きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「籐椅子」__金曜俳句への投句一覧
(6月30日号掲載=5月31日締切)

籐製の夏用の椅子を籐椅子と言います。大型で寝る用のものは籐寝椅子ですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか?

選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年6月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【籐椅子】
籐椅子や湯疲れの身を預けたり
籐椅子や窓辺に古びゆく背骨
籐椅子や時の流れの不確かさ
籐椅子や水平線に足を向け
叱られちやつた籐椅子に縮む父
籐椅子に羽ばたきそうな服のいろ
籐椅子に夜も心も更けてゆく
物置にされてしまつた籐の椅子
籐椅子や若き日の父靠れをり
籐椅子や一泊五千五百円
籐椅子の窓に連山谷の音
父親は誰かと籐椅子に聞けば
うたた寝や籐椅子網目ほほにつく
籐椅子に徹夜の父の寝息あり
籐椅子や海からの聲聴く如く
ささくれし古き籐椅子父想ふ
古びたる籐椅子ゆくゑ考える
籐椅子の先にただよう酒の香り
湯上りの肌に籐椅子心地良き
籐椅子に全財産を賭けにけり
籐椅子の窪みに伏せる文庫本
空室の籐椅子にあり処方箋
籐椅子に解れたとこと焦げたとこ
悩みの多い妻の座る籐椅子
籐椅子や温泉の湯気更衣室
籐椅子に銀河の九天よりの文
籐椅子の妻にことばを選びけり
籐椅子の軋みて食の細くなる
赴任地は海遠き街籐寝椅子
籐椅子はフライ級チャンピオンかな
籐椅子の周りに句帳季寄せ置く
籐椅子は猫専用となりにけり
かぶれ易き父の背中や藤寝椅子
籐椅子や海の向こうのフラダンス
中庭に籐椅子並べティータイム
籐椅子を担ぐ買取屋の無情
東京の古りし団地の籐寝椅子
籐椅子に脚組み裸婦の座りをり
籐椅子や犯人過多のミステリー
籐椅子の鳴りて放屁の隠れけり
月影の露台籐椅子揺れ已まず
籐椅子や指にのこれるバターの香
父掛し籐椅子懐かし我も掛け
新品にして籐椅子のこの軋み
充電や籐椅子を見る事を止め
一DK畳んでばかり籐寝椅子
自立せよ自立せよとぞ籐の椅子
籐椅子の前に四万十曲がりけり
籐椅子や座るべき人探しをり
籐椅子や重きに堪ふる誇りあり
籐椅子のためのまぶたを陽に濡らす
籐寝椅子パズルのやうに嵌めらるる
籐椅子にそろり今亡き祖母の髪
籐椅子の脇に幾冊文庫本
籐椅子や仮眠許可ある昼休み
籐椅子を透かして空を象りぬ
籐椅子や水平線を見たくなり
籐椅子の網目を過ぎる風のよき
籐椅子のくぼみが父を象りぬ
霊峰に足裏を向け籐寝椅子
籐椅子の夢の絡まる西日かな
籐椅子の父のかたちの凹みかな
亭午の陽ぢつとしてゐる籐寝椅子
籐寝椅子友が残した猫もゐて
籐椅子やウェイターからラム酒の香
ひとり旅籐椅子やすらふ老舗旅館
籐椅子に車椅子から蟹移動
脱衣所の籐椅子夫を待たせをり
籐椅子の隙間より草吾子の声
虫追うや籐椅子の鳴ること頻り
縁側に置き去られたり籐の椅子
籐椅子や谷より風のほかは来ず
籘椅子に真白のちぎれ雲の影
籐椅子にカタカナ名の夫人かな
古籐椅子染み付く匂ひ想ひ馳せ
籐椅子に凭れるような後半生
籐椅子に眠る詩集を胸に乗せ
籐椅子やいまは昨日の愚痴ばかり
海に向け介護施設の籐の椅子
籐椅子や陰へだらんと指の先
セピア色の家族写真や籐寝椅子
籐椅子や解体予告が届かない
潮騒が夢に入り来る籐寝椅子
飴色に籐椅子眠る河川敷
籐椅子のそのまま残る書斎かな
籐椅子の窪みになれし眠りかな
