きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「煮凝」__金曜俳句への投句一覧
(2月24日号掲載=1月31日締切)

魚の煮汁が冷えて固まったものを煮凝と呼びます。ゼラチン質に富んだ鰈(かれい)や鮃(ひらめ)、鮟鱇(あんこう)などは美味しいですよね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年2月24日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【煮凝】
煮凝や金の蒔絵のそのうへに
煮凝りや食事の時は静かにと
煮凝と酒に父また独り言
煮凝につるりと月の残りけり
にこごりや猫も好物すり寄り来
煮凝のきつめの女多すぎる
空腹を解消せんと煮凝と
煮凝に先づは一言父ならば
煮凝や客人は何をか憂う
招待をされて煮凝見て仕舞ふ
煮凝や敵当と言ふ母の味
煮凝に落として弾む魚の目
煮凝やうろこは海に奪はれる
煮凝の琥珀一人の昼光る
琥珀のごと魚の小骨の煮凝れり
煮凝の溶けだす黒の静寂かな
煮凝のまなこの黒くかすみをり
煮凝やそろそろ家出終へやうか
煮凝の溶けて琥珀に染まる飯
煮凝や鰯の頭まだ飾る
客を呼ぶ煮凝やママ浜育ち
煮凝や青磁の色の透けてをり
煮凝の三等分の難しさ
煮凝や玻璃の器をさらえたり
煮凝やくらくらとする政
煮凝は昨日をぷるる閉じ込めし
煮凝やスナックのママは悦ちやん
煮凝や膝の痛みの呻き声
煮凝や腰痛予防ストレッチ
煮凝にぷるるぷるると海の音
煮凝や死者にわたしは支へられ
天然の寒さ天然の煮凝
煮凝の晩酌真似て父偲ぶ
大いなる目玉もろとも煮凝りぬ
煮凝の窪みにまなこやすらげり
煮凝や取り箸いらぬ二人かな
煮凝やきのふの片身おしみけり
煮凝や落暉もろとも凝りたり
煮凝や父は無類の魚好き
煮凝の厨入る女がふたり
煮凝に裸電球灯りけり
煮凝に難破してゐる鰈かな
煮凝は低血圧の朝を知る
煮凝をはさんでいくつかの無言
煮凝や朝の築地に星ひとつ
煮凝や一夜の宴あとの黙
煮凝の溶けて小骨の残る舌
煮凝の小鉢に波の流れけり
トラック野郎定番は煮凝ぞ
煮凝や儚きものにある光
煮凝や教授の伴の初クラブ
煮凝や母性の角のありどころ
煮凝はママの手作り路地の店
亡き夫の故里佐久の凝り鮒
煮凝り飯かき込み遠き通学路
圧力は優し煮凝り溶け始む
煮凝や舌に溶けつつ海匂ふ
煮凝やつかみどころのなき話
煮凝は漫画の中では疎外され
ひとりゐの煮凝ばかり出来にけり
煮凝やほったらかしのままの総括
煮凝や新聞紙面とにらめっこ
煮凝や今が一番若いてふ
絶品は母の煮凝レシピとす
煮凝のゼラチンぷるん喉を過ぐ
静謐の水平面に煮凝れる
煮凝や一人占めする祖父のゐた
煮凝りや喉元通りて生臭き
煮凝の上で十字を切る女
煮凝りの中は小さき水族館
煮凝を乗せ炊きたての朝御飯
箸先に煮凝の味朝餉かな
煮凝や萩焼に盛る小宇宙
煮凝や万年布団敷く一間
煮凝の匙の小骨の生きるかと
煮凝にきのふの海のふるへかな
煮凝や近頃父の食細く
煮凝を塗り匙もて啜りたり
台所煮凝の匂ひと飯の湯気
煮凝やうらめしさうな眼で見るな
煮凝や箸の進まぬ人事部長
煮凝の嵩に怯みし朝餉かな
煮凝のふるふるふるとつぶやけり
煮凝やつついてママの秘密知る
煮凝や男は男らしくあれ
煮凝の皿をえらびて友を待つ
煮凝やぷるんと食みて生臭し
煮凝は天然だった祖母の頃
煮凝やぶすりとひと箸放り込む
煮凝りのありてうれしき朝餉かな
煮凝や厨の隅の薄明り
煮凝や五年を経ても母の味
煮凝のコラーゲンをば独り占め
煮凝やあるはずの本見つからず
煮凝に昭和の匂ふ朝かな
煮凝や飴は舐めねば溶けだすぞ
煮凝と妻の帰宅を待つてをり
煮凝のあの味ならばあの女将
我つくる鱈の煮凝絶品ぞ
煮凝の縁の欠けたる絵皿かな
煮凝や煮しめの出汁に母の伝
白ごはん煮凝り染みて香り立つ
ラヴ・イズ・オーヴァーの流るる店や凝鮒
煮凝や夕べ賑はふ船溜
煮凝の琥珀をほぐす細き箸
煮凝の固まるころに来る娘
煮凝ややけにばたつく硝子窓
煮凝の透きてましろな皿寂し
煮凝の呪文解くかに崩れけり
幾度も父母暮れし凝鮒
煮凝や骨やはらかく朝餉かな
煮凝に微温燗(ぬるかん)あてに独り酒
空腹や煮凝口に流し込み
煮凝に透くる唐子の遊ぶさま
煮凝の昨日の茜空を食ふ
煮凝やふれてつめたき畳べり
煮凝やダム湖の底へ消へし村
減塩の醤の色に煮凝れり
蓋開けて鍋全体が煮凝に
夜煮付け昼に煮凝り独り飯
煮凝や朧に亡母透けてみえ
煮凝やどうにもならぬことばかり
ほどほどに睦まじき仲煮凝食ふ
ただ人の煮凝なれど骨多し
煮凝に閉じ込められし鰈かな
飯粒や煮凝の艶まとひけり
煮凝やとけるころには妻となる
にこごりを酒の肴に金曜日
煮凝や介護の匙に一掬い
煮凝や夢の残滓の融けやすく
ぷるぷるの煮凝揺るる箸の先
県境を越へて煮凝旅の飯
煮凝や畳の部屋に椅子ふたつ
煮凝やけふも肝臓ざわざわす
煮凝や琥珀色した頃うまし
煮凝や子持ち鰈の残る鍋
煮凝の仕上げに欝のひとつまみ
煮凝の溶けて目玉を墓標とす
宿直の朝煮凝れる片手鍋
煮凝の海の男になれません
煮凝やぼをと瞬間湯沸器