兼題「初富士」__金曜俳句への投句一覧
(1月26日号掲載=12月31日締切)
2024年1月21日11:09AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
元日に仰ぎ見る富士山を初富士と言います。同様の季語に、初筑波、初比叡、初浅間などがあります。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2024年1月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【初富士】
初富士や二人つきりに満たされて
初富士やエレベーターを登りつめ
初顔も初富士を詠む初句会
絵に描きしやうな初富士宿の風呂
静岡の友から初富士初LINE
初富士が見えると車内放送で
夢を見て高嶺の花は喉元に
初富士や後厄明けし空の青
初春の富士見て思ふ鳴雪の句
初富士美し千の大観富岳より
初富士や独身寮の二階窓
初富士に去年の雑事みな忘れ
初富士や車中の人ら賑わせり
小さくとも初富士や掛替のなき
車窓から見る初富士に子が躍る
初富士に心踊らぬ自国民
たしかあのあたり初富士ありにけり
初富士を窓に新幹線西へ
初富士に裏も表もなかりけり
初富士の曇りガラスにうすく見え
初富士の夢を見むとご飯盛る
初富士や新幹線で一瞬なり
初富士を窓に嵌め込む地に住みし
これがまあ初冨士おはす日本か
天下茶屋上りて拝む初富士や
初富士をみぎにひだりに身延線
初富士の切り絵のごとき夜明けかな
いつも見る初富士今日はめでたけれ
初富士の裾際やかなめでたさよ
初富士は薄し武蔵野ローム層
初富士を背に断捨離を始めけり
初富士や清水みなとのクルージング
初富士へ傾いてゆく雲路かな
地をうねる青木ヶ原を抜けた僕
初富士やまつしろに雲を刺してをり
初富士はでん波に載ってどーんと居る
亡き母の墓より拝む初の富士
初富士の頂の朱の暮れ残る
初富士や天地を結ぶ赤い糸
初富士に深く額ずく烏帽子岩
手を合はす初富士見ゆるべき方へ
初富士や強化ガラスに車椅子
初富士や握る拳に志
初富士の空に揺らめく双子かな
初富士や空に一片塗り残し
初富士へリンリンリンと目覚しなり
初富士を水面に映し湖しづか
初富士を拝む頭を深々と
初富士や破れし國に山河あり
回り道して初富士へ真向かへり
初富士の気真っすぐにすっぴんに
実物を見た事ないが夢で富士
これでもか初富士さすがの存在感
初富士や新しき靴行き交ひし
初富士のここより戦火見へにけり
初富士のバックの青が効いている
初富士と見知らぬ客に起こされる
初富士や一億人の熱視線
初富士と缶コーヒー飲む途中下車
初富士や赤きネイルの手を合はす
悟り解き初富士となれ魂も
初富士を見せたし寝たきりの母に
初富士や合掌と言ふ讃へ方
初富士や風に逆らふごとき雲
初富士を家族みんなの目が探す
青と白のぞみも空も初富士も
初富士の火を噴くころの赤を帯び
同級会初富士めでてにぎやかに
初富士や朝東京の丘に立つ
初富士や離陸間近の滑走路
初富士や大きく脈を打つ心臓
初富士を時速三百キロで過ぐ
初富士やサーフボードの波高し
初富士のビルの谷間の白帽子
初富士や海抜零の町からの
初富士や誰彼無しにおめでとう
初富士や高望みして立ち尽くす
幾星霜祈りを見たか初富士や
初富士に神酒を掲げる句会かな
初富士を前方に見て運転す
初富士や巨人の足で十歩ほど
初富士に向かふや蒼き連絡船
茄子嫌い鷹は怖くて富士が良い
初富士の日本画みあげ日優し
初富士がいま眼下にと機長より
初富士や湯舟の縁を枕とす
初富士に立って友へと山の写メ
初富士やのぞみで硬いバニラ食う
初富士に紅紫のそらの滴れる
峠越え初富士銀冠歩み寄る
あちこちに初富士ありし日本かな
大きいといえど初富士秋津洲
初富士とジオラマの街俯瞰する
初富士や目黒を登り下りする
初富士やZ世代よりライン来る
初富士や長き御足を正座して
初富士が見えますと機内アナウンス
初富士の赤く染まりしひと時を
初富士や動かぬ母を城として
白青に朝の朱染む初富士や
初富士に青空心改める
眼前に出し惜しみなく初の富士
初富士やゲートに並ぶ妻の愚痴
初富士の代はりに拝む初比叡
朝日射す初富士の色うす紅に
初富士や嫋やかに裾立ち上がり
