっても愛する鉄道ファンを「てっちゃん」と呼ばれる。
ぼくはてっちゃんではない。
そんなぼくでも最近、気にならざるをえない電車がある。
横浜市のみなとみらい線という路線だ。2月1日から開業する電車である。
運営会社は横浜高速鉄道株式会社。(参考HP http://mm21railway.co.jp/www/)
電車は、東横線の東白楽という横浜駅の一つ手前から、地下鉄になって(ここから別会社)、ランドマークや観覧車のあるみなとみらいや、馬車道を通って、元町・中華街という日本でも有名な観光地へ届く。「観光地にとって魅力的だ」などと、この電車の便利さについては、『横浜ウォーカー』などがいろいろな新聞や雑誌が書くだろう。
だから、ぼくが見聞きした、みなとみらい線についての謎について書いてみよう。
謎一 廃線の届出が1年前
地元の人も困ったといっているのが東横線の高島町と桜木町駅という二つの駅がなくなることだ。
廃線というもの自体が、最近ではそうとう珍しい出来事だという。
桜木町駅は人がほとんど乗らないマイナーな駅ではない。特急・急行も発車する始発駅だ。1日に3万人が乗り降りする。東横線では、西側の始発駅である渋谷、自由が丘、横浜と並びベスト4の規模だ。
でも、みなとみらい線がつくられるから、桜木町はなくなる。その、みなとみらい線は92年からコツコツと作られていた。
だけど、実は桜木町駅の廃止が国土交通省に届け出られたのが昨年1月31日。1年も前の話じゃない。廃線になる前から、廃線が決まって地下鉄を作る工事が進められていたわけである。
これだけでも相当うさんくさい。
謎二 野毛の大道芸と使途不明金
それまで桜木町駅がなくなると思っていなかった地元の人は驚いた。
駅がなくなることへの反対署名も4日で2万3000人分も集まったそうです。
でも、はるか以前に「地元の人」で話はついてたそうだ。
野毛の商店街の人を中心に「街作り会」が作られた。1988年、そこに20億円のお金が払われて、彼らが「廃線合意書」をかわした。これで大きな反対の声はなくなり、東急と横浜市は「住民」の合意がとれたとして廃線を内定した。
そのときの立会人は小此木彦三郎という自民党の政治家だった。
いずれも、住民が知らない間にこれはおこなわれたことだ。
昨年、中田市長に説明会を開いてほしいと声が挙がったが、一度も開かれていない。
さて、20億円はどうなったのだろう。一年に一度の大イベント、「野毛の大道芸」で芸人をたくさん呼んだび億の金が流れているのが、使い途の一つだ。
しかしあれで、野毛商店街は町おこしなになったというのだろうか。Tバック着用したサンバ隊や、スケスケの衣装をつけたインド舞踏のおねえさんに群がる、中年カメラマンを見るとため息が出てくる。
横浜の大道芸は、毎週末、みなとみらいのハードロック・カフェの前のほうが盛り上がっている。
(みなとみらい線のナゾは次回につづく)
<今週の買った本>
▼『「同和利権の真相」の深層』(解放出版社)が出版された。御茶ノ水の三省堂で平積みになっていた。
被差別部落の問題を運動テーマに活動している組織の代表格といえば部落解放同盟。次いで、ここから分裂した全国部落解放運動連合会(全解連、共産党系が支援)がある。
そもそも今回の本のネタになったのは『同和利権の真相』(宝島社)というシリーズだが、これは解放同盟攻撃の本である(第1弾は25万部売れたとの噂)。そこで『「同和利権の真相」の深層』は(舌噛みそうだ)、書かれた部落解放同盟側が出版した。
かつて『週刊金曜日』では『買ってはいけない』というブックレットが200万部近くも売れた。『「買ってはいけない」は買ってはいけない』や『買ってはいけないはウソである』などの便乗批判本も数十万部売れた。どこが便乗本かといえば、本の形やレイアウトがそっくりであることが、便乗本の定義の一つだろう。一般的に出版業界は5万部売れたら大ヒットの世界だ。そこで便乗して数十万部だから、おいしい話である。
『「同和利権の真相」の深層』も便乗本だ。
とはいえ、齋藤貴男、森達也、宮崎学など、各方面のメディアで活躍するなかなか面白い人物が執筆者に並んでいる。齋藤さんは、『機会不平等』などで教育格差や労働格差の問題をいち早く指摘していたジャーナリストだ。最近、教育格差の問題は指摘されてきているが、近年、被差別部落での教育格差はいっそう激しいと聞く。
そんなことを想いつつ、ぼくはこちらを買った。まっとうな便乗本じゃなかろうか。
こちらの本のほうが人への優しさを感じるし。
(平井康嗣)