籐椅子や廊下のおくに独りぼつち
籐椅子の軋む匂ひや母の声
古書店の奥に先代籐椅子に
籘椅子にいい顔してる眠り猫
バカンスや籐椅子ふたつ湖畔見る
目覚むれば籐椅子の網目二の腕に
眠り姫籐椅子揺らす森の精
籐椅子やなんだかマハになる気分
籐椅子や祖母の斜めに置きしまま
ニス剥げて籐椅子解体決定し
天井の梁美しく籐寝椅子
籐椅子に老いた両親菩薩顔
籐椅子にマレーの風の寄せ来たる
籐椅子や主の不在まだ知らず
籐椅子にひとり座れる老い保つ
籐寝椅子身体の欲しがる歳となり
籐椅子の揺れすなはち心の揺れ
籐椅子の尻の位置まで父譲り
籐椅子のギシリと臀部心地よし
籐椅子の軋む納戸の胸騒ぎ
籐椅子の古りて屋号の中村屋
老猫の肉球ひやり籐寝椅子
足裏を撫でるカーテン籐寝椅子
籐寝椅子軋むは愛の定めとも
籐椅子にまどろみ夢はカルーセル
籐椅子に落日の富士抱えたり
籐寝椅子ハンモックより休めます
籐椅子の叔父かつての若大将
父逝くや飴色と化す籐の椅子
そよ風が頁をめくる籐寝椅子
籐椅子や新居に一つ古き物
浜の宿籐椅子どれも海の向き
籐椅子で語らう二人落ちる影
籐椅子の背なに格子の漁網かな
リタイアの寂しさ軋む籐寝椅子
籐椅子の軋みて嘘を見ぬかるる
籐椅子で今日もいつもの子守唄
古籐椅子乗り出して耳聳てて
穴あいた逆さ籐椅子処分場
夕風に主を待つや籘寝椅子
何人の鬱座りたる藤寝椅子
籐椅子で事務所の位置を説明し
庭に置き馴染む我らと籐椅子と
俗世間から籐椅子へ避難せり
籐椅子いつも重なる藤純子
主亡き籐椅子ひとり揺れ已まず
籐椅子をひよいと持ち上げ縁側へ
籐椅子や飛行機雲の見ゆる午後
籐椅子や余白の多き私小説
籐椅子や手持ち無沙汰の午後の風
どっこいしょ車椅子より籐椅子へ
籐椅子に深く凭るる父痩せて
籐椅子や虫のしらせに気づかない
籐椅子に座るべき人見つからず
山荘の古籘椅子に煙草の香
籐椅子に飴色の時流れをる
籐椅子や潮追風を遠にして
都心より来て籐椅子に止まりけり
籐椅子にもたれる恩師小さかり
木の家で木綿にはだし籐寝椅子
へそ天の猫欠伸する籐の椅子
籐寝椅子より垂るる手に資本論
籐椅子に一眼レフを磨く布
籐椅子のペディキュア?を組み換える
籐椅子や漁港の宿の塗の膳
籐椅子にひとりぽっちの指定席
籐椅子や島から暮れる瀬戸の海
なにごとも奥様まかせ籐寝椅子
籐椅子の父の姿の薄れけり
文豪の籐椅子置きて資料館
定位置に籐椅子去年と同じ宿
休日は歩数三桁の籐寝椅子
昼の月まどろんでみる籐椅子や
籐椅子に使ひ古りたる凹みあり
籐椅子や小さき鼾をかきし母
籐椅子や絶え入るやうなスピーカー
籐椅子は新し力士おことわり
籐椅子で湯あげタオルを吹かれけり
籐椅子に難解クイズ母遺す
籐椅子や母の遺品のみな軽し
籐椅子の影長く伸び本を置く
母さん連れて保養所の籐椅子へ
籐椅子で日の名残り行く我が命
媼ひとり籐椅子のまま干されけり
籐椅子に真帆みえてゐる一日かな
籐椅子に葉巻の作法忘じけり
籐椅子に座る方々が去り逝きて
籐椅子に浅き夢見し乱歩の忌
ヴェランダに独り佇む籐椅子や
籐椅子や色折り紙のちらばりて
籐椅子やビスクドールが膝伸ばし
籐椅子に海と山見る読書かな
籐椅子にくつろいでいる旅の宿
籐椅子や書き損じたる置手紙
籐椅子やうたた寝してる母の胸
飴色の籐椅子に聴く沢の音
籐椅子の背もたれ高し五歳の子
籐椅子の畳に祖父の歴史かな
高原の風籐椅子の網目から
籐椅子やホテルは谷の上統べる
威張ってる家一番の籐寝椅子
ストローをくの字に曲げて籐寝椅子
籐椅子と蒋介石とピストルと
籘椅子に人殺めたる沙汰を聞く
尻沈みゆく風音の籐寝椅子
面影のすわる籐椅子遺品なる