初富士の車窓に紅を立てにけり
初富士や煙突けふは煙なく
初富士の機窓に頬を寄せ合ひぬ
初富士や地下駐車場の昇降機
初富士や母校は富士見中学校
初富士や宇宙(そら)の帰船の故郷よ
初富士の色気に打たれ言葉無し
初富士や崖線たどる旅に出る
初富士の一つかみかな塩むすび
パリに待つ子の初富士はこの角度
初富士にジャンボジェットの微動かな
初富士や残したままに灯る街
初富士や自転車こぎて鎌倉道
初富士やゆうべ丘陵抜きしごと
初富士のやけにやさしくなりにけり
初富士や瞬きもせず見る車窓
初冨士の富士見なんたら何番地
初富士や雉の鳴き声湖面波
初富士をあやとりの糸縁取りぬ
車椅子押せば初富士なほ白し
初富士や遅延知らせる身延線
初富士や一眼レフの連写音
初富士の掛け軸掛けて歳用意
初富士や翔タイム推し秋津島
初富士や2県の争い無に還す
鶏鳴の初富士囃す二度三度
初富士のすべる列島美し国
初富士や富士の見えない富士見坂
雲海に初富士抜けし飛機の窓
初富士へ沈む夕陽やつつがなし
悠悠と初富士越しぬ二羽の鳩
ニ歩三歩ずれ初富士の見ゆる位置
議員よく聴け初冨士の風の音
初富士をいまかいまかと肩車
夢に見た初富士を見てまた眠る
夕暮れや初富士映る窓の数
初富士や上目遣いに一番機
定宿より見ゆる初富士手を合はす
初富士へ思い切り振るドライバー
初富士の踏み固めらる道想う
初富士や新幹線の窓よ沸く
初富士に顔向け出来ぬ世も人も
初富士や珈琲カップに映りをり
初富士や今年こそはと誓いけり
初富士のはるかはるかな妻ですよ
初富士や心の決まるUターン
初富士に跨り鞭揮ふ駈けよ
初富士の尾根に日輪滑り出づ
初富士の反る山際を空の紺
一昔前に初富士見た記憶
初富士や他国の戦夢ごとき
初富士を探せど見えぬ富士見坂
初富士や卵ひつそり凭れあひ
初富士の海より天へ龍昇る
初富士の神に礼せし雲の去る
初富士や純白に雪ふもとまで
初富士の裾野は海へ続きけり
議事堂を見る初冨士のひとりごと
初富士のためにあるやの新幹線
初富士の良き年祈り喜寿迎ふ
初富士や遠く小さくその姿
初富士か寝台列車夜が明けて
初富士に安産願い祖母になる
イートイン初富士うつすらと浮かび
初富士や被写体なりて赤ら顔
初富士や平和の永く続くよう
初富士やホームにひろふ鳥の羽根
初富士やオウオウの声其処彼処
初富士を横切る鳥の白さかな
背伸びして拝む初富士白帽子
初富士や日本は雲一つなし
初富士へ岩手におりて手を合わす
初富士へぞろぞろぞろと腰曲げて
初富士を見るべく走って五百粁(キロ)
初富士や松籟騒ぐ浜に出て
初富士や高台に集ふカメラマン
初富士の帽子の如く降り積もり
初富士や御釣りの切れし券売機
積み上げた石ころ揺らす富士登山
ババ抜きに戻り初富士過ぎにけり
初富士に背筋伸ばして陽を浴びる
初富士や富士見町なる坂の上
初富士や黙して眠る面構へ
初富士や墨のにほいのおろす筆
初富士やDNAに刻まれり
初富士や今年もふえる千羽鶴
初富士や私も孫も日本人
初富士や一人首途の機内食
初富士やその向かふに見ゆるもの
のしかかりくる初富士の裾を踏む
初富士や昨日と同じ所に鎮座する
初富士や山頂にまず日の光
湖が汚れを洗う夢の的
初富士や郷土の誇りアンヌプリ
初富士の向こう側にもある笑顔
初富士や今年は何かいい予感
初富士や次は美男を産むつもり
初冨士の最遠目視観測地
初富士へ晴着の裾をひるがえす
初富士やポーズを決める異邦人
初富士を駅テラスより抱へけり
初富士や丘に登れば福寿草
初富士の冠融けて登校日
初富士や羽田空港洗ふ波
初富士や今年こそはと古稀のたつ
初富士の思はぬ高きところかな
初富士や嫁と姑和解させ
ビル群のはざまに初富士を得たり
一本の樹が初富士に貫かれ
初富士の眩しや悔いに時効なし
初富士に自転車ひかりやすきかな
初富士や名も無き坂の傾斜角
青空の隅に初富士らしき白
初富士や地球の笑窪にもならぬ
富士箱根晴れて朝日に鳥渡る
闇雲を突き破るのは初富士か
カレンダー捲くり初富士婆拝す
初富士や三分間の停車駅
蓬莱のごと初富士に登りけり
初富士を見るためのぞみ切符とる
初富士を空腹満たしながらかな
初富士や職場の畑おしゃれして
初富士や暦(カレンダー)で巡る四季と五湖
初富士と暫し道連れ御殿場線
初富士や国際会議デビュー